知って得するお茶知識。新茶でも時期や部位で味わいが違うんです!

みなさまは今年の新茶はもう飲まれましたか? その年、最初の新芽からつくられる新茶は「一番茶」とも呼ばれ、5月を中心に収穫されます。でも、6月になったからもさまざまな種類のお茶が「新茶」として販売されています。どうしてすべてのお茶がいっせいに新茶に切り替わらないのでしょうか? そこには2つの理由がありました。

なぜ一度に新茶にならないの?

答え1

5月初旬から6月にかけて、日を追うごとに新たな新茶の商品が続々と登場します。 「でも、どうしていっぺんに全部のお茶が新茶にならないで、だんだんと変わっていくの?」と不思議に思った方もいるのではないでしょうか。それは、茶農家さんが新芽の生育具合を見極め、ベストなタイミングで摘み取りを行なっているからです。 お茶の木は、過酷な環境で冬を乗り越え、暖かい春を迎えて芽吹きます。これを摘み取ったものが新茶です。茶は農産物ですので、一律に成長するわけではありません。新芽の成長具合は、年ごとに異なる気温や天候などに左右されます。また、摘み取るタイミングによって収量や品質が変わるため、さまざまな状況を見極めながら、その茶畑にベストなタイミングで新芽の摘み取り作業を行ないます。 4月下旬から5月初旬に摘み取られる新茶は、まだ太陽の光をあまり浴びていないやわらかな新芽です。お茶の枝は、先端に芽があり、そこから下へと互い違いに葉がついています。芽と、その下の3枚の葉の部分を「一芯三葉(いっしんさんよう)」といいます。まだ若く、紫外線をあまり浴びていないので、旨みと甘みの主成分であるテアニンが豊富で渋みが少ないという特長があります。 5月中旬以降になると、日照が強まり、芽はさらに成長します。その新芽を摘み取り、どんどん製茶されていきます。一芯四葉・五葉となった新茶は、日光をしっかり浴び、健康成分カテキンをたっぷりと蓄えています。 早いうちに摘んだほうがいい新芽なのか、しっかり成長させたほうがいいものなのかを畑ごとに見極め、 ベストな状態の新茶を茶農家さんたちは届けてくれます。

茶葉は芽の季節によって
答え2

新茶シーズンの中盤~後半にかけて登場するのが、「出物(でもの)」と呼ばれるお茶たちです。茎や芽、粉になったものを、お茶を加工する過程で選り分けたものです。 茶畑から摘み取ってきた新芽は、「蒸す」「揉む」「乾燥する」という工程で製茶されます。そうしてできるのが、「荒茶(あらちゃ)」と呼ばれる緑茶の原型。ここから仕上げ加工をし、お茶の味や香り、大きさなどを整えて、商品として皆様の元へ届けられます。その仕上げ加工のときに、茶葉の大きさを揃えるために篩(ふるい)にかけられ、選別されるのが芽・茎・粉の茶葉。これらをコツコツと集めたものが出物と呼ばれるお茶になります。出物はとれる量が少なく、荒茶全体の数パーセントほどしかとれません。新茶の製茶・仕上げ作業がピークを過ぎる頃、ようやく皆様にお届けできるだけの量が確保できるのです。

希少な部位は

そんな貴重な出物ならではの、個性豊かな味わいを心待ちにしているお茶ツウの方も多くいらっしゃいます。 出物の中でも比較的多くとれる「茎茶」は、清々しいすっきりとした味わいが人気。茎茶の新茶はさらに渋みが少なく、あと味のよさが際立っています。比較的価格が手頃で、濃厚な新茶と同じ香りや味わいが楽しめる「粉茶」は、短時間で淹れられる手軽さも魅力。これから成長しようという栄養がぎっしりと詰まった芽を使用した「芽茶」は生命力あふれる力強い味わいです。

3種の味わいや香りは全くの別物!

おわりに

新茶はまさに、一年に一度だけの特別な味わい。走りの瑞々しい味わいも、後から出てくる奥深い味わいも、それぞれの違いを感じながら、ぜひ楽しんでください。

planmake_hagiri

編集=羽切友希
はぎりゆき●月刊『茶の間』編集部員。ちびまる子ちゃんが好きな静岡県出身。小さい頃は茶畑の近くで育ち、茶畑を駆け抜けたのはよき思い出。お茶はやっぱり渋めが好き。