プロが教える、会議や来客時におもてなしの心が伝わるお茶出しのマナー

スイーツやラテなど、さまざまな楽しみ方がある抹茶。茶道の作法やしきたりは苦手だけど、抹茶の味は好きという方も多いのでは? 抹茶の本場・京都で、リラックスには抹茶が欠かせないという3人にインタビュー。作法などに囚われない、自由な楽しみ方をお聞きしました。

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教えてくれる人

株式会社マナーコンシェル 野口えみ子さん

株式会社マナーコンシェル
野口えみ子さん

NPO法人日本サービスマナー協会認定講師。関西を中心に、会社員や医療施設、女性向けのマナー研修を行ない、指導に尽力している。
https://www.manners-concier.com

考え方は人それぞれ、あらゆる価値観を想定してお茶を出しましょう

2021年は、長期間におよぶ緊急事態宣言で大変な思いをされた方も多いと思います。ワクチンを接種された方も増え、人と接する機会も増えてくるであろう年末年始。急な来客のときに慌てなくてすむよう、改めてお茶出しの流れをおさらいしてみましょう。

お茶出しの際、自宅でもオフィスでも、キッチンや給湯室でお茶を淹れて出すことが多いですが、この時期、私がおすすめしているのは、お客様の目の前でお茶を淹れるおもてなしです。まだまだ油断できない時期だからこそ、目の前で淹れたてのお茶を出すことで、お客様に安心感を与え、真心が伝わると思っています。

お茶出しはおもてなしの気持ちの表れですから、自分中心に見えてしまう行為や素振りは慎みましょう。一番大切なことは「人それぞれ不愉快に思うポイントが違う」ということを理解すること。自分にとってはOKでも、相手にとってはNGなこともあると考え、「よろしければ……」「ご迷惑でなければ……」といった言葉遣いで、押し付けない心遣いを大切にしてください。

今回、少しの心遣いで、相手も自分も気持ちよく過ごせる私流のおもてなしをご紹介いたします。場所や相手によっておもてなしは変わるものなので、臨機応変に対応してくださいね。たとえば、お茶はお客様の下座に当たる右側後方から出すことが基本ですが、場所によっては、右側からお出しできないときや、狭くて相手の後方に回れない場合もあります。その場合は、無理な体勢で出すよりは、左側や前方からお出しする方が安全です。「こちらから失礼します」と一声かけてお出しすれば問題ありません。

考え方は人それぞれですので、あらゆる価値観を想定して、お茶のおもてなしをすることで、招く側も招かれる側も気持ちのよいお茶時間を過ごしましょう。

【おもてなしの心得】
お茶出しの際はお客様への歓迎の意を、お茶に込めましょう

オフィスやご自宅への急な来客や、ちょっと気を遣う方が来られた際、お茶を出してもてなす流れをご紹介します。

ごくたまに、お客様が来る時間に合せて事前にお茶を淹れておく方がいらっしゃるのですが、お茶はおもてなしの気持ちの表れなので、必ず、お客様が来られてから淹れましょう。特に今の時代は、お客様の目の前でお茶を丁寧に淹れることで、安心感を与え、歓迎の意が伝わるおもてなしになります。もちろん、応接室でお茶を淹れるのが難しい場合は、キッチンや給湯室で淹れてもよいでしょう。ご自宅やオフィスの造りに合せて、アレンジしてみてくださいね。

【準備】お盆にお茶道具をセットする〜自宅編〜

お客様の目の前で淹れられるよう、お盆にお茶出しに必要な道具をセットします。お湯はポットに入れて、事前に応接室にセットしておきましょう。

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お茶出しの流れ〜自宅編〜

お茶道具をセットしたら、お盆を持って、お客様のもとへ向かいます。応接室に入室してからの立ち居振る舞いを、一連の流れでご紹介します。

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上座と下座とは?

テーブルの図

一般的なマナーとして、席次には上座と下座があります。これは日本独特の文化で、自分が座る場所によって目上の人やお客様に敬意やおもてなしの気持ちを表すものです。上座は、その場で一番心地よく安全に過ごせる場所、下座はその逆で、お客様をお迎えする側、役職が下の人が座る場所となります。基本的には、入り口から遠い奥の席が上座、出入り口に近い席が下座となります。また、日本の伝統礼法の中では「左を上位、右を下位」というしきたりがあり、左側が上座・右側が下座ということも覚えておくとよいでしょう。

オフィスでのおもてなしの場合

基本は自宅でのお茶出しと同じですが、入退室の立ち居振る舞いや、タイミングを見計らうなど、オフィスならではのポイントがありますので、流れに沿ってご説明します。

【準備】お盆にお茶道具をセットする〜オフィス編〜

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お茶出しの流れ〜オフィス編〜

お茶出しの流れ〜オフィス編〜

おわりに

お客様の目の前でお茶を淹れることで、安心感を与えつつも、淹れたてのおいしさを味わってもらえるお茶の出し方をご紹介しました。

状況によっては、ペットボトルを使うこともおすすめです。その場合は、飲みきれる小ぶりなサイズのペットボトルを選び、紙コップや紙コースターを添えましょう。「こんな時期ですのでペットボトルで失礼します」と一言添えれば、失礼ではありません。

今回ご紹介したお茶のおもてなしのマナーをぜひ参考にしてみてくださいね。

 

(文・大村沙耶、撮影・福尾行洋)

企画・構成=大村沙耶
おおむらさや●月刊『茶の間」編集部員。福岡県北九州市出身。休日は、茶道や着付けのお稽古、キャンプや登山に明け暮れる。ミーハーだけど、伝統文化と自然を愛する超ポジティブ人間。