体温が1度上がれば免疫力が約5倍に?毎日の入浴で簡単セルフケア

1日の終わりに、疲れや汚れを取るために入りたいお風呂。実はお風呂に浸かることで免疫力がアップすることをご存知ですか? 医師であり温泉入浴指導員でもある一石英一郎教授に、免疫力をあげるための、入浴方法とその効果について教えてもらいました。毎日のお風呂でリラックスしながらセルフケアしましょう。

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【教えてくれた人】国際医療福祉大学病院
一石 英一郎 教授

医学博士。国際医療福祉大学病院内科・予防医学センター教授。日本内科学会の指導医として医療の最前線で活躍。温泉入浴指導員の資格も有し、主な著作に『医者が教える最強の温泉習慣』(扶桑社)がある。

免疫力アップには体温が大切! 注目の入浴効果とは?

免疫力アップには体温の図

毎日の入浴は、汚れや疲れを取るために必要ですが、実はそれ以外にもさまざまなメリットがあります。最近の状況下で、入浴の効果としてなにより注目したいのが、からだを温めることによる「免疫力のアップ」です。

私たちのからだの免疫力は、体温が1度上昇すれば、なんと約5〜6倍に上がる可能性があり、逆に、体温が1度下がれば30%も低下してしまいます。

また体温には、からだの表面の温度を指す「皮膚温(ひふおん)」と、脳や内臓などの体内の温度を指す「深部体温(しんぶたいおん)」があり、免疫力に深く関係するのは深部体温です。そしてこの深部体温を上げるお手軽な方法が、入浴なのです。

近年、日本人は体温が下がり続けていて、平熱が35度程度という患者さんもよく目にするようになってきました。これは、基礎代謝や筋肉量の低下、ビタミン・ミネラルの不足、食習慣の悪化などが原因と考えられます。体温が下がると代謝が低下して、代謝が下がればさらに体温が下がるという悪循環に陥ってしまいます。そうなれば、合せて免疫力もグングン下がってしまいますので、日々の入浴を見直して、深部体温を上げるように心がけましょう。

毎日約40℃のお風呂に10分! 専門家がすすめる入浴方法のうれしい効果

約40℃の入浴が免疫力をサポート!

私がおすすめする入浴法は、約40度のお風呂に、10分から15分ほど浸かることです。この条件で入浴することが、深部体温を上げるのに最適だと考えられています。

入浴によってからだを温めると、「好中球(こうちゅうきゅう)」という免疫細胞が活性化したり、マクロファージというからだの防衛軍の司令官が活発に働いたりすることがわかっています。入浴は自律神経とも密接につながっていて、お風呂に入ることでリラックスに関わる副交感神経が高まります。そうすると、細菌やウィルスをやっつけてくれるリンパ球も増加します。

暑い夏場や疲れた日には、熱いお風呂に浸かるのを嫌がってシャワーで済ませてしまう方もいらっしゃいますが、お風呂にはシャワーにない利点があります。その1つが水圧による効果です。水圧のポンプ作用によって、マッサージ効果が生まれて、血流の改善が期待できます。また、お風呂の浮力は筋肉を弛緩させてリラックスにも役立ちますので、心身の健康のために、シャワーよりお風呂をおすすめします。

免疫力のアップには質のよい睡眠も欠かせません。テキサス大学のグループの研究によると、就寝の90分前に入浴すると、睡眠の質が有意に改善されることが判明しました。

このように入浴には、免疫力のアップに役立つたくさんの効果があります。毎日お風呂に浸かる人は、そうでない人に比べて、5年後に要介護にならない確率が約2倍になったという統計もありますので、日々欠かすことなくお風呂に浸かって、細菌やウィルスに負けないからだづくりにお役立てください!

毎日のお風呂で簡単にリラックスして免疫力をあげよう!

ウィルスなどの外敵からからだを守ってくれる自己防衛システム・免疫力。時期柄、気になる免疫力を上げるために行いたいのが毎日の「入浴」。お風呂につかることは、汚れや疲れを取るだけでなく体温を上げて免疫力をアップさせる効果があるのです。逆に体温が下がると代謝が低下してしまうのです。一石教授がおすすめする入浴方法は、約40℃のお風呂に10分から15分ほど浸かること。たったそれだけのことで、からだを深部から温めてくれます。また、自律神経とも密接に関わっているので、リラックスでき、細菌やウィルスをやっつけてくれるリンパ球も増加とよいこと尽くめ。日々のお風呂で外敵に負けないからだづくりをしましょう。

参考論文
木村昭夫, ほか: Moderate Hypothermia下における多核白血球の遊走並びに貪食能の検討. 日救急医会誌 9: 18-19, 1998.
木村昭夫, ほか:中等度低体温下における単球の遊走・貪食並びに殺菌能の検討. 日救急医会誌 9: 332-335, 1998.

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(取材・文 金田啓/イラスト 藤井ナツコ)

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企画・構成=新見麻由子
にいみまゆこ●月刊『茶の間」編集部員。徳島県出身、歴史や文化、レトロなものに憧れて京都へ。休みの日や育児の傍らに、散歩や自宅でお茶を片手に本を読みながら過ごすのが趣味。季節を感じる和菓子やお花に癒される日々。