“今”が若い時より楽しい!70代デザイナーの人生を輝かせる秘訣

人生満足しきって終わりたい!そんな方に素敵な人生の先輩からのアドバイス。60代で始めたブログ「madameHのバラ色の人生」が大人気、ファッションデザイナーとして今も現役の佐藤治子さん(71歳)が語る彼女流のおしゃれに自分らしく生きる方法。

「今は人生がバラ色」という佐藤さんは、長年ファッションの世界で活躍し、その人生やライフスタイルをつづったブログをきっかけに、さらに活動の幅を広げています。さまざまな経験を乗り越え、歳を重ねるほど美しく輝く佐藤さんが、人生で大切にしていることを教えてくれました。

佐藤治子さん

歳を重ねるほど、好きなことができる。
現役で走り続ける佐藤さんがみつけた「本当にやりたいこと」は?

私は今年で72歳になります。子どもの頃からファッションに興味があって、既製服のデザイナーとして45年余り、今も自分のブランド「madameH CLOSET」でデザインの仕事を続けています。

今私がつくりたいのは、“価値のあるベーシック”。私の考える“価値のある”洋服って、流行に関係なく、何年も着られるものなんです。昔はさまざまなブランドの服を着倒していましたが、60歳のときに周りにあるものを見直したんです。本当に好きなものだけを残したら、シンプルな服たちが残りました。

でも、シンプルないい服って実は手に入れるのが難しい。今は流行のサイクルがすごく早くて、流行のものじゃないと売れないっていう空気を感じます。ファストファッション、例えばユニクロにもシンプルな服はあるけど、何年も着られるような、ちょっといい物が欲しいときはどこにあるの? って。だから、ベーシックなセーターやシャツをつくっています。

実は、「madameH CLOSET」をはじめる前から、価値のある服のリメイクをする「REMODE(リモデ)」という活動をしています。クローゼットの中に眠っている服を、今のモードに合うようにリメイクして、蘇らせる。シルエットは流行によって変わるんですが、型は変わらないので、シルエットを時代に合せてあげればいい。あと、サイズが合っていないだけで服って格好悪くなってしまうんですが、サイズを直すだけで、明らかに変わるんですよね。

私のブランドでもサイズ展開にこだわったり、実際にお客様の悩みを解決する工夫をしたりと、いろいろな人とおしゃべりをしながら、私自身も楽しんで、“価値のある”服をつくっていますね。

佐藤治子さん

60歳にして人生の転機が。
きっかけは○○○デビュー!

私がデザイナーとして活動してきたのは、ファッションの黎明(れいめい)期にはじまり、80年代、バブル景気とアパレル業界が右肩上がりの時代を経て、現在の不景気まで。いいときも悪いときも知っています。プライベートでは子どもを産み、働いていました。シングル、子持ちで働く前例がなかった時代。風当たりは強く、ときには罵倒されたこともありましたけど、それでも食べていくには働くしかない。当時は必死でした。43歳のときに子連れ結婚をしましたが、今思い返すと、楽しいことばかりが浮かぶんです。

なぜなら自分の好きな仕事で子どもを抱えて生活できていたんだから、やっぱりすごく恵まれていたのだと思います。「ありがたいこと」を思い浮かべると、「こんなに恵まれているんだから大丈夫!」という元気がわいてきて、前向きな気持ちになれるんです。

今のように、自分のブランドを持つことになったきっかけは、60代で始めた「madameHのバラ色の人生」というブログです。「REMODE」の活動を紹介するために始めたんですが、開設したのは、東日本大震災の直後。みんなが真っ暗な状況の中で「バラ色」なんていってもいいのかとも思いましたが、私は考え方一つで人生はバラ色にもなるんじゃないかと思っているんです。

ブログには、リメイクの活動だけじゃなく、ファッションについての考えや、好きな旅について、自分の思うことをつらつら書いていました。そしたら、どんどん楽しくなってきて。すると、思いがけなくブログが評判になったんです。ブログがきっかけで、さまざまな人と出会い、本を出すこともできました。

ブログがこんなにも反響があるなんて思いませんでしたね。出た本がきっかけで新たな人に知ってもらい、仕事が広がっていく。今一緒に仕事をしている仲間も、本をきっかけに出会った方なんです。今は「バラ色」の日々。言葉にしたことが実現しています。

人生を楽しむために、インターネットなどを介した交友関係は一つの方法だと思います。まさにブログで実感しましたが、自分の生活範囲の中だったら出会わなかった人ともつながることができて、世界がどんどん広がったんです。スピードもスケールが違いますよね。さまざまな世代や立場の人と出会って、新しいことが増えていく感じです。

佐藤治子さん

シワもある、シミもできる。
それでもおしゃれをするのは、何のため?

おしゃれって、人の生きる姿勢だと思うんです。その人の人となりを表すもの。寝起きの顔、パジャマを着たままの顔、洗顔前の顔…。そこにお化粧して、着替えて、さあ出掛けようってスイッチを入れるんです。年を重ねるほどに、おしゃれは自分のためにするものになりましたね。

好きな服を着ると気分が上がるでしょう? もちろん年をとればシワができるし、シミもできるし、新陳代謝も悪くなる。いろいろあって、そのまま放っておけばどんどん下降していってしまう。せめて自分に納得するため、元気でいるために、おしゃれって必要だと思うんです。熟年女性のおしゃれのポイントは、髪、化粧(眉と口紅)、歯。そこが決まれば、とりあえず格好はつきますから。

それから大事なのは気持ちの余裕です。余裕がないといろいろな情報を受け入れることができないし、好奇心もわかないですよね。私も70歳を過ぎましたが、昔より好奇心が増えている気がします。

やりたいことがあれば、時間をやりくりしてすぐにやる。若いときって、まだまだ人生があると思っていたから、ずるずる時間を無駄にしてしまうことも多かったんです。でも、年をとるとどのくらい人生が残されているかわからないから。効率的に動くようになりました。

終活とかライフプランを立てた方がいいって聞くけど、思いがけないことが起こるのが人生。それは、いい意味も悪い意味もあるけど、だからこそ遠い将来の不安よりも、今できることを最大限やっていこうって思うんです。

70歳過ぎてもこんな風に仕事が広がっていって、チャンスも生まれる。人生「バラ色」の考え方で、まだまだ楽しくやっていきたいですね。

ファッションデザイナー
佐藤治子さん(madame H)

1947年、群馬県桐生市生まれ。英国ブランド「アクアスキュータム」「イエーガー」などでデザイナー、ディレクターとして活躍。2011年から価値ある服を再生させるお直しサロン「REMODE」のオーナーに。著書に『普通の服を、はっとするほどキレイに着る』(宝島社)、『スーツケースの中身で旅は決まる』(小石川書館)など。会員制トークサロン「What is my Style?」(夜間飛行主催)で講師を務めるほか、「madameH CLOSET」でオリジナルブランドを展開。月に一度開催している試着ウィークではmadameH自ら接客し、サイズや色等をアドバイス中。詳細はhttps://madamehcloset.exblog.jp/から。

若いときよりも今の方が、やりたいことができていると話す佐藤さん。
ブログによって出会った人や、新たな活動から受けた刺激やアイデアで、ますます活躍の場を広げています。
その生き生きとした姿は、まさに憧れの存在です。

 

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取材・文=羽切友希
はぎりゆき●月刊『茶の間』編集部員。ちびまる子ちゃんが好きな静岡県出身。小さい頃は茶畑の近くで育ち、茶畑を駆け抜けたのはよき思い出。お茶はやっぱり渋めが好き。