暑さ、ストレス、夏冷え…。夏の不調を救うのは熱いお茶だった!

厳しい暑さで不調やストレスを感じ、一方で冷房によってからだが冷えてしまったり…。そんな不調が出やすい夏こそオススメなのが、実は熱い日本茶です。暑い夏こそ飲んでほしい、知られざる日本茶のパワーを、からだと心の2人の専門家が答えてくれました。

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江戸時代からある健康法。
夏のからだをいたわる
日本茶がすごかった!

江戸時代からある健康法。
夏のからだをいたわる
日本茶がすごかった!

橋本惠(はしもとさとし)●京都大学医学部を卒業後、数々の病院に勤務。2018年からは大阪の寝屋川と阿倍野に相次いで「みつばちクリニック」をオープン。高齢者医療の充実に尽力している。内科学会認定医。循環器学会専門医。日本心臓病学会特別会員。(写真/石川奈都子)

橋本惠先生

「夏は温かい物を食べて胃腸を温めなさい。冷水を飲んではなりません」

江戸期の儒学者、貝原益軒(かいばらえきけん)が著した『養生訓(ようじょうくん)』には、夏こそもっとも養生が必要な季節であると書かれています。

夏の養生と緑茶の関係に詳しい医学博士の橋本惠先生は、夏のからだをいたわる飲み物として「緑茶はすごい」と話します。

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夏の冷えに要注意!

「冷えは万病の元」というのは本当で、暑い盛りにこそ思い出してほしい言葉です。最近は酷暑なこともあり、冷房が過剰に効いた室内に長時間居続けることが多く、気付かぬうちに体温を奪われてしまうようになりました。

実は、涼しく快適な室内空間は、想像以上にからだに負担がかかります。冷気は足元にたまりやすく、立った状態だと、頭と足先では平均5度の温度差があるともいわれています。特にふくらはぎは冷えやすいので、レッグウォーマーなどで温めてください。そして適度な運動を続けること。一般的に女性は筋肉量が少なく脂肪が多いのですが、筋肉量が減少すると熱を発散させ、冷えやすい体質につながります。軽くからだを回す、簡単なスクワットを続けるなど、からだを動かす、ということを常に意識してほしいと思います。

熱いお茶が夏のからだを救う!

また、暑い、のどが渇いたと、冷たい清涼飲料水やビールをガブガブ飲むと、胃腸が冷えて体調を崩すという悪循環に陥りがちです。胃腸が弱ると食欲不振や血流の停滞にもつながり、からだがだるかったり、つかれやすくなったりします。内臓が冷えることで基礎代謝が衰え、内臓脂肪が付きやすくなるともいわれています。

夏の養生は、とにかく冷えすぎを避けることにあります。そこで頼りになるのが熱い緑茶。意外に思われるかもしれませんが、熱い緑茶は喉の渇きを抑えます。さらに、飲むにつれてからだの芯が温められ、冷えで弱った胃腸の働きを助けてくれます。しかも、ポリフェノールやカテキン、アミノ酸、ビタミンCなど、豊富な栄養素も見逃せません。カテキンの殺菌作用を期待して、医者仲間には診療の合間に緑茶を飲んでる人もいるぐらいです。私は毎晩、夕食後に深蒸し茶を淹れてリラックスしています。飲み終えた後、湯呑の底に残る「底だまり」は栄養素の宝庫です。ぜひ全部飲み干してくださいね。

熱々を飲むのが難しければ、急須から湯呑に注いで、少し冷めてから飲んでもいいのです。大切なのは、常温以上のものを摂取するということ。そして、習慣づけることです。体温が上がると基礎代謝が上がり、体調もよくなります。緑茶でからだをいたわり、潤しながら、夏を元気にお過ごしください。

橋本惠先生の説明

心の不調はからだの不調にも…。
日本茶は心にもよい影響が!

心の不調はからだの不調にも…。日本茶は心にもよい影響が!

雲林院宗碩(うんりんいんそうせき)●建仁寺塔頭霊源院住職。建仁寺は、日本にお茶を伝えた栄西禅師のお寺であり、京都のお茶を全国普及する活動を行うなど、多方面で京都の魅力を発信。(写真/村上文彦)

雲林院宗碩さん

ストレスによってイライラしたり、不安を感じたり、心が不調だとからだのほうにも影響が出てしまうこともあります。

心を落ち着ける“熱いお茶”のお話をしてくれたのは、 京都最古の禅寺・建仁寺の塔頭霊源院の雲林院宗碩住職です。

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じっくり丁寧にお茶を味わうことで 見えてくるものがあるはず

「禅とお茶は密接な関係があり、禅寺ではお茶を飲むことも大切な修行のひとつです」と語る雲林院住職。

禅には目の前のことを一つ一つ大切にする教えがあり、お湯を沸かし、急須で淹れ、熱いお茶を飲むという日常的なことにも、ただ一生懸命、真剣に取り組みます。

「禅では〝過去も未来も今にあり〟と言いますが、目の前のことに向き合うことで、日常のイライラなどをリセットするんです」

心を落ち着かせて、余計なことは考えず、今、目の前のことをひたすら行なう。それは、ただ喉の渇きを満たすためだけの行為ではありません。冷たい物をがぶがぶと飲むのではなく、熱いお茶をじっくり丁寧に味わうことで、本来の自分を取り戻し、心を整理するのです。

「私は売茶翁(ばいさおう)という江戸時代の禅僧が大好きなのですが、彼は鴨川のほとりに茶亭を開き、市井(しせい)の人々に茶を振る舞い、禅を説いたんです」

 

それまで大名をはじめ権力者を相手にする僧が多い中、売茶翁は庶民の中に分け入り、生活の中に禅の教えを伝えました。

「当時、お茶を飲むというのは庶民の人が手軽にできる一番のリラックス法だったと思うんです」

ゆったりとくつろぎ、相手と対峙し、禅を説く。売茶翁の言葉に〝一杯のお茶を飲んで悟りを開く〟という意味のものがあり、のんびりお茶を飲むだけでなく、真剣にお茶と向き合った先に、自分の生き方を見い出したといいます。

「私自身もお茶を飲むときは、急須や湯呑に感謝し、自分が修行中だということを意識しています。みなさんも、熱いお茶を飲んで余計なことを忘れ、本来の自分に立ち返ってみてください」

一杯のお茶を心を込めて淹れ、いただくことで、心を整理し、毎日を大切に過ごしましょう。

 

 

健康によいといわれているお茶ですが、夏の不調にもその健康パワーが役立つなんてびっくり!

この夏もますます暑さが厳しくなりそうですが、熱いお茶を飲んで毎日元気に過ごしたいですね。

皆様もぜひ、試してみてください。

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取材・文=羽切友希
はぎりゆき●月刊『茶の間』編集部員。ちびまる子ちゃんが好きな静岡県出身。小さい頃は茶畑の近くで育ち、茶畑を駆け抜けたのはよき思い出。お茶はやっぱり渋めが好き。