着物の手入れやお直し、コーディネート。あなたの不安をプロが解消!

「着物はお手入れのハードルが高い」「親から譲り受けた着物がたんすの肥やしになっている」。そんな方のために、普段の着物のお手入れの仕方やお直し法、リサイクル着物を活用したコーディネートをご紹介。今年こそ、素敵な着物ライフを楽しみましょう!

坂田菜緒さん

【教えてくれる人】
パーソナル着付け講師・坂田菜緒さん

パーソナルカラーリストととしても活躍する着付講師。大阪・東京・京都で、アンティークきもの店や呉服屋、旅行業など、さまざまな仕事に従事。これまでの経験を活かして、個人向けの着付け教室を主宰している。からだが整い、リラックスできる「きれいで心地よい」着付けを教える。年齢を重ねても輝き続ける人を応援している。

【HP】https://www.instagram.com/suzuna_an/

坂田菜緒さん
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A1.クリーニングはシーズン終わりに1度出すだけでOK!

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明らかに汚した場合は、すぐにクリーニングに出した方がよいのですが、そうでない場合は、脱いだ後にハンガーに干しておくだけでよいと思います。2〜3時間ほど干しておけば汗が飛ぶので、あとはたたんでしまいましょう。長時間干すと、きものの裾がたわんでくるのでご注意を。1〜2度着ただけで汚れていない場合はクリーニングに出す必要はありません。たくさん着た場合は、シーズン終わりにクリーニングに出しましょう。丸洗いかシミ抜きかでも料金が変わってくるので、きものの汚れ具合をチェックしておきましょう。

Q2

A2.木綿のきものや麻の襦袢(じゅばん)なら洗えます

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最近は、ポリエステルなどの化学繊維を使った洗えるきものも増えてきていますが、私は、木綿のきものや麻の襦袢をおすすめしています。絹などの「やわらかもの」に対して、木綿や紬(つむぎ)は「かたもの」と呼ばれ、洋服でいうとデニムのようなカジュアルさがあるので、普段着のきものとして重宝します。汗でしっとりとなりやすい襦袢も、絹だと自宅で洗えませんが、普段使いは麻の襦袢にすると、家でも手軽に洗うことができるんです。

Q3

A3.たとう紙を広げるだけでもOKです

きもののカビ・変色・色褪せを防ぐために行なう「虫干し」。きものを全部ハンガーにかけて、風通しのよい場所に干して……と大変なイメージがありますが、わざわざ干さなくても、きものが入っているたとう紙を広げて、中の空気を入れ替えてあげるだけでもいいんです。半年に一度を目安に行なってください。さらに時間のない方は、たんすの引き出しをあけるだけでもよいでしょう。

Q4

A4.きものを着るときは、あわてず、ゆったり余裕をもって

私はきものを着るときは「汚れる前に汚さない」ことが一番大切だと思っています。普段バタバタと動いてしまう人も、きものを着たときは、あわてず、ゆったり余裕を持って行動しましょう。ものを取るときに袖を抑える、半身になって階段を登り降りするなど「きもの所作」は、上品で美しいです。汚さなければ、お手入れの手間やクリーニング代もかからないので、あとが楽ですよ。

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A5.別の色に染める、という方法もあります

例えば、お母様から譲り受けたピンクの色無地があったとしましょう。自分で着るには色が華やかすぎるけれど、お母様の思い出が残っているから、捨てるに捨てられない……。そんなときには、思い切って染め替えてみましょう。下のイラストのように、全体を濃い茶色に染めると、ぐっと落ち着いた雰囲気に。絞りの技法を使えば、元のピンクの生地を柄として活かすことができます。お母様の思い出も残しつつ、素敵に生まれ変わったきもので、お出かけしてみませんか?

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A6.思い切って洋風に着るのも一案です

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特に、昭和初期の頃のきものは、反物の幅がせまいため、サイズのお直しができない場合があります。そんなときは、思い切って洋風に着てみるのはいかがでしょう? 黒のタートルやブーツを合せると、袖や丈の短さが気にならなくなりますし、長襦袢いらずで、締めやすい半幅帯を合せれば、きもの初心者の方でも挑戦しやすいはず。自由に楽しんでみてください。

Q7

A7.若い頃のハレのきものは人にゆずる選択も考えましょう

若い頃に仕立てた付け下げや訪問着などのハレの日のきものは、やはり用途や着る年齢が限定されます。染め替えやお直しをするのにもお金がかかるので、着られる方に譲ってしまった方がよい場合もあります。ハレのきもののお直しにお金をかけるよりは、今の自分が着たい、日常のきものを買ってみてはいかがでしょう?

Q8

A8.グレーや茶系に染めると落ち着いた印象になりますよ

若い頃に着ていた、派手派手しい色や柄の小紋。誰もが一枚はお持ちなのではないでしょうか? 派手な色や柄のきものは、グレーや茶系の色でうっすら染めると、落ち着いた雰囲気になって、大人でも着ることができます。きものはその物語も含めて着るものだと思うので、さまざまな方法で長く楽しんでくださいね。

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A9.リサイクルきものを上手に活用しましょう!

きもの文化が盛んな京都には素敵なリサイクルきもの店もたくさんあるので、ぜひ訪れてみてください。今回は、「着物だいやす」さんで、さまざまなシチュエーションに合せて、きもののコーディネートを選んでみました。サイズさえ合えば、上質なきものを安価で購入できるのがリサイクルきものの魅力。リラックスしてきもののおしゃれを楽しんでくださいね。

【コーディネートA】
気のおけない友人とのランチ
話題になりそうな幾何学模様の帯と大島紬のきものを合せて、モダンでシックに。

着物A

カフェでお茶をしたり、ランチをしたり、ゆったり過ごすときには、カジュアルな紬がおすすめ。変わった柄を取り入れると「何の柄?」と話題にもなるはず。

大島紬(緑)45,000円(リサイクル)、つづれ帯24,000円(リサイクル)、帯揚げ(淡国防色)5,500円、帯締め(青グラデーション)6,500円

【コーディネートB】
お茶のお稽古には、かわいい飛び柄小紋のきものに、西陣織の帯できりっと。
甘さと辛さを織り交ぜたスタイルに。

着物B

年齢を重ねた人こそ似合う茶色の小紋。総柄よりも柄が飛び飛びに入っている方が格が上がる。甘さのある小紋だが、濃い色の帯でパキっと引き締めて、真面目な印象に。

飛び柄小紋(茶)37,000円(リサイクル)、名古屋帯(黒)8,000円(リサイクル)、帯揚げ(うす黄)7,500円、帯締め(茶)3,900円

【コーディネートC】
美術館やコンサートなど観劇には、ベーシックな江戸小紋に、
川島織物の格調高い帯で、知性を感じさせる装いを

着物C

「一枚持っていれば万能」と言われる江戸小紋は、シンプルベーシックの代表格。京都の老舗・川島織物の美しい帯の柄が活きるように、全体をワントーンでまとめて。

江戸小紋(角通し)64,000円(プレタ)、名古屋帯(唐織)36,000円(リサイクル)、帯揚げ(うす小豆)8,000円、帯締め(白・金銀)7,500円

【コーディネートD】
旅先できものを楽しむときに。明るい黄色の紬に、
オウム柄の西陣織の帯を合せて、とことん遊びを取り入れて。

着物D

丈夫な紬は、旅先に持って行くのにぴったり。いつもは着ない明るい黄色も、旅先なら心おきなく着れるかも。動物柄の帯を合せて、旅のワクワク感を装いでも演出。

紬(黄色)12,000円(リサイクル)、名古屋帯(オウム)32,000円、帯揚げ(紫)5,500円、帯締め(赤茶)4,500円 

着物 だいやす

【住所】京都市下京区四条通西洞院西入傘鉾町41
【電話】075-213-1113
【営業時間】10:30〜18:30
【定休日】なし
【HP】http://www.kimono-daiyasu.com
※商品に関するお問い合せは同店へ。リサイクル品はすべて1点ものになります。
※価格はすべて税抜。

だいやす

終わりに・・・

「着物を着ると、体の軸が定まって、本当は気持ちがいいものなんです。私はたくさんの方に、着物は大変、ではなく、着物は楽しい、と思ってもらえるようになって欲しいです」と、坂田さんは話します。

洋風アレンジやリサイクルの活用など、今だからこそできる、様々な方法にトライして、自分なりの着物ライフを楽しんでみてください!

(写真・福尾行洋)

取材・文=大村沙耶
おおむらさや●月刊『茶の間」編集部員。福岡県北九州市出身。学生時代は剣道に打ち込み、京都に住み始めてから茶道と着付けを習い始める。ミーハーだけど、伝統文化と自然を愛する超ポジティブ人間。