人混みや炎天下が辛い…穴場ルートで 疲れない京都・祇園祭の楽しみ方

祇園祭の京都では1ヵ月間、様々な行事が行なわれます。「宵山は人が多すぎてゆっくり鑑賞できない」「炎天下で山鉾巡行を見るのが辛い」「宵山と巡行、この2日に行かないと楽しめないの?」といった声も。地元編集部が疲れずに祇園祭を楽しむ方法をご紹介!

巡行

意外と知らない、祇園祭の基本

豪華で雅な日本三大祭の一つ・祇園祭。今年で創始1150年にもなる八坂神社の祭礼です。

古くは「祇園御霊会(ぎおんごりょうえ)」と呼ばれていました。貞観11年(869)、京の都や日本各地に疫病が流行した際、神泉苑(しんせんえん)に当時の国の数(66)にちなんで66本の矛(ほこ)を建て、洛中の男児が祇園社の神輿を神泉苑に送り、厄災の除去を祈ったことが祇園祭のはじまりとされています。

平安時代の中頃から、田楽(でんがく)や猿楽等も加わって規模が大きくなり、室町時代には町々の特色ある山鉾があったと伝わります。

応仁の乱(1467)で都は焼け、祇園祭も中絶しますが、明応9年(1500)に復活。以後、町衆の努力により山鉾の装飾も豪華になっていきます。

たびたびの火災で多数の山鉾が消失しますが、その都度、町衆の心意気によって再興し、今日に至るのです。

7月の京都は毎日のように
イベントが目白押し!

祇園祭では、7月1日の「吉符入(きっぷいり)」にはじまり、祭のハイライトとなる山鉾巡行と神輿渡御(みこしとぎょ)、31日の「疫神社夏越祭(えきじんじゃなごしさい)」で幕を閉じるまで、1ヵ月にわたって毎日のようにさまざまな神事・行事がくり広げられます。

祇園カレンダー
※掲載情報は都合により、予定・内容が変更される場合があります。お出かけの際は事前にご確認ください。
お迎え提灯、花傘巡行

前祭と後祭ってどう違うの??

前祭(さきまつり)では、八坂神社の氏子(うじこ)である町衆が、八坂の神様をお迎えするさまざまな行事を行ないます。山鉾の数も多く、前祭の宵山(前夜祭)では、四条通・烏丸通一帯が歩行者天国となり、屋台が出店するなど、賑やかな夏祭のムードを楽しめます。

一方、後祭(あとまつり)は、八坂神社の神様を見送るとともに悪霊を追い払う行事で、しっとりとした昔ながらの祭の雰囲気を味わうことができます。

ここからは、編集部が独自に入手した穴場ルートをご紹介。

1000年以上続く伝統の祭を、暑い時期ゆえに、自分のペースで楽しんでみませんか?

【前祭・宵山1】
四条通は歩くべからず?!

前祭の山鉾巡行の前日、前々日は、四条通と烏丸通が歩行者天国になり、屋台が出て、大変多くの人で賑わいます。

混雑や一方通行を回避しつつ、効率よく宵山を巡るなら、地下鉄四条駅の南改札(烏丸仏光寺側)から出てスタートしましょう。まずは、縁結びのご利益がある保昌山(ほうしょうやま)へ行き、その後、岩戸山(いわとやま)、木賊山(とくさやま)、太子山(たいしやま)、油天神山(あぶらてんじんやま)、そして四条通に抜けるというルートがおすすめです。

各山鉾町にある旧家や老舗が、所蔵する美術品・調度品などを公開する「屏風祭」を楽しんだり、巡行前の山鉾に搭乗したり、限定グルメを味わったり、御朱印集めをしたりなど、宵山ならではの楽しみをじっくりと堪能してみては?

宵山マップ

【前祭・宵山2】
限定グルメも見逃せない!

しみだれ豚饅と水あずき

祇園祭の時期だけ食べられる「しみだれ豚饅」やひんやり「水あずき」など限定グルメも忘れずに。

こちらも、大通りではなく、小さな通りの屋台が狙い目です!

【前祭&後祭・宵山】ちまきや手ぬぐい、御朱印を手に入れよう!

ちまき、手ぬぐい、御朱印

各町会所では、手拭いや扇子など町内ごとにデザインされたさまざまな授与品を購入できます。

京都の家庭で、一年間の疫病・災難除けとして玄関先に飾る粽(ちまき)は、一つは手に入れたいもの。人気の町内のちまきは早めに売り切れる可能性があるので、午前中にゲットするのがおすすめです。

記念の御朱印集めも楽しいので、ぜひ!

【前祭・宵山3】国宝の金屏風などを間近で鑑賞できる!

俵屋
タケノコの仮装

京都の奥深さに触れる文化体験プログラム『京あそび』主催の屏風祭り展も必見です。

DNP(大日本印刷)独自の高精細複製「伝匠美®」で製作した江戸初期の国宝の絢爛豪華な金屏風などを、涼みながら間近に鑑賞できます。

屏風絵の中には、タケノコの仮装をする人がいたり、こっそり逢引する人がいたり、細部までじっくり見てみると、おもしろい発見があるはず。

専門家による解説付きで特別鑑賞会も開催しているので、詳細は「京あそび」で検索してみてください。

伝匠美®屏風祭り展2019
【日時】2019年7月14日(日)・15日(月・祝)10:00〜21:00(受付は20:30まで)
【場所】くろちく百千足館(ももちたるかん)2階
(京都市中京区新町通錦小路上ル百足屋町380)
【入場料】一般500円/中学生以下300円
※未就学児は無料
【HP】https://kyo-asobi.kyoto/byobumatsuriten2019/

【展示物】※高精細複製「伝匠美®」による作品です。
【今回新たに公開】国宝「源氏物語関屋澪標図屏風」/俵屋宗達(静嘉堂文庫美術館)
国宝「洛中洛外図屏風 舟木本」/岩佐又兵衛(東京国立博物館)
重要文化財「洛中洛外図屏風 池田本」(林原美術館)
重要文化財「豊国祭礼図屏風」/狩野内膳(豊国神社)

【前祭・山鉾巡行】
早起きは三文の徳?

山鉾は本来、災厄をもたらす疫神を鎮めるため、りとして山や鉾をつくり町中を回ったとも、神輿の渡御に先立って、都大路を祓い清めたともされています。

期間中、一番人が集まり、祭の熱気も最高潮となる山鉾巡行。

有料観覧席は日除けがなく、人通りも多いため日傘は禁止。日差しから守ってくれるのは帽子だけなので辛い……。そこで地元編集部がおすすめするのは、早朝の山鉾巡りです。

巡行の日の朝6時から8時台まで、四条通の交通規制が始まる前に山鉾を見てしまいましょう。比較的地味な宵山での飾りとは違い、懸装品をまとい、ご神体人形が乗った最高に美しい状態の山鉾の姿を目の前で見ることができます。巡行の出発で、町内から山鉾を見送る場面は感動的。

前祭 巡行マップ

朝9時、巡行がスタートすると、四条烏丸〜四条河原町〜河原町御池〜新町御池と山や鉾がくじ取りで決められた順番に進んでいきます。山にはご神体人形の顔が見える表と見えにくい裏とがあり、前祭の場合は経路の内側が表となります。そのため、前祭の巡行を見るには、四条通の北側、河原町通の西側、御池通の南側がおすすめです。

大迫力の辻廻しは、四条河原町が一番人気ですが、徹夜組も出るほど激混みになるので、おすすめは新町通です。新町御池の交差点は、比較的人が少なく、地元の人も見にくる穴場スポット。曲がった後の新町通でも、巡行を終えて各町内へ戻る山鉾を間近で見ることができます。四条新町では、非公式の辻廻しが行なわれることも。

山鉾

大通りは人が多く、遠巻きに眺めるしかないが、新町通なら通り自体が狭いため、人が増えても山鉾との距離が近いのでおすすめ。大きな山鉾が目の前を通っていく、大迫力の巡行を楽しむことができる。

まだある祇園祭の見所!
神輿にも注目!

八坂神社

八坂神社の御祭神は、素戔嗚尊(すさのをのみこと)、櫛稲田姫命(くしいなだひめのみこと)、八柱御子神(やはしらのみこがみ)。この三柱の御神霊それぞれを中御座(なかござ)、東御座(ひがしござ)、西御座(にしござ)と呼ばれる三基の神輿に遷(うつ)し、前祭の17日夕刻より神輿が渡御します。神輿は馬に乗った久世稚児(くぜちご)に先導され、まず八坂神社石段下に集合して神輿差し上げ。大勢の担ぎ手に囲まれた壮観なシーンは必見です。

神輿はその後、3方向に分かれて氏子圏内を回りますが、いずれも最後は、四条御旅所(おたびしょ)に夜9時過ぎに到着。久世稚児は中御座の神輿を大和大路通〜市役所前〜寺町通〜河原町通と先導します。

神輿は24日の後祭の山鉾巡行が終わるまでの1週間、御祭神とともに四条御旅所にあります。この期間は御旅所へ行って、金色に輝く3基の神輿を間近で拝見、お参りできる、またとない機会となります。

神輿巡行と 久世稚児

【後祭・宵山&巡行】
じっくり味わう後の祭

後祭は山鉾町のエリアが限られているので、宵山でも会所や屏風祭をじっくり回って楽しめます。「護摩焚き」や「あばれ観音」のような躍動的な行事も見どころ。

巡行の朝は、10基の山鉾のうち4基が並ぶ新町通に行くと、出発前の山鉾が御池通を目指して進んでいくので、臨場感たっぷり。

また、「休山(やすみやま)」(焼失などで休止中の山)の復興も要注目です。5年前に復興した大船鉾に続くのが鷹山(たかやま)。3年後の復活を目指し今年は唐櫃巡行(からびつじゅんこう)で後祭に参加します。

後祭・巡行マップ
護摩焚き
あばれ観音

おわりに・・・

絢爛豪華で歴史があり、京都を象徴する祭と言っても過言ではない祇園祭。

一年で一番京都の町に人が集まる時期ですので、できるだけ、疲れずに祭を楽しみたいですよね。

地元編集部だからこそ知っている情報を特別にご紹介しました。

この記事を参考に、ぜひ今年の祇園祭をお楽しみください。

熱中症にはくれぐれもご注意を!

 

(文・中岡ひろみ、大村沙耶/写真・吉村晋弥、小谷紗祈/イラスト&マップ・里井夏野)

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企画・構成=大村沙耶
おおむらさや●月刊『茶の間」編集部員。福岡県北九州市出身。学生時代は剣道に打ち込み、京都に住み始めてから茶道と着付けを習い始める。ミーハーだけど、伝統文化と自然を愛する超ポジティブ人間。