数の子は子孫繁栄?お重の意味とは? 縁起だらけのおせちの由来

お正月の祝いの席に欠かせないものといえば、おせちです。黒豆や栗きんとんなど、家族みんなで囲む年中行事のご馳走というイメージありますが、それだけではない意外と知らない歴史やお重ごとの内容が決まっているなど、おせちの縁起にまつわる由来をご紹介します。

おせちイラスト
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監修

おばんざい京室
DECOさん

監修/おばんざい京室
DECOさん

長年、京都で「おばんざい京室」を主宰し、京都の食文化を多くの人に伝える料理人。毎年おせちの由来を伝える特別講習会を行なっている。

どうしてお重につめるの?“めでたさを重ねる”という意味

おせちといえば、朱色や黒色のお重に詰まっているイメージです。お重には「めでたさを重ねる」という意味が込められています。京都では、古くからおせち自体を「お重づめ」や「組重」と呼ぶこともあります。

いつ用意して、いつ食べるもの?31日に準備して、お正月の三が日に食べます

昔は31日までにつくる家庭も多かったもの。主婦がお正月の三が日は水仕事をしないでよいようにお重に用意していたともいわれています。今は便利な通販や冷凍のおせちを年内に用意してゆったり過ごしましょう。

どうして「柳箸」を使うのか。A歳神様と一緒に食べる意味が

おせちを食べるときは日常のお箸もよいですが、特別な柳箸を使います。「両口箸」とも呼ばれ両端が削ってあり、片方は自分用、もう片方は歳神様用で、一緒に食していると考えているのです。

それぞれお重の意味を知っていますか?

華やかな食材を一層、気品あるものに仕立ててくれるお重。一般的には三段のお重を用いることが多いです。それぞれのお重に何を詰めるのかは、地域や各家庭によって違いはありますが、今回は広く伝わる一例をご紹介します。

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一の重:祝い肴

お重の一番上である一の重は、蓋を開けて最初ということもあり、赤や黄色の縁起のよい色が飛び込んでくるような、祝いの料理らしい華やかなものが詰まっています。

 

二の重:焼きもの・酢のもの

豊かな海に囲まれた日本ならではのご馳走で、魚を中心とした焼きものを入れます。また、一緒に酢のものを詰めるのは魚が傷むのを抑えてくれるためだとか。

 

三の重:煮もの

おせちの原型ともいえる、収穫物を神様に感謝した習慣から、野菜の煮ものをたっぷりと詰めます。まだ砂糖が貴重だった頃の名残でもあります。

【豆知識1】並びの数え方は京都ならでは!?

宮廷文化に習い、左から順番に上位としたことに由来して、左から一の重、ニの重と数えます。

【豆知識1】
並びの数え方は京都ならでは!?

宮廷文化に習い、左から順番に上位としたことに由来して、左から一の重、ニの重と数えます。

【豆知識2】古くは4つの段、格式高い五段も!!

かつては1〜4の段に料理を詰め、五段目は歳神様から授かる福を詰める場所として、何もいれないように空けておく習慣があります。

【豆知識2】
古くは4つの段、格式高い五段も!!

かつては1〜4の段に料理を詰め、五段目は歳神様から授かる福を詰める場所として、何もいれないように空けておく習慣があります。

全部意味があった! おせちの中身は縁起物だらけ

色とりどりの料理が並び、目にも楽しいおせち。家族みんなで分け合う人気の食材たちは、実は縁起のよいいわれがいっぱい。関東と京都の、おせちに欠かせない定番の品々に込められた願いをまとめました。新年に福を食しましょう。

数の子イラスト

にしんの卵である数の子は、一つのおなかにたくさんの卵数があるため、子孫繁栄を願う縁起物の代表格として親しまれてきました。美しい黄色が目にも鮮やかです。

黒豆イラスト

おせちに欠かせない黒豆は「一年中まめに働いてまめに生きていけますように」という意味が。関西はふっくらつややかに、関東はあえてシワを寄せて長寿の願いも込められています。

伊達巻イラスト

長崎県の卓袱(しっぽく)料理「カスティラかまぼこ」が江戸時代に広まったもので、書画を書く巻物の形に似ていることから、文化発展を願う縁起があります。京都では出汁巻玉子を用います。

栗きんとんイラスト

栗きんとんには「金団」の字が財宝に繋がることから「いつも裕福でありますように」との意味があります。貴重だった砂糖をふんだんに使ったご馳走でもありました。

たたきごぼうイラスト

京都のおせちの定番品。ごぼうは地中にしっかりと根を張ることから、家庭や家業が土地に根付いて、安泰に代々続くようにという願いが込められています。

ごまめ(田作り)イラスト

「五万米」と書いてごまめ、または田作りと呼ばれる片口いわしを干したもの。昔、田畑の肥料にごまめが使われており、大豊作になったことが由来とされています。

えびイラスト

えびは曲がった腰と長いひげから「腰が曲がるまで元気で丈夫に」という長寿の願いが込められた食材です。また、赤色は古くから魔除けの色ともいわれています。

終わりに

お重の詰め方や食材は、地域や家庭ごとで違うものです。関東は隙間なくぎっちりと詰め、関西は宮廷文化から彩りを重視するとされています。また、おせちに欠かせない基本は、お屠蘇、お雑煮、お煮しめ、そして祝いの肴三種。祝いの肴も「黒豆」と「数の子」は全国共通ですが、関東は「田作り」なのに対し、関西は「たたきごぼう」を指します。

このように地域によって差異はあるものの、1年の初めにその年の幸福を願っていただくものに変わりません。お正月、新たな年への祈りを込めておせちをいただきませんか。

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(写真/平谷舞 イラスト/小谷紗祈

planmake_niimi

企画・構成=新見麻由子
にいみまゆこ●月刊『茶の間」編集部員。徳島県出身、歴史や文化、レトロなものに憧れて京都へ。休みの日は、散歩や自宅でお茶を片手に本を読みながらまったり過ごしたい。季節を感じる和菓子やお花に興味がでてきた今日この頃。