心身は暮らしで調えよう! 今すぐできる8つの養生術で不調すっきり

外出自粛や季節の変わり目で、むくみや肩こり、イライラなど、不調を感じてはいませんか。そんな時こそ東洋医学の考えが役立ちます。「気」「血」「水」のバランスを整えるのが大切。鍼灸師・安東由仁さんに暮らしの中の「養生」の方法を教えてもらいました。今すぐできるセルフケアで心とからだを元気に保ちましょう。

鍼灸師・安東由仁さん

心とからだの不調…そんな時こそ東洋医学の知識が役立つとき!

基本的な要素を「気」「血」「水」
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外出自粛や新しい生活様式などで思うように活動ができず、むくみや肩こり、イライラなど、心とからだの不調を感じている方も多いのではないでしょうか? そんなときには、鍼灸、東洋医学の知識が役に立ちます。

東洋医学では、人のからだを構成する基本的な要素を「気(き)」「血(けつ)」「水(すい)」としています。「気」はからだの生命活動を維持するはたらき、「血」は全身に栄養を運ぶ血管の中の水、「水」は、からだの中にある血以外の水分を指し、この3つが正常にはたらいている状態が「健康な状態」です。

1つの要素の量やはたらきが乱れると、ほかの要素にも影響してバランスが崩れ、からだの調子が悪くなります。気血水の状態を調べ、異常があれば正していくのが東洋医学の基本的な治療方針。鍼灸師は、からだの中で問題がある患部やツボに鍼(はり)やお灸を使って刺激を与え、人が本来持っている自然治癒力や免疫力を高めて、ケガの治療から病気の予防まで行ないます。肩こりや関節痛などの「運動器の症状」だけでなく、便秘や胃もたれなどの「内臓の症状」、イライラや不眠などの「こころの症状」など、鍼灸治療ができることは多岐にわたります。

東洋医学では、治療以前に「日々の暮らし方」も重要と考えます。「養生」して、日々の生活で心身を調えることは、特別な施術を受けることよりも大切なことなのです。

とくに、梅雨の時期は、じめじめとした湿度の高い気候の中では、からだに余分な「水」がたまりやすくなってしまいます。水の流れが滞ることを「痰湿(たんしつ)」といい、からだがむくんだり、冷えたりします。この時期は「水」に注目して、流れをよくしていきたいですね。そんな、水の流れをよくするセルフケアや、肺のはたらきを助ける方法、万が一外敵が入ってきても外に追い出す力を蓄える養生術を、具体的に8つ紹介します!

【1】夜はしっかり寝ること 睡眠でエネルギーをチャージしよう

「陽の時間」と「陰の時間」

昼夜逆転生活になっていませんか? あたり前のことですが、まずは夜にしっかり寝ることが大切です。東洋医学では、昼は活動をする「陽の時間」、夜は休む「陰の時間」と考えます。「血」をつくる臓器は、夜にはたらくとされているので、その時間に寝ることで、臓器にしっかりとはたらいてもらいましょう。

また、体表を覆ってからだを守る「衛気(えき)」は、日頃の活動に使うエネルギーである「気」の一種です。そのため、充分にエネルギーがないと守ることができません。夜は遅くても23時までには寝て、からだを守るエネルギーを蓄えましょう。

【2】湯船に浸かって、冷えたからだを温めよう

からだに余分な水が増えると、むくみとなってその水がからだの中の流れを悪くしたり、冷やしたりしてしまいます。そのためには、しっかりと湯船に浸かることがおすすめ。ただし、長湯するとからだがつかれてしまう方は、からだ全体が温まる程度でOK。

とくに夏場は、エアコンなどで手足やからだの表面が冷えやすいので、冷えたからだをリセットする意味でも湯船に浸かりましょう。体力がある方やむくみがひどい方は、長湯して、どんどん汗を出して発散させましょう。

【3】実はラジオ体操ってすごい! 日に当たってからだをのばそう

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日光に当たると、外気からも陽のエネルギーを吸収することができます。外に出られない場合は、ガラス越しでもいいので、日光に当たりましょう。

また、椅子に座りっぱなしなど、同じ姿勢を続けないことも大切です。呼吸と一緒にからだをのばす、ヨガや体操がおすすめ。定番のラジオ体操も、きっちりやると効果的に全身を動かすことができますよ。また、歩いたり、スクワットをしたりして下肢(かし)を使うと、下肢は生命エネルギーの源である「腎(じん)」につながっているので、元気を鍛えることができます。

【4】笑おう! 歌おう! 声を出すことが大事

笑ったり、歌ったりして声を出すと、肺までエネルギーがまわります。なかなか人と会って話すことが難しいときは、親しい友人と電話で世間話をすることもおすすめ。そのときは、憂鬱なニュースの話などは避けて、楽しい話をした方が気の流れがスムーズになります。人との繋がりを感じることで、イライラや不安も軽減されるはずです。

【5】温めるだけでもOK! 元気が出るツボを押そう

東洋医学では人のからだには気血の流れる「経絡(けいらく)」という道があるとされています。経絡上にある「経穴(けいけつ)」を「ツボ」と呼びます。からだには361箇所のツボがあるといわれ、経絡を通して体内の異常が表れる場所です。ツボを押したり温めたりして、的確な刺激を与えることで、体内の不調のある部位や臓腑にはたらきかけ、症状を和らげていきます。

たくさんのツボの中でも、胃腸や消化器系など、おなかに繋がる3つのツボをご紹介します。ツボを指圧する基本は、からだの中心に向かって垂直に、2〜3秒かけてゆっくり指で押して、じんわり指を離すこと。押して痛い場合は、ぐっと押してパッと離すのがポイントです。

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【6】摂取の方が多くなっていませんか? 食べ過ぎないようにしよう

通勤や出かけることが少なくなって、活動量が減ったにもかかわらず、以前と同じ量を食べてはいませんか?消費カロリーより摂取カロリーが増えてしまうと、当然、太ってしまいます。減らすのは炭水化物を中心にして、お肉や魚、豆類などのタンパク質や野菜は減らさないようにしましょう。

とくに家にこもっていると、お酒や甘いものの摂取が増えがちになります。お酒は一杯だけにする、お菓子は小魚やナッツ類にするなど、自分のルールを決めましょう。

【7】保湿ややさしく撫でて、お肌をいたわろう

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東洋医学で、「肺」は皮膚とつながっているとされています。気のエネルギーや「水」を全身に巡らせたり、汗としてからだの外へ発散させたりするはたらきがあります。肺を守り、「水」のめぐりをよくするためには、皮膚を大切にしましょう。保湿したり、肌をやさしくさすってあげるだけでも、よい刺激がからだに入ります。

【8】リラックス効果やむくみとりにも 熱いお茶を飲もう

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東洋医学では、緑茶は、熱を冷まし、頭や目をすっきりさせるといわれています。イライラをしずめるのにも役立つので、リフレッシュしたいときにおすすめ。またお茶のよい香りは、からだの中の「気」の流れをよくしてくれます。ペットボトルではなく、急須で丁寧に淹れた香りのよいお茶を飲みましょう。夏に熱いお茶を飲めば、汗をかいてむくみを取ることにもつながります。

実は養生はとってもシンプル! 生活を見直して健やかに過ごそう

むくみや肩こり、イライラなどの病気ではないなんとなくの不調は、東洋医学の考え方では「気」、「血」、「水」の3つのバランスの乱れが原因とされています。鍼灸はそうした乱れを直し、健康な状態にするお手伝いをしているのです。からだの不調と心の疲れを癒す東洋医学は治療以前に、毎日の生活を見直すことを大切にしています。それが「養生」です。養生と聞くとなんだか難しそうに感じていた人も多いかもしれません。ですが、実はとてもシンプル。しっかりと睡眠時間をとることや湯船に浸かる、熱いお茶を飲むなど、今すぐ始められるものばかり。忙しい現代社会に生きる人にこそ、毎日を見直して、自分自身をケアしてあげましょう。

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教えてくれた人
鍼灸師 安東由仁さん

あんどう ゆに●京都・左京区の哲学の道のそばにある築90年の町家で鍼灸院を営む。スポーツの現場で長く働いてきた経験を活かして、鍼・お灸の施術だけでなく、暮らしの中でできる養生術を伝え、からだをバージョンアップするためのお手伝いをしている。

【HP】http://humanitekyoto.com
※完全予約制

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(写真 福尾行洋/イラスト はしもとゆか)

取材・文=大村沙耶
おおむらさや●月刊『茶の間」編集部員。福岡県北九州市出身。学生時代は剣道に打ち込み、京都に住み始めてから茶道と着付けを習い始める。ミーハーだけど、伝統文化と自然を愛する超ポジティブ人間。