椅子があればどこでも茶空間!話題の「チェアリング」でお茶してみた

その気持ちよさから最近注目を集める「チェアリング」。椅子を野外に運んで好きな場所に設置し、気ままに過ごすアクティビティです。今回、お茶を愛する若き茶人・三窪笑り子さんが、京都・嵐山でチェアリングならぬ茶(チャー)リングに挑戦しました!

チェアリング

今、話題のアクティビティ「チェアリング」を知っていますか?

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最近、にわかに注目が集まっている「チェアリング」。

アウトドア用の折りたたみ椅子ひとつを持って外に出て、好きな場所に置き、そこでお酒をを飲んだり読書をしたり、気ままに過ごす行為を指します。

川原や公園で、自分が選んだ場所に椅子を置けば、そこがひとときのパーソナル空間となる喜び。ベンチなどの定められた場所ではないところに座るだけで、いつもの公園や川原が非日常の場所になります。お酒を飲まなくても、本を読んだり、ただただボ〜ッとしたり、時間の使い方も自分次第です。

お酒好きの間で始まったチェアリングですが、もちろんお茶でもOK。今回、お茶を愛するお茶人・三窪笑り子さんに、風光明媚な京都・嵐山の渡月橋が見える川原で自前の道具を持ち運んでいただき、チェアリングならぬ茶(チャー)リングに挑戦してもらいました。

お茶人の目に、チェアリングはどう映るのでしょうか?

共通点もありますが、「野点」とはまた違った趣がありますね。

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「以前から、思い立ったら“マイお茶セット”を持って、ひとりでも、友人とでもよく、鴨川べりに行って、お茶を楽しんでいます」と話す三窪さん。

煎茶や抹茶など、その時どきで、お茶の種類も気分に合せて選んでいるそう。旅先には、必ず、抹茶セットを持っていくのだとか。

「朝、ホテルで一服して、その後、公園や広場など気持ちのいい場所で野点(のだて)をするんです。その国、その土地ならではのお菓子を用意して、抹茶や現地のお茶とペアリングしてみたり、現地の人たちにも一服差し上げて、お茶の交流を楽しみます」

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「茶道の世界にも野点と呼ばれる屋外で抹茶を点てる作法があります。自然とともにお茶をする行為は、お茶人の間で昔から楽しまれてきたのです。“茶(チャー)リング”って素敵な言葉ですよね。お茶をゆっくり飲めば、そこが束の間、自分だけの場所になります。籠やトートバッグを使って、あれこれ工夫して、お気に入りの“マイお茶セット”を、自分の感性でつくるのもとても楽しいですよ」と三窪さん。

お茶を介して、思わぬコミュニケーションが生まれることが一番の喜びだと話します。

まずは煎茶で一杯。爽やかな香気をゆるりと楽んで

チェアリング
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「チェアリング」ならぬ「茶(チャー)リング」は、椅子とお茶と簡単な道具さえあれば、どこでも自分の空間をつくることができます。

今回三窪さんが用意したのは、小さめの保温の水筒。これだけあれば、煎茶も3煎、十分いただけます。茶器が割れないようにキルティングの袋などを活用するとよいでしょう。

「最初に急須と茶碗をお湯で温めて、茶葉が開くまで約1分間待ったら、丁寧に最後の1滴までお茶を注ぐようにしましょう。今回は、老舗和菓子店のお菓子を用意しましたが、マカロンやクッキーなど、洋菓子もよく合います」と三窪さん。

煎茶の場合は、茶殻が出るので、持ち帰るための水切りネットや小さいビニール袋を忍ばせておくと安心だそうです。

チェアリング
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道具は、古伊万里の茶碗、木下和美作の急須、イギリスのアンティークショップで見つけたピルケースを菓子入れに、めがねレンズを菓子皿に見立てて。お菓子は、くるみと金柑にすり蜜をつけた「橙糖珠」(老松製)。茶器を入れている袋は、台湾のお茶屋さんで見つけた持ち運び用茶器入れを使っている。

お次は抹茶。手づくりのお菓子で心づくしの一服を

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煎茶の次に楽しむお茶は抹茶です。

「小さめのポットにお湯を入れていけば、抹茶なら2〜4服、楽しむことができます。

木の抹茶椀は、erakkoさんという作家さんにオーダーしてつくってもらいました。漆を塗っているため、口当たりもよく、何より軽いので持ち運びにとても便利です」

三窪さんが使っている折りたたみの茶杓は、まさに「茶(チャー)リング」にぴったり。抹茶に合せるお菓子はなんと自作で、すはまで小さなお団子をつくってきてくれました。

「お団子なら、串を持って気軽にいただけるので、屋外でお茶をするときにおすすめです」

チェアリング
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茶碗はerakko製の木の茶椀、台湾で見つけた茶葉入れを茶入に使っています。折畳茶杓(くのてるゆき作)は、茶(チャー)リングにぴったり。三島豆皿(生華窯造)には愛らしいお団子。すはまは、きなこと砂糖と水飴があれば、簡単に手づくりできるのでお試しを。

最後はチャイ! 華やかな赤絵の茶碗で旅の思い出に浸る

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「お茶は現地で淹れてもいいですが、チャイなどは家でつくったものをポットに入れて持っていき、別の茶器に移し替えるだけでも、素敵な雰囲気になります」と三窪さんが次に楽しむのは、スパイス香るチャイ。

「今日は、チャイ用の茶葉にスパイスや花びらなどを加えたマサラチャイブレンドをチョイスしました。インドのお茶屋さんで見つけたものです。以前、南インドに行ったとき、マイお茶セットで、現地の人に抹茶を一服差し上げたんですが、お礼は一杯のチャイでした。思わぬお茶交流に、感動したことを覚えています」

茶碗は華やかな赤絵、菓子皿は極薄の三日月銘々皿(erakko製)を組み合せて。お菓子は、手軽に市販のチョコレートをペアリングしています。

チャイを飲みながら、旅の思い出を振り返る楽しいひとときが過ぎていきます。

チェアリング
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茶碗は赤絵、菓子皿は抹茶椀と同じerakko製の三日月銘々皿。茶器を持ち運ぶ袋は、台湾で見つけたもの。チョコレートは市販のもので、小ぶりのものがおすすめ。赤絵の茶碗にたっぷりとチャイを注いでどうぞ。

はじめての茶(チャー)リングを終えて……

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はじめての茶(チャー)リングにもかかわらず、煎茶、抹茶、チャイと3種ものお茶を楽しんだ三窪さん。

「渡月橋を眺めながらお茶が飲めるなんてとっても贅沢ですね。今度は紅葉の季節に茶(チャー)リングしてみたいです!」ととても楽しんでいただけたご様子。

みなさんも、お手持ちの椅子や道具を持ち運んで、お庭や川原など太陽の下で気軽にお茶を楽しんでみてくださいね。

(取材・文:郡麻江/写真:入交早紀)

企画・構成=大村沙耶
おおむらさや●月刊『茶の間」編集部員。福岡県北九州市出身。学生時代は剣道に打ち込み、京都に住み始めてから茶道と着付けを習い始める。ミーハーだけど、伝統文化と自然を愛する超ポジティブ人間。