天橋立、伊根の舟屋、保津川…。涼を感じる京都・水辺の絶景4選

京都といえば古都の風情あふれる街並みを思い浮かべる方が多いかもしれません。しかし、市街から足を延ばせば、涼を感じる美しい風景が数多くあります。神話の時代にできた天橋立、夏目漱石が涼んだ保津川など、古今、多くの人を癒やしてきた、おすすめの絶景4選をご紹介します。

01. 天橋立 あまのはしだて

01. 天橋立 あまのはしだて

雪舟が、与謝野晶子が、 美しさに心打たれた白い砂浜と青松

雪舟が、与謝野晶子が、 美しさに心打たれた白い砂浜と青松

(写真/山中茂)
(写真/山中茂)

日本三景の一つ、天橋立。伊射奈芸命(いざなぎのみこと)が天界と下界を結ぶためにつくった梯子(はしご)が海上に倒れ、陸地となったのが、天橋立だという神話が残されています。その美しさは「白砂青松(はくしゃせいしょう)」と称され、多くの人々に愛されてきました。数多の芸術家たちにインスピレーションを与え、室町時代の画家・雪舟が『天橋立図』を描き、明治時代の歌人・与謝野寛、晶子が短歌に詠むなど、多くの作品が生まれています。今なお美しい天橋立は、人々の感性を刺激します。

02. 伊根の舟屋 いねのふなや

02. 伊根の舟屋 いねのふなや

エメラルドグリーンの海に浮かぶ、 漁師たちの知恵

エメラルドグリーンの海に浮かぶ、 漁師たちの知恵

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海上に浮かぶようにぐるりと湾を囲む伊根の舟屋は、京都府北部に位置する漁師町にあります。その歴史は古く、古墳時代にはすでに集落があったとされ、江戸時代には現在に近い集落の形を有していたとか。「日本で最も美しい村」の一つです。

舟屋は、海辺に面する一階部分が「舟のガレージ」のような船着場と格納場所、2階が二次的な居室として活用されている独創的な建物です。海に暮らす人々が、生活の中で編み出した機能美を兼ね備えた風景です。

03. 保津川 ほづがわ

03. 保津川 ほづがわ

約400年続く峻険(しゅんけん)の谷を流れる ダイナミックな舟旅を

約400年続く峻険(しゅんけん)の谷を流れる ダイナミックな舟旅を

(写真/山中茂)
(写真/山中茂)

京都・北西の亀岡市から嵐山までを繋ぐ保津川。その約16キロメートルの舟旅を「保津川下り」といいます。かつて江戸時代初期の豪商が丹波地方の木材や薪炭を、下流の京都や大阪の街に運ぶための水運として拓(ひら)いたのが始まりです。その後、鉄道や自動車の発展により産業水路としての役割はなくなりましたが、四季折々の渓谷美と激しい水しぶきのスリルを楽しむ観光航路として人気を博しています。

日本を代表する明治時代の文豪・夏目漱石も保津川下りを体験しており、荒れ狂う波とそれを巧みに操り進む船頭の様子を小説に克明に表現しています。そびえ立つ山の合間を縫うように進む、自然と一体となれる舟旅です。

04. 金引の滝 かなびきのたき

04. 金引の滝 かなびきのたき

1000年前の修行者が感じた神秘。 自然の力が満ちる聖地へ

1000年前の修行者が感じた神秘。 自然の力が満ちる聖地へ

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約40メートル上から水が岩肌をすべるように流れ落ちる圧巻の風景。「日本の滝百選」にも選ばれた、京都府宮津市の金引山の山中にある金引の滝です。はるか千年の昔、金引山は如願寺塔頭威性院により、金引山不動明王尊がされるなど、聖地として崇められてきました。うっそうと茂る豊かな木々に囲まれ、むき出しとなった岩を滝がすべり落ちる神秘的な光景は、引き込まれるような美しさ。力強い自然のエネルギーを感じます。

古都の雅な文化のみならず、京都には美しい自然が多く残されています。

写真を眺めているだけで、涼しさを感じる見事な絶景。爽やかな水音が聞こえてくるようです。

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取材・文=羽切友希
はぎりゆき●月刊『茶の間』編集部員。ちびまる子ちゃんが好きな静岡県出身。小さい頃は茶畑の近くで育ち、茶畑を駆け抜けたのはよき思い出。お茶はやっぱり渋めが好き。