【都をどり】混雑なし!たった 5,500円で舞妓を堪能する裏ワザ

4月の観光は桜を見たり舞妓に会ったりと、京都らしい体験がしたいけど、花見客の人混みは避けたいし、お座敷は敷居が高い……。

そんな方には祇園の春の風物詩「都をどり」がおすすめ。基礎知識やチケット情報、初舞台を踏む舞妓インタビューをお届けします。

※ 2019年4月時点の情報です。

都おどり
都をどり(平成30年度 春秋座公演時)写真全て
提供 祇園甲部歌舞会 撮影 ハヤシフォート

2019年の舞台は67年ぶりにあの劇場!
60人もの芸舞妓に会える都をどり、
知っていますか?

都おどり

桜咲く春爛漫(らんまん)の舞台、雅な三味(しゃみ)の音(ね)。扇子をふり、一歩一歩、総勢約60人の芸舞妓たちが足並みを揃えるさまは、圧巻の美しさ……。京を代表する花街・祇園甲部(ぎおんこうぶ)の芸舞妓による舞踊公演「都をどり」。そのハイライトのひと幕です。

都をどりの始まりは明治5年(1872)。祇園万亭(まんてい)=現一力亭(いちりきてい)の主人と、京舞井上流の家元・三世井上八千代さんが考案。明治維新による東京遷都のあと、京都再興 のため開かれた京都博覧会の余興として披露されたものが最初です。

都おどり

戦時中に6年間中断しましたが、初演から 147年たつ今も、終始幕を下ろさず背景を変えて場面転換する独特の演出は、連綿と受け継がれています。

春から夏、秋、冬、再び春へと四季が巡る、1時間限りの美しい光景。京都の名所を再現し、春の桜などの四季を表現することで、屋内にいながらにして各地を巡り、四季折々の雰囲気を味わえる構成になっているのです。

ファンも多いだけに、伝統は継ぎつつもテーマは毎年新作。振り付けや衣裳、音楽、美術もその年ならではです。 また今年の見どころとして、皇室に縁のある名所を舞台に、新天皇即位の祝賀を込めた第六景「桂離宮紅葉狩」もあります。

都おどり

芸舞妓が日替わりで舞の日、お囃子の日を担当。浄瑠璃や京舞の要素を織り込み、観客を非日常へと誘います。

都おどり

今年も休館中の祇園甲部歌舞練場(ぎおんこうぶかぶれんじょう)に代わって舞台となるのは、昨年秋に新開場した南座。戦後に都をどりを再開した会場でもあり、そのとき以来となるので、じつに67年ぶり。生まれ変わった南座が迎える初めての春を、華やかに飾ります。

都おどり

また、今年のテーマは「御代始歌舞伎彩(みよはじめかぶきのいろどり)」。銀襖(ぎんぶすま)を背に、揃いの青の着物姿が目にも艶やかな総をどりから、南座の歌舞伎にちなむ第四景「四条河原阿国舞(しじょうがわらおくにのまい)」を含む、圧巻のフィナーレまでの全八景という構成です。一度にたくさんの芸舞妓に会える、豪華絢爛なひとときを堪能してください。

初々しいインタビューが読めるのはここだけ。
“会える祇園のアイドル”、その素顔とは……

舞妓さん

都をどりの稽古は直前の1ヵ月間のみと、とても濃密。舞台裏の芸舞妓は、振り付けの修得に必死の思いです。そんななかで、2019年は、都をどりの初舞台を踏む舞妓は11人います。そのうち、2人の舞妓さんの素顔をご紹介しましょう。

都をどりのこと、17歳の彼女たち自身のこと。2019年2月、祇園甲部のお茶屋「西村」の新人舞妓、 槇里子(まりこ)さんと美羽子(みわこ)さんの仲よし2人に、舞台裏や本音について話していただきました。

西村の舞妓さんと柴犬のチロ
「西村」には代々、看板犬を務める柴犬「チロ」が。今のチロは3代目だそう。

槇里子●今日は取材しに来てもろて、おおきに。週1回の髪結(かみゆい)さんに行きたてで、きれいにしてもろうたところやさかい、ちょうどよかったどす。

美羽子●看板犬のチロちゃんも喜んでます(笑)。うちは、中学2年生のとき、担任の教え子やった京都の芸妓さんに会うたときから、舞妓になるのが夢どした。

槇里子●うちは地元の京都物産展に来ていた舞妓さんをひと目見た、小学生の頃から、舞妓に憧れてました。美羽ちゃんとは、誕生日も舞妓になった日もほぼ同じやし、ほんまの姉妹以上に、特別な関係なんどす。

舞妓さん

美羽子●私より少し先にこの世界に入ってた槇里ちゃんの第一印象は、「同い年やのにしっかりしてはる」でした。でも今では、ちょっとヌケてるような印象どす(笑)。

たまの休みもずっと一緒にいて、祇園でスイーツ巡りしたり、河原町でお洋服の買い物したり、流行を知るために映画を観たり。休日にやりたいことが多すぎて、いつもやりきれずに、未練たらたらで帰ってくるのよね。

槇里子●休み以外のお稽古も、だいたい一緒にいるね。お茶にお三味線、お囃子(はやし)と、ぎょうさんあって大変どすけど、新しいことができるようになったときはほんまにうれしいし、なによりも今は毎日、舞妓になれた喜びを噛みしめてるんどす。

美羽子●「舞妓」というくらいやし、舞には特に力が入ります。普段のお稽古では、お座敷で披露するために、季節ごとの舞を習うてます。

舞い方などを解説する教本(きょうほん)のようなものはなくて、お師匠さんと向き合うて教えてもらうのどすけど、動きをまねするのだけでも、まだまだ難しく感じています。

舞妓さん
月刊『茶の間』2月号に載っていた他の舞妓さんを見つけて、「あ、これ〇〇姐さんやん!」と2人ともウキウキ。

槇里子●3月からは都をどりのお稽古が始まりますけど、少しのワクワクと、あとはドキドキしかありまへん。

うちら新人舞妓は、芸舞妓が一斉に舞う「総をどり」という場面に出してもらうのどすけど、少しでも動きがズレたら、すごく目立ってしまうので。でも揃ったときは、ほんまにきれい! あれだけ衣裳で着飾ると、普通に動くだけでも大変なんどす。

それでも、去年、姐(ねえ)さん方 (がた)の都をどりを観せてもろたんですけど、見事に揃ってました。

素敵やな、かっこいいなって尊敬しながらも、同時に、自分も同じように舞台に立てるのか、ちょっとこわいような気持ちに……。

美羽子●都をどりは毎年出ることになるけど、1年目が特に大変やて、姐さん方は言わはるよね。右も左もわからへんからって。姐さん方についていけるよう気張りますので、皆さん応援お頼もうします。

槇里子●うちらの舞の流派、京舞井上流は、お能を取り入れているので、台詞や表情がないぶん、ゆったりした手足の運びがほんまにきれいなんどす。

他の流派は全国各地で習えるのも多いけど、祇園でしか習えへん、観られへんような、めずらしい舞なので、ぜひ観に来ておくれやす。

美羽子さん

槇里子さん(右) 
まりこ●宮崎県出身。2002年1月10日生まれの17歳。2018年5月16日にお見世出し(舞妓デビュー)。

美羽子さん(左)
みわこ●埼玉県出身。2002年1月3日生まれの17歳。2018年5月28日にお見世出し(舞妓デビュー)。

槇里子さん

槇里子さん 
まりこ●宮崎県出身。2002年1月10日生まれの17歳。2018年5月16日にお見世出し(舞妓デビュー)。

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現在、京都には祇園甲部、宮川町、先斗町、上七軒、祇園東の5つの花街があり、総称して五花街 ( ごかがい ) と呼ばれています。その中でも祇園甲部は最大の花街であり、すなわち都をどりは代表的な催し。春の京都観光で絶対外せないイベントなのです。

混雑なしで、舞妓と花見がたっぷり楽しめるという意味では「裏ワザ」であり、なにより春の催事の定番である都をどり。ご家族や友人との旅行や、恋人とのデートに、喜ばれることまちがいなしです!

◎合せて読みたい→朝ドラ「まんぷく」“缶詰の人” 藤山扇治郎に聞く、新南座の魅力!

(写真 入交佐妃/南座写真提供 松竹株式会社)

南座新開場記念 都をどり
【期間】4 月 1 日(月)~ 27 日(土)
【開演時間】12:30 ~、14:30 ~、16:30 ~
 1 日 3 回 各公演約 60 分
【会場】南座
【料金】一等観覧券 5,500 円 二等観覧券 4,000 円
(いずれも税込、指定席)

※今年はお茶席はありません。
※売り切れでない場合に限り、当日券もあり。要問合せ。
【お問合せ・予約受付】電話 075-541-3391
【HP】 http://www.miyako-odori.jp/

南座
【住所】京都市東山区四条大橋東詰
【電話】075-561-1155
【松竹HP】 http://www.shochiku.co.jp

【アクセス】◯ 京阪電鉄 祇園四条駅[6 番出口]スグ
◯ 阪急電鉄 河原町駅[1 番出口]徒歩 3 分
◯ JR 京都駅からは車(タクシー)が便利

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取材・文=玉井雄大
たまいゆうた●月刊『茶の間」編集部員。滋賀県出身。自然や映画、銭湯、禅、詩、酒など“本質を語れるものごと”好き。茶道もその一環ですが、第一子誕生によりお休み中。今は流派にとらわれず、お家でセルフ抹茶を楽しみます。