茶道からふだんのお茶まで、あらゆる日本茶を熟知するベルギー人のティアス宗筅さん。日本人でも取得が難しい日本茶インストラクターや茶道師範も持ち、お茶に対する情熱には驚かされます。そんなティアスさんに、日本茶の魅力、そして楽しみ方をお聞きしました。

交換留学で訪れた日本で、どんどんお茶に魅了された!
ベルギー出身の茶人・ティアス宗筅さんは、大学生のとき、交換留学で日本へ来たことをきっかけに茶道の世界へ。ところが、茶の道を進んでゆく中で一つの疑問が生まれたそう。
「茶席では、お道具や掛け軸のことは語られるのに、茶の品種や栽培について触れられることはほとんどありません。茶道を構成する大事な要素である茶が、どこの茶葉で、どんな風につくられているのか知りたくなり、日本茶の勉強を始めたんです」

そんな折、有機茶葉を生産する茶農家との出会いから、単一茶葉のおいしさに目覚めたティアスさん。「この味は、広めるべきだ」と、海外向けの茶葉の販売を始めました。
「海外のお客様は日本茶も紅茶も中国茶も同じ『茶』として、それぞれの香りや味わいなどを嗜好品として楽しんでいます。ぶどうの品種や産地、生産者や年ごとにワインの味が変わるように、茶の多様性に魅力を感じていらっしゃるようです」
日本では毎日飲むものだからこそ、変わらぬ味が求められがちですが、ティアスさんはあえて味の違いを楽しむことをコンセプトに、自身の日本茶の道を深めていきます。

お茶の魅力を伝えたい! との一心で、京都に店をオープン!
そして、2020年8月に「茶ノ実鶴園」の実店舗がオープン。茶葉の違いを知り、楽しむ場を提供するためのワークショップスペースを設け、注目を集めています。
「ワークショップでは、お茶を召し上がっていただく前に、茶葉のこと、生産者について必ずお話します。その上で、お茶の奥深さや幅広い味わいを知ってもらえたら」
日本茶の知識がなくても、もちろん大歓迎。気軽に参加してもらうことを大切に、日本茶への入口を低く、広く設定しています。

さらに、店内には「立ち飲み茶道」カウンターをつくりました。茶道師範とは思えぬ、大胆な取り組みは「間近で見てもらって興味を持ってほしいから」と、どこまでも茶への発想は自由。

自身がそうであったように、「楽しい、興味がある」を間口に日本茶の魅力をどんどん発信するティアスさん。新世代の日本茶の楽しみ方に、ぜひふれてみてください。

茶ノ実鶴園
【住所】京都市上京区春日町424-2
【営業時間】水・木・金曜14:00〜17:00
【問い合わせ】contact@the-tea-crane.com
【HP】https://www.the-tea-crane.com/jpn/
おわりに
ティアス宗筅さんのお茶への想いを取材して、改めて日本茶の奥深さ、魅力について考えるきっかけとなりました。みなさまも忙しい毎日にお茶を飲み、ゆったりとした時間をお過ごしください。
(写真 津久井珠美/ 文 岡田有貴)

企画・構成=米村めぐみ
よねむらめぐみ●月刊『茶の間」編集部員。出社したらまずはお茶!仕事中はお茶ばかり飲んでいるといっても過言ではないほど、日本茶が好き。作家ものの湯呑など、うつわあつめが趣味。おいしい茶菓子にも目がありません。