皮膚科医に聞いた! 洗うならお湯?水?手荒れを防ぐ正しいセルフケア

カサカサ、ゴワゴワからはじまる小さな違和感が、ひびやあかぎれ、かゆみに変わる。手荒れは決してささやかな悩みではありません。新型コロナウイルス感染症の流行で手洗いの重要性が高まり、アルコール消毒が頻繁になった今こそ、手のお手入れを見直すチャンス!正しいケアの仕方を皮膚科医に聞きました。

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山内華子先生

教えてくれたのは…
日本皮膚科学会専門医
山内華子先生

京都生まれ。京都府立医大皮膚科に入局し、結婚を機に渡米。スタンフォード大学皮膚科にて最新の医療や美容医療を学ぶ。2016年5月御所南はなこクリニック開設。疾患および症状の軽減、アンチエイジング、健康な体づくり、美しい肌づくりなど、個々に合せたオーダーメイド治療に定評がある。

皮膚科・小児皮膚科・美容皮膚科
御所南はなこクリニック
【住所】京都市中京区間之町通竹屋町上ル大津町645
【電話】075-231-8875
【HP】https://hanako-cl.com/

化学物質との接触、摩擦などが手荒れの主な原因!

頻繁な手洗いやアルコール消毒など、ウイルス対策とはいえ、手指にとって今はとても過酷な時期です。さらに、秋から冬はもっとも乾燥しやすくなる季節。当院にも手荒れの悩みを抱える患者さんが多くいらっしゃいます。

そもそも手荒れとは、手の角質の柔軟性やなめらかさがなくなり、乾燥や亀裂などが生じた状態のことをいいます。症状は冬に多い乾燥性と、夏に増える異汗性(いかんせい)湿疹とに大きく分かれますが、ご自身でケアできるのは乾燥性の方。湿疹ができたり、赤み、かゆみがひどい場合は、早めに皮膚科でご相談されることをおすすめします。

手荒れの多くは、化学物質などに触れること、手洗い時の摩擦、熱などの物理的な刺激が角質層のバリアを壊すことによって起こります。よく誤解されるのですが、水に触れただけでは手荒れは起きません。手を擦り合せたり、ハンドソープやアルコールなどの化学物質を使ったりすることによって、手荒れが起きやすくなるのです。

ですから、もっとも簡単な予防方法は、化学物質を肌につけさせないこと。水仕事のときはゴム手袋をしたり、外出先ではアルコール消毒をしないで済むように、ナイロン手袋を着用したりしてください。ただ、この時代、そうも言っていられません。ですので、手の保護、すなわち保湿が大切になってきます。

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保湿クリームを塗って保護+ビタミンA補給が最強のケア

肌のバリア機能を守るためには、乾燥する前に保湿クリームを塗って、手を保護することが重要です。お好みの保湿クリームでこまめに水分や油分を補給してください。ひびやあかぎれになってしまった場合は、油膜でバリアをつくってくれる馬油や、ビタミンが配合された保湿クリームなどもおすすめです。

手荒れを防ぐために、保湿以外でできることは、食べる物にも気をつかうこと。とくに、皮膚や粘膜、目の健康を保ち、免疫アップなどの働きがあるビタミンAの補給がおすすめです。

ビタミンAは細胞が本来持っている機能を回復させ、正常化させるといわれていますが、日本人は1日の目安摂取量を満たせていない方がほとんどです。レバーやうなぎ、緑黄色野菜などビタミンAを多く含む食品やサプリメントなども取り入れながら、内側からも同時にケアすることを心がけてください。

健やかで美しい手指は、毎日のこまめなお手入れから。続けることで肌は変わります。

教えて先生!手荒れにまつわる素朴な疑問!

Q1.保湿クリームを塗るタイミングっていつがいい?

A
塗るタイミングは「乾燥を感じたとき」。具体的には、①手洗いの直後 ②水仕事のあと ③就寝前がベストです。保湿クリームは少なすぎると摩擦で肌を傷つけてしまうこともあるので、たっぷりとって、塗り込むのではなく、手全体を包み込むようにやさしく塗りましょう。

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Q2.手を洗うとき、お湯と水どちらがよい?

A
熱すぎたり冷たすぎたり、極端な温度は皮膚への刺激が強くおすすめしませんが、そうでない場合、お湯と水、どちらかのほうが汚れが落ちやすいということはありません。また、お湯で洗うと油分がとれやすく手荒れにつながるということもありません。ただ、手洗いのあとは保湿を忘れずに。

Q3.石鹸は固形か液体か?手に負担がないのはどっち?

A
乾燥や肌荒れ、敏感肌にお悩みの方には、液体石鹸よりも、シンプルな処方でつくられた固形石鹸がおすすめ。固形石鹸の方が液体石鹸よりも必要以上に皮脂を奪い取る心配がなく、肌にやさしいので、頻繁な手洗いにも安心です。しっかりと泡立ててから、その泡を転がすように、手のひら、手の甲や指の間を洗い流してください。

固形石鹸

Q4.爪が割れたときのケアって?

A
手荒れは爪をもろくする大きな原因です。また、加齢や手の酷使、マニキュアなどで爪は薄くなって反ってきたり、割れやすくなったりします。爪の主成分はケラチンというたんぱく質。鶏のささみやむね肉、卵をはじめ、豆腐や納豆、青魚など、良質なたんぱく質をバランスよく摂りましょう。

Q5.ささくれができたときの対処法は?

A
爪の周囲や根元の皮膚がむけて、気になる上に痛いささくれは、手指の乾燥が一番の原因と考えられます。無理にむいたり引きちぎったりせず、皮膚にそっと戻して、吸水性のないテープやばんそうこうで保護しましょう。あかぎれの保護にもテーピングがおすすめです。

ささくれイラスト

Q6.敏感肌です。アルコール消毒はどうしたらよい?

A
手荒れで悩んでいるときは、直接アルコール消毒をする必要はありません。どうしても気になるなら外出時に手袋をして、その上からアルコール消毒をしてください。最近は刺激の少ないものや、消毒と保湿が同時にできるものも発売されているので、自分に合ったものを探してみましょう。

Q7.保湿以外の手荒れケアってありますか?

A
ビタミンAは、主に緑黄色野菜や動物性食品に含まれる脂溶性ビタミンのこと。肌の乾燥を防ぎ、肌バリア機能を高めるといわれ、手荒れの改善や美肌づくりにおすすめです。緑黄色野菜や、レバーなどの動物性食品に多く含まれていますが、必要量を摂取するにはサプリメントなどが効果的です。

緑黄色野菜や動物性食品のイラスト

皮膚科医の山内先生のお話、いかがだったでしょうか。今回の記事を参考に、自身の手荒れと向き合い、最適なお手入れを施して、手荒れから解放してもらえたらうれしいです。

(本文内イラスト 里井夏野)

 

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企画・構成=米村めぐみ
よねむらめぐみ●月刊『茶の間」編集部員。出社したらまずはお茶!仕事中はお茶ばかり飲んでいるといっても過言ではないほど、日本茶が好き。作家ものの湯呑など、うつわあつめが趣味。おいしい茶菓子にも目がありません。