今さら聞けない、お正月飾りのこと。飾る意味や場所、期限って?

お正月飾りといえば、注連縄(しめなわ)や鏡餅、門松、干支人形。そもそもなんで飾るのかご存知ですか? 日本人ならぜひとも知っておきたい、その意味や素朴な疑問を、京都の儀式作法研究家の岩上力先生にお聞きしました。

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教えてくれたのは
岩上 力先生

1947年、京都府宇治市生まれ。儀式作法研究家。劇団「新国劇」に在団中から礼法の研究に努め、儀式作法研究会を設立。カルチャーセンターなどで儀式作法教室の講師を務める。京の作法アドバイザー、結納コーディネーターとして、テレビ・ラジオに多数出演。

年の初めの縁起物は「神様をお迎えする」ためのもの

2020年はウイルスの流行で気軽に外出することがかなわず、ままならぬことの多い1年でした。来年こそは心機一転、素晴らしい新年を迎えたい! そんな願いを込めて新しい年のお正月の準備を始めましょう。

お正月は、年の始めを祝う大切なときです。1年の家内安全と無病息災を祈願し、「歳神様(としがみさま)」という神様をお迎えするのです。歳神様は、お正月様、歳徳神(としとくじん)とも呼ばれ、その年の福徳をつかさどっています。お正月飾りを用意し、おせち料理をこしらえるのは、神様をお迎えするための準備です。神様をおもてなしする祈りの心が、1年の幸せを呼び寄せてくれるのです。

門松(京都では「根引松」)は、神様にご降臨(来訪)いただくための目印です。注連縄(お玉や輪飾り)は、その場を清浄にすることで神様の居場所をつくり、一文字や大根締めなどの注連飾りは、邪悪なものが入らないために吊るすものです。

地に足がつき成長し続けるように、という願いを込めた「根引松」は、京都伝統の正月飾り。
地に足がつき成長し続けるように、という願いを込めた「根引松」は、京都伝統の正月飾り。

鏡餅(京都では「お鏡さん」)は、神様の依代(よりしろ)であるとともにご降臨いただいた神様へのお供え物で「おもてなしの心」の1つです。家内安全、夫婦和合、子孫繁栄などの願いが込められています。新しい年を無事に迎えるために、伝統の正月飾りを設え、縁起物を飾って、心を込めて神様をおもてなししましょう。

例えば、2021年の干支・丑の置物は疫病退散の縁起物!

干支の置物は、その年の家内安全を祈る縁起物です。来るべき1年、2021年の干支・丑(牛)は、農耕民族の日本人にとって特に大切な動物。また、「草(そう)(=瘡(そう)…できものや病のこと)を食(は)む」ことから、疫病退散、病気平癒、無病息災のお守りとされています。

牛は地に足をつけて粘り強いことから、運が開ける商売繁盛の縁起物と考えられてきました。ご存じのとおり、学問の神・菅原道真を祭神とする京都の北野天満宮には多くの牛の像があります。神様の使いであり、人の健康と願い事を叶えてくれると考えられてきた牛。そのお飾りは、まさにこのお正月に飾るにふさわしい疫病退散の縁起物といえるでしょう。

無病息災と大願成就の願いがこめられた丑の置物は、まさに2021年のスタートにふさわしい縁起物。しっかりと立ち、愛らしい表情で1年を守ります。
無病息災と大願成就の願いがこめられた丑の置物は、まさに2021年のスタートにふさわしい縁起物。しっかりと立ち、愛らしい表情で1年を守ります。
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【Q1.去年の干支の置物を飾ってもよい?】

A.

前年の干支の置物は、1年の守り役を果たしたところなので、感謝の心を込めて片付けましょう。新年の歳神様をお迎えするためには、新しい年の干支の置物を用意するのが望ましいとされています。

A.前年の干支の置物は、1年の守り役を果たしたところなので、感謝の心を込めて片付けましょう。新年の歳神様をお迎えするためには、新しい年の干支の置物を用意するのが望ましいとされています。

【Q2.お飾りする場所はどこがベスト?】

A.

床の間がよいでしょう。ただ、昨今の住宅事情から、床の間のないご家庭もあると思います。お飾りする場所は、床の間に限らず家の中の清浄(清潔)なところであればよいのです。例えば玄関(靴箱の上など)でもOKです。

A.床の間がよいでしょう。ただ、昨今の住宅事情から、床の間のないご家庭もあると思います。お飾りする場所は、床の間に限らず家の中の清浄(清潔)なところであればよいのです。例えば玄関(靴箱の上など)でもOKです。

【Q3.お正月が終わったら縁起物は捨てていいの?】

A.

門松や注連縄飾りは、松の内が明けたら処分。地域の習わしに合せましょう。神社や寺院で授けていただく一般的なお札やお守り同様、昔は学校や町内会などで焚き上げましたが、昨今は感謝の心を込めてゴミとして出してもかまいません。干支の置物は、その1年の間、家を守ってくれるもの。お札やお守りのように1年飾っておくことができます。

A.門松や注連縄飾りは、松の内が明けたら処分。地域の習わしに合せましょう。神社や寺院で授けていただく一般的なお札やお守り同様、昔は学校や町内会などで焚き上げましたが、昨今は感謝の心を込めてゴミとして出してもかまいません。干支の置物は、その1年の間、家を守ってくれるもの。お札やお守りのように1年飾っておくことができます。

終わりに…

お正月飾りといっても伝統的なものから、現代の生活スタイルに合わせた新しいデザインのものまで、さまざまにあります。今年は自分らしいお正月飾りを飾って、来たる1年の厄を払い、招福を願ってみませんか。

(文・黒岩美和)

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企画・構成=米村めぐみ
よねむらめぐみ●月刊『茶の間」編集部員。出社したらまずはお茶!仕事中はお茶ばかり飲んでいるといっても過言ではないほど、日本茶が好き。作家ものの湯呑など、うつわあつめが趣味。おいしい茶菓子にも目がありません。