京都で話題の日本茶カフェ3店に聞いた! 急須で淹れるお茶の魅力

カフェと言えば珈琲が主流ですが、なんと日本茶を急須で淹れて提供するこだわりのお店が京都にはあるんです! 個性豊かな3店の日本茶愛好家に、急須で淹れるお茶の魅力、お気に入りの急須と選んだ理由について聞きました。自宅でのお茶時間の参考にしてみては。

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01.茶葉の飲み比べができるのも、急須で淹れるお茶ならでは!

茶菓 えん寿
カウンター席は泉さんの手捌きが見られる特等席。後ろに並ぶたくさんの急須や湯呑から「これで飲みたい」というオーダーもOK。

太秦(うずまさ)にある日本茶専門店「茶菓 えん寿」。店主の泉寿満さんが日本茶と和菓子に出合ったのは、調理師学校を卒業後、日本料理店での板前修業中のこと。地元・北海道には「お茶と和菓子」の文化が浸透していないことを知り、「勉強してみたい」と一念発起して京都へ。老舗和菓子店で18年の修業を経て、「カフェ感覚で日本茶と和菓子を楽しめる空間を」と、お店を開きました。

こちらで味わえるのは、単一農園単一品種、いわゆるシングルオリジンの日本茶で、泉さんが日本各地の名だたる日本茶の生産者と産地を巡り、自分の目と舌で確かめた茶葉のみを取り扱っています。その数、実に40種類。メニューには、生産者、生産地だけでなく、お茶の風味の違いや個性も記されており、好みに合うものを探しながら選べます。

茶菓 えん寿
泉さんが日本各地の産地を周る際、旅をともにした急須があった。これは、当時の急須によく似た形をした2代目で、「どうもこの形に愛着があるんですね。手の収まりも良くてお気に入りです」。

日本茶はすべて急須で供され、香りや味の変化を感じながら三煎ほど楽しめます。「急須で提供するのは、日本茶本来の味わいやしきたりなどを知らない人にも興味を持っていただき、急須で淹れるお茶を文化として残していきたいから」と泉さん。

「急須でしか出せない凝縮された旨みや、味わいもありますが、まずは文化そのものに親しんでもらえたらうれしいです」

茶菓 えん寿
蓋が割れてしまった初代「お気に入りの急須」。泉さんの旅の相棒。

また、泉さん手づくりの季節の和菓子もお茶と一緒にぜひ。月ごとに変わるお菓子は4種類程度。料理とお酒の関係性のように、お茶と和菓子のペアリングも一興です。日本料理、和菓子と日本の食文化を学んできた泉さんだからこそ提供できる「お茶の文化」を気軽に楽しんでみませんか。

茶菓 えん寿
お店でオススメの和束産の日本茶と生菓子のセットは825円。上品な甘さとふわりやさしい茶の香りがよく合う。
茶菓 えん寿

SHOP INFO
茶菓えん寿

【住所】京都市右京区太秦多藪町14-93
chien viverrin1階
【電話】075-432-7564
【営業時間】10:00~17:00
【定休日】木曜、第3水曜
【HP】http://chaka-enjyu.com 

02.急須で淹れるから、湯、水、氷などさまざまな抽出方法で楽しめる!

茶房藤花
茶道も嗜む尾上さんは、茶に向き合う姿勢も真剣で、凛々しさを感じる。店内には茶釜もあり、御点前の披露もある。

「若い世代には、急須を知らない人や、葉のお茶を知らない人も多いと思うんです」と、話すのは、世界遺産・平等院境内にある「茶房藤花」の尾上祥太さんです。学生時代にお茶農家の手伝いをしたことがきっかけで、日本茶について勉強を始めました。その後、日本茶インストラクターの資格を取得。お茶の魅力を伝えるために、同店では、〝本物〟の宇治茶に気軽に触れられる楽しみ方を考えました。

そのひとつが、冷茶をワイングラスで提供すること。見た目の斬新さはもちろんですが、それ以上に香りや味の伝わり方がダイレクトで「お茶ってこんなに旨みがあるんだ」と驚かされます。おいしさの秘密は、急須に氷と茶葉を入れて湯を注ぐ抽出方法にあります。湯を当てて香りを出し、その瞬間、氷で冷却することで雑味を出さない仕掛けなのだとか。ワインのようにグラスをくるくると回すと香りがふわ〜っと広がります。日本茶のイメージをいい意味で裏切るプレゼンテーションは、若い世代にも人気を呼んでいます。

茶房藤花
使用する茶葉はすべて100%京都府産で、スタッフみんなでつくり出した平等院独自ブレンド。まろやかな旨みが後を引く「宇治玉露、冷茶(900円)」は、一煎目はスタッフが、二煎目からは自分で淹れて楽しめる。

また、「お茶文化を次の世代に繋いでいきたい」と考える尾上さんは、インテリアコーディネーターの資格も取得し、「急須で飲むお茶をライフスタイルのひとつとして残したい」と、使いたくなる急須のデザインや、素敵だと感じられる同茶房の空間づくりにも力を入れています。

平等院境内という特別感にプラスされた〝素敵〟なお茶体験を味わいに出かけてみてください。

茶房藤花
手なじみのよさ、持ちやすさを重視した急須は、同店のスタッフみんなで選んだもの。おいしく淹れるための合理的な設計、見た目のシンプルさなどがお気に入りのポイント。
茶房 藤花
茶房 藤花

SHOP INFO
茶房 藤花

【住所】京都府宇治市宇治蓮華116平等院内
【電話】0774-21-2861
【営業時間】10:00~16:30(L.O.16:00)
【定休日】火曜(祝日の場合は営業)
【HP】https://www.byodoin.or.jp/touka/

03.急須で淹れると、茶葉が開くのを待つ数分、豊かな時間が生まれます!

YUGEN
テイクアウト分も一杯ずつ急須で抽出して提供。日本茶のイメージとは異質なモルタルのカウンターや白いオシャレなカップが印象的。

日本の伝統を身近に──。 そんなコンセプトから生まれたのが、日本茶をスタンド形式で提供する「YUGEN」です。通りすがりにさっと立ち寄ってお茶を飲んだり、テイクアウト可能なお茶を手に京都市内をぶらりと観光を楽しんだり。日本茶を親しみやすく、日常に寄り添う存在として提案しています。

YUGEN
店名の入った白いカップでおしゃれにテイクアウト!

同店オーナーの須藤惟行さんは「今、家でお茶を淹れる人って少ないのでは。このまま飲まれなくなったらどうしよう……という危機感が強かった」と言います。そこで、「お茶を飲む文化を街中につくる」ことを決め、手軽に飲んでもらえるための仕組みづくりを考え始めました。そのときに役立ったのがマーケティングやコンサルティングの仕事の経験。「消費者の視点でおいしくて、デザインがよいもの」を思案し、現在のスタイルに至りました。

YUGEN
須藤さんがお店や作家の工房などで見つけた湯呑や急須が並ぶ中でも、陶芸作家・山田隆太郎さん作のぽってりとした急須がお気に入りの一品。質感や形、取り回しのよさがポイントだそう。

また、「本当においしくないと2回目は来てもらえない」と、茶葉は信頼できる生産者から仕入れるシングルオリジンのみを提供。味を分かりやすく伝えるため、甘みや渋みのチャートも作成しています。

店内で楽しむ場合には、棚に飾られた中からお気に入りの急須を選び、自分でお茶を淹れて味わうことができます。

「慌ただしく、しない時代だから、ゆったり急須でお茶を淹れてほしい。ほんの2〜3分ですが、きっと豊かな時間になるはずです」

まずは日本茶に触れる機会に始まり、お茶に向き合う心地よさを教えてくれる同店。日本の伝統・文化の素晴らしさを再発見する時間になりそうです。

YUGEN
自分で選んだ急須と湯呑で楽しむ煎茶のセットは820円~。付け合せの小菓子もうれしい。「現代の茶室」をイメージしてデザインされた築100年の町家空間の風情も楽しんで。
YUGEN
YUGEN

SHOP INFO
YUGEN

【住所】京都市下京区大黒町266-2
【電話】075-606-5062
【営業時間】11:00~19:00
【定休日】不定休
【HP】https://yugen.liv-japan.com 

日本茶を急須で淹れて提供する店の方の思いをお伝えしましたが、いかがでしたか? なかなか外に出られないときは、自宅で急須と日本茶の茶葉、ちょっとしたお菓子を用意して、こころもからだも癒されるひとときをお過ごしください。


(文 岡田有貴/写真 津久井珠美)

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企画・構成=米村めぐみ
よねむらめぐみ●月刊『茶の間」編集部員。出社したらまずはお茶!仕事中はお茶ばかり飲んでいるといっても過言ではないほど、日本茶が好き。作家ものの湯呑など、うつわあつめが趣味。おいしい茶菓子にも目がありません。