普段の生活で当たり前のように飲んでいる日本茶ですが、今回ご紹介する3店を見れば、日本茶の概念が変わるかもしれません。さまざまな形で、時に思いもよらぬ提供方法で日本茶を楽しませる「チャレンジするお茶」をご紹介します。日本茶を愛するがゆえに生み出された、個性的なメニュー&サービスを、京都を訪れた際はぜひお楽しみください。
01.日本初!? まんじゅうにお茶をかける和菓子のお茶漬け!
間ーMAー
01.日本初!? まんじゅうにお茶をかける和菓子のお茶漬け!
間ーMAー
日本茶の文化に親しむことをコンセプトにしたカフェ兼ギャラリー「間 ─MA─」。ここに和菓子のお茶漬けがあると聞き、さっそくお店へ。目の前に運ばれてきたのは、美しいお碗に盛られた和菓子と日本茶のセット「茶妙(さみょう)」です。
「お饅頭にお茶を注いでください」と案内され、注いで、ひと口。お饅頭の薄皮の食感、餡や薄皮に染み込む煎茶の旨み、どれも初めて出合う驚きのおいしさに感動していると……。
「文豪・森鷗外もご飯にお菓子をのせて、お茶をかけて楽しんでいたそうです」と、オーナーの酒井俊明さん。もちろんはじめからお茶漬けでなく、和菓子とお茶を一口ずつ、そのものの味わいを楽しむもよし。お茶をかけて、餡がとけ出したお茶を口に含めば、まるでお汁粉のようです。
お菓子とお茶は3種類を用意し、煎茶、玉露、抹茶など、和菓子ごとにセレクトを変えて、日本茶の多彩さと懐の深さを堪能させてくれます。
また、同店でぜひ試したいのが、100種類近い茶葉の中から好みの3種類を選べる「茶味比べ」です。
「お茶に対する固定概念なく、いろんな味を楽しみたいから」と、ベルギー人、日本人、ドイツ人の3人がセレクターを務め、日本茶だけでなく、和製中国茶や和紅茶など、すべて日本でつくられたお茶を揃えます。
酒井さんは、「以前、仕事の関係で海外と日本を行き来する生活を送っていました。マンガやアニメは知られているけど、日本のお茶文化が浸透していないことに気付いたんです。日本茶には多種多様な茶葉と味があり、それぞれに違うのですが、ワインのように細分化されていない。素晴らしい文化なのに何だかもったいない」と話します。
日本茶を愛好し、茶道も嗜んでいる酒井さんは、お茶を使って何ができるかを考え、これらの楽しみ方を提案することに。「日本茶にアクセスする間口を広くして、興味を持ってもらうきっかけをつくれたら」。日本茶を知るオープンな「空間」として、今後の発展が楽しみです。
間 ─ MA ─
【住所】京都市南区西九条比永城町59
【電話】075-748-6198
【営業時間】11:00〜19:00
【定休日】不定休
【HP】https://0ma.jp
02.唐揚げに最高に合う日本茶はコレだ!!
そ/S/KAWAHIGASHI(そ・かわひがし)
02.唐揚げに最高に合う日本茶はコレだ!!
そ/S/KAWAHIGASHI(そ・かわひがし)
「世界最高傑作のペアリングは、白ごはんと梅干、ほうじ茶だと思うんです」と話すのは、「そ/S/KAWAHIGASHI」店主の中東篤志さん。
京都で代々、料亭を営む家系に生まれ、幼い頃から父である「草喰(そうじき)なかひがし」の主人・中東久雄さんに料理を学び、20代でニューヨークにある精進料理店で副料理長を務めたという、おいしいものを知り尽くしたであろう経歴を聞けば、冒頭の言葉も重みが違うというものです。
現在はニューヨークと京都を拠点に、日本食のイベント企画や飲食店のプロデュースなどを手がける中東さんが、昨年10月、満を持して自身のお店をオープン。今回、こちらで楽しめる料理の旨みが引き立つ、日本茶とのペアリングを教えてもらいました。
「卵が乗ったとり唐揚げ」にかかっているのは黒七味と、チリペッパーやクミン、カルダモンなどがミックスされたタンドリー。唐揚げのスパイシーさと、焙烙(ほうろく)を使って手炒りした「焙じ茶」のスモーキーな香りが、お互いを強調し合い、インパクトのある風味に。それに加えて、喉ごしもスッキリとしたほうじ茶は、口の中の油っこさを流してくれます。
こうした提案は、〝おいしいを見つける九席のカリナリーハブ(飲食基地という意味)〟をコンセプトとする同店の得意分野。スタッフとの会話から、お茶と料理の組合せをあれこれ探すのも楽しそうです。常時、約20種の日本茶が揃う背景は、ニューヨークにあるのだとか。
「5年前に帰国し、日本ではお茶が身近なものすぎて、興味の持たれ方が浅いように感じました。僕自身、各地の玉露や煎茶のおいしさを教えてもらったのはアメリカ人から。当店では、比較的キャラクター=特長のある日本茶を選んで提供しています。飲んだ瞬間に驚きや感動があり、『お茶っていいな』と感じてもらえたらと思います」
そ/S/KAWAHIGASHI
【住所】京都市左京区丸太町通川端東入ル東丸太町18-5
【電話】075-748-1715
【営業時間】12:00~14:00/16:00~23:00
【定休日】不定休
【HP】https://www.culinaryhub-so.com
03.宇治茶とコーヒーがまさかの合体! 世界がおどろく煎茶コーヒー!
京茶珈琲cafe高台寺店 TeaCoffee&Shop
03.宇治茶とコーヒーがまさかの合体! 世界がおどろく煎茶コーヒー!
京茶珈琲cafe高台寺店 TeaCoffee&Shop
まろやかでコクのある味わいの宇治茶は、急須で淹れると格別です。そのままでも十分においしい宇治茶ですが、変わった試みで世界に広げようとするお店があるとか。その試みというのが、コーヒーとの融合というのだから、〝お茶&コーヒー好き〟としては飲まないわけにはいきません。さっそくお店へうかがい、「なぜコーヒーと合せたのか」聞いてみました。
高台寺近くのカフェ「京茶珈琲café」の店長の大峯香菜さんは、企画プロモーションなどを行なう会社に在籍しており、そこで出合った宇治茶のおいしさを、日本のみならず世界中で〝もっと知って欲しい〟との思いから、嗜好品として親しまれているコーヒーとかけ合せることを考えたそうです。
「京都の茶職人とコーヒー職人の協力を得て、茶葉のふるい分けや火入れなど、おいしさや香りを引き出す技術と、豆の選定から焙煎、挽きの粗さなど細部に渡る匠の技を組合せ、〝京茶珈琲〟が完成しました」
宇治茶のおいしさを広める手段としてコーヒーを選んだ大峯さんらは、完成した京茶珈琲をラスベガス、ニューヨーク、パリの名だたる食フェスティバルへ出展。
「日本茶を飲む習慣のない海外で、どこまで味で勝負できるかの挑戦でした。結果、すべてでよい反響をもらい、逆輸入の形で日本へもってきたんです」
そんなお茶とコーヒーのハイブリッドな飲み物は、コーヒーの風味の中にお茶の旨みが爽やかに香る斬新な飲み口が特長。それぞれの味と香りを立てるために、茶葉、珈琲豆の状態のものからブレンド、ドリップして提供しています。
「とりわけ味の繊細さが際立つ煎茶コーヒーは、ハンドドリップで淹れています。少し冷ました90度に設定して時間をかけずにサッと抽出。渋みやえぐみが出る前に、煎茶の香りを引き出します」
宇治茶発の新しい飲み物をぜひ試してみてください。
京茶珈琲café 高台寺店 TeaCoffee&Shop
【住所】京都市東山区下弁天町49 高台寺ビル1F
【電話】075-533-7500
【営業時間】11:00~17:00
【定休日】水曜
【HP】https://nagikyoto.com
今、京都で注目の日本茶を楽しめるお店をご紹介しましたが、いかがでしたか? 日本茶の新たな楽しみ方に、心躍った方も多いのではないでしょうか。実際にお店に足を運ぶのもよいですが、なかなか外出できないときは、おうちでのお茶時間の参考にして楽しんでみてください。
◎合わせて読みたい
→ 京都で話題の日本茶カフェ3店に聞いた! 急須で淹れるお茶の魅力
→ 今こそおうちでお茶を!日本茶好き3人に聞くお茶時間の楽しみ方
(文 岡田有貴 市野亜由美/写真 津久井珠美)
企画・構成=米村めぐみ
よねむらめぐみ●月刊『茶の間」編集部員。出社したらまずはお茶!仕事中はお茶ばかり飲んでいるといっても過言ではないほど、日本茶が好き。作家ものの湯呑など、うつわあつめが趣味。おいしい茶菓子にも目がありません。