令和の葵祭が10倍楽しめる!写真と絵巻で今と昔を徹底比較!

令和が始まりましたね。5月の京都といえば、日本三大祭の一つに数えられる葵祭。有名なお祭りですが、意外と知らないことが多いのでは? 日本最古の勅祭ちょくさいで、現代の日本の祭のルーツともいえる葵祭の姿を、中世の絵巻とともにひもときます。

斎王代

そもそも葵祭ってなんのお祭り?

そもそも葵祭って
なんのお祭り?

葵祭、正式名称は「賀茂祭かもさい」。

下鴨神社(正式名称・賀茂御祖神社)と上賀茂神社(正式名称・賀茂別雷神社)で5月15日に行なわれる例祭です。

賀茂祭が始まったのは、なんと6世紀頃。賀茂の神の祟りで飢餓疫病が蔓延したことを機に行なうようになったとされています。『続日本紀』には、祭の混乱を防止するためか、群衆が集まることを禁止することが記載されており、7世紀末には相当の規模に発展していたことがわかります。

5月15日には、平安絵巻さながらの行列が京都市内を練り歩きます。その前後には、関連するイベントも盛りだくさん! 最後に、令和元年の葵祭のスケジュールと巡行マップもあるので、京都観光の参考にしてみてください。

【新旧比べてみました1】
葵祭の二両の牛車。違いは簾の下にあり!

【新旧比べてみました1】
葵祭の二両の牛車。
違いは簾の下にあり!

葵祭の御所車

5月15日、葵祭の行列の中で、ひときわ目を引く乗り物が「御所車ごしょぐるま」と呼ばれる牛車ぎっしゃです。薄紫色の藤の花の装飾を揺らしながら、車輪を回してゆっくり進みます。牛車は2基あり、牛車の前のすだれの下を比べると、勅使に従う方には何もありませんが、斎王代さいおうだいに従う牛車にはカーテンのようなものがはみ出しています。これを下簾したすだれといい、女性が車に乗る場合は出衣いだしぎぬといって、袖や裾先を前に垂らしたことから来ています。

【新旧比べてみました2】
祭の主役、実は斎王代ではなく「勅使」だった!

【新旧比べてみました2】
祭の主役、実は斎王代ではなく
「勅使」だった!

葵祭の勅使

平安時代、祭に奉仕した「斎王さいおう」の代わりとなる「斎王代」。その華やかさは毎年話題となりますが、葵祭においてより重要なのは「勅使」です。これはかつて、葵祭が国の最高位の祭であったことの名残。斎王が絶えても葵祭が滅びなかったのは、この勅使がいたからです。行列中最高位の人であり、天皇の御使おつかいで、現在は宮内庁の掌典しょうてんがつとめています。ただし現在、勅使は行列には参加せず、近衛使代このえつかいだいがその役割を担っています。

【新旧比べてみました3】
斎王代がいるのは戦後から。それまでは「女人列」だけでした。

【新旧比べてみました3】
斎王代がいるのは戦後から。
それまでは「女人列」だけでした。

葵祭と斎王代

女性皇族から選ばれて神に奉仕する斎王がいた頃、斎王は紫野斎院むらさきのさいいんから出発し、途中で勅使一行と合流して下鴨神社に向かっていました。斎院が廃止された後、斎王の行列はなくなりますが、典侍てんじといった高級女官たちが勅使に任じられ、行列に続いていました。女人列は戦国時代に廃絶しますが、戦後に斎王代による女人列が再興されました。現在、斎王代は腰輿およよに乗り、そのあでやかな姿を見ることができます。

【新旧比べてみました4】
風流傘は、祭の山車(だし)のはじまりです。

【新旧比べてみました4】
風流傘は、祭の山車だし
はじまりです。

葵祭と風流傘

大きな傘に紺布を張り、これに錦の帽額総もこうふさなどを掛け渡し、上にさまざまな造花をのせた風流傘ふりゅうがさ。これは、祭りの山車だしの原型となったもので、祇園祭でも傘鉾かさほこにその古い姿をとどめています。風流傘には、造花だけでなく、かつてはジオラマのような飾り物もつけられていて、「◯◯丸」「◯◯山」など名前がつけられ、年ごとに違った趣向が凝らされていたようです。今も昔も、祭を彩る大事な役目を担っています。

【新旧比べてみました5】
「競馬(くらべうま)」のルーツは、5月5日の「賀茂競馬」にあり!

【新旧比べてみました5】
競馬くらべうま」のルーツは、
5月5日の「賀茂競馬」にあり!

葵祭と競馬

装束をまとった騎手が二騎ずつ駆け抜ける賀茂競馬かもくらべうま。葵祭で馬にまつわる神事が行なわれるのは、草創期からで、もともと農耕祭祀として始まったことが理由とされています。その後、端午の節句に行なわれていた宮中の競馬の儀が賀茂祭に移され、賀茂競馬がはじまります。古くから日本人にとって大事な存在だった「馬」。このような神事から発展して、現在の葵祭の姿があります。

教えてくれたのは

教えてくれたのは・・・

京都国立博物館 学芸部 保存修理指導室長
大原嘉豊さん

京都国立博物館 学芸部
保存修理指導室長
大原嘉豊さん

学芸員の大原嘉豊さん

令和元年の葵祭にいこう!

令和元年の葵祭にいこう!

今年も、葵祭に染まる1ヵ月が始まります。
15日の巡行はもちろんのこと、その前後でも、見どころたっぷりの行事を楽しめますよ。

葵祭日程
葵祭日程
葵祭巡行
葵祭巡行コース
地図
葵祭巡行コース
インフォ

かもわけいかづち神社(上賀茂神社)

【住所】京都市北区上賀茂本山339
【電話】075-781-0011
【アクセス】バス/京都駅より市バス〈9〉「西賀茂車庫行き」にて「上賀茂御園橋」下車徒歩3分、または〈4〉「上賀茂神社行き」終点下車すぐ、地下鉄北大路駅より市バス〈北3〉「京都産大行き」にて「御園口町」下車徒歩1分
タクシー/京都駅より約40分、地下鉄北大路駅より約5分
【HP】https://www.kamigamojinja.jp
●上賀茂神社・路頭の儀拝観
5月15日 15:30〜18:30頃
拝観料/芝生拝観席1,000円(パンフレット付)
※当日、正午より現地にて申し込み開始。

インフォ

かも神社(下鴨神社)

【住所】京都市左京区下鴨泉川町59
【電話】075-781-0010
【アクセス】バス/地下鉄北大路駅より市バス〈1〉〈205〉、京都駅・阪急河原町駅より市バス〈4〉〈205〉各「下鴨神社前」下車すぐ。
電車/京阪電鉄・叡山電鉄「出町柳」駅下車徒歩10分
【HP】http://www.shimogamo-jinja.or.jp
●京都御所、下鴨神社・路頭の儀拝観
5月15日 京都御所10:30頃 下鴨神社参道11:40頃
拝観料/一般席2,700円、葵祭まなび席5,000円、葵祭ロイヤルシート7,000円 ※4月1日〜webやコンビニ等で販売。
詳しくは京都市観光協会(電話・075-213-1717/
HP・https://ja.kyoto.travel/event/major/aoi/seat.php)までお問合せください。

おわりに・・・

おわりに

葵祭の昔と今、いかがだったでしょうか?

時代を経て変わった部分もありますが、1000年以上も変わらずに受け継がれていることに、ただただ驚くばかりです。

葵祭を見に行く前に、見た後に、そして葵祭に行けない人でも、知っておくとより楽しめるはず。

令和の始まりに、日本の祭りのルーツを知って、ぜひ、京都を訪れてみてください。

 

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(写真・山中茂)

取材・文=大村沙耶
おおむらさや●月刊『茶の間」編集部員。福岡県北九州市出身。学生時代は剣道に打ち込み、京都に住み始めてから茶道と着付けを習い始める。ミーハーだけど、伝統文化と自然を愛する超ポジティブ人間。