柴田理恵さん「急須で淹れたお茶が大好き」 舞台への思いを聞いてみた

いつもさわやかな笑顔と庶民的なキャラクターでお茶の間の人気を集める女優の柴田理恵さんは、女優やタレントとしてマルチに活動し、今やテレビで見ない日はないほど。そんな柴田さんのお茶時間を拝見し、お茶への思いと、WAHAHA本舗の舞台に賭ける情熱をお聞きしました。

柴田さんも大好きな煎茶は、こちらがおすすめです。

女優の柴田理恵さん

朝から夜まで、お茶とともに一日を過ごす。お茶と京都との意外なつながり

—— 柴田さんのその場をぱっと明るくする笑顔は、月刊『茶の間』の読者の方々にもファンが多くいらっしゃいます。柴田さんは普段、お茶は召し上がりますか?

 「ええ、飲みますよ。朝はほうじ茶、夕食のあとは煎茶。夏は煎茶を冷たい水に入れて水出しで、夜のうちに冷蔵庫に入れておきます。翌朝になると冷たくて、上品な甘みがあって、おいしいお茶ができています。夏のお茶の、好きな飲み方ですね」

—— 朝晩に召し上がるとは、本当にお茶が好きでいらっしゃるんですね。でも、柴田さんはお仕事も多忙でいらっしゃるので、お茶を淹れるのがお手間ではありませんか?

 「いえいえ。その手間がないと、おいしいお茶が淹れられませんから。もちろん仕事のあいだは、撮影の合間にペットボトルでお茶を出していただくこともあります。水分補給も大事なので飲みますけれども、ペットボトルのお茶が『おいしくて飲む』ことは、ありませんね。

 仕事が終わって家に帰ると、おいしいお茶を飲みたいので、ちゃんと急須で淹れますよ。私にとってお茶はとてもなじみ深いものです。実は、うちのおばがお茶の先生をしていて、子どもの頃、裏千家のお茶を習っていたこともあります」

—— 柴田さんがお茶好きでいらっしゃることが伝わってきます。柴田さんは富山県八尾町(現・富山市)ご出身だそうですね。京都のお茶はお好きですか?

「はい。まだ私が学生だったときに、富山にあるお茶屋さんで、アルバイトをしていたことがあるんです。その本店が京都にありました。初めて京都に行ったときに本店を訪れて、感心したことを覚えています」

——お茶屋さんでアルバイトの経験があるとは存じませんでした。さあ、お茶が入りましたので、召し上がりながらお聞かせください。

 「ありがとうございます。……わあ、甘くておいしい。京都に行ったときに、お煎茶の淹れ方を習ったこともあるのですが、自宅では雑な淹れ方になってしまって。ゆっくりお茶をいただくのはいいですね。

 最近の若い方や忙しい方は、急須で淹れるのが嫌でお茶離れになる人が多いと聞きました。でも、急須で淹れたお茶はやっぱりおいしいですね」

女優の柴田理恵さん

大正時代の和服を着ることも! 服やお茶に対するこだわりとは?

—— 柴田さんは最近、着物など日本の文化にも関心が深まっておられるようにお見受けしています。

 「若いときから関心があったというよりは、年齢とともにだんだん興味が湧いたというほうが正確ですね。日本茶や和食は、自分のからだに合うんですよね。私は子どもの頃からそういう風に育ったんです。たとえば着物にしても、新しいものを買うのではなく、親やおばの、代々引き継がれている着物を仕立て直してもらっていました。そうすると、だんだんからだになじんでくるんです」

—— そんなふうに着物と付き合うのはすてきですね。

 「和服は、時間が経っても、色あせないし、形崩れもありません。洋服だったらこうはいきません。だって、20年前に流行った服は着られないでしょう? 私の着物は大正時代のものもありますから」

—— 100年も前のものを! 地元の富山からお持ちになったんですか?

 「はい。祖母の着物を着たりもしますよ。祖母の着物だって、ていねいにあつかえば劣化しないんです。私の感性には、子どものときからの教育の影響もあるのもしれません。日本のものに対する愛着がありますから、お茶をちゃんと急須で淹れるのは私にとって当たり前なんです」

—— 柴田さんは、どんな急須をお使いですか?

 「見栄えがよい急須にしています。ちょっといいものをうつわ屋さんに行って選んだほうが気持ちが上がります。お茶の時間を楽しむうえで、急須や湯呑などのしつらえは大事だなと思います」

—— 柴田さんにとって、お茶の時間はどんな存在でしょうか?

 「私にとって、お茶の時間はホッとするひとときですね。最近興味をもっているのが、鉄瓶です。富山に帰ったとき、そこの水で沸かしてお茶を淹れるとすごくおいしいんですよね。実は、上京したときに、『東京の水はおいしくないな』というのが第一印象でした。もちろん、今は慣れましたし、当時に比べると東京のお水もすごくおいしくなりました。

 でも、私たち日本人は微妙な味わいを楽しめる舌をもっているじゃないですか。おだしや日本茶があるように、日本人の味覚は繊細なんだと思います。なので、水の大切さはすごく感じます」

—— 確かに、お水に気を配ると、また味わいが深くなりますね。

 「お水は大事ですよ。お茶はもちろん、京都のお豆腐がおいしいのも、水のおかげだっていうでしょう。

 地方公演では、たまに抹茶のセットを持っていくようにしているんです。とはいえ、抹茶と茶筅(ちゃせん)を持っていくだけで、それでお抹茶を点てるだけ。作法もなにもないんです。でも、その土地のお水による味の違いがあって、『お茶っておもしろいなあ』と思います」

女優の柴田理恵さん

原点である舞台。生だからこそ、お客さんから「役を捕まえる」ことができる

—— その土地による違い、地方公演を楽しんでおられるのが伝わってくるエピソードです。柴田さんは舞台、特に劇団でのお芝居に思い入れがおありですね。

 「そうですね。この世界に入って、25歳のときに仲間と一緒に立ち上げたのが劇団でした。それから38年ほど経ちましたが、舞台は自分の原点。自分の戻る場だと思います。

 舞台の公演は一日で終わらず、たいていの場合、何日もやります。だから、本番で役者も劇も育っていくんですよね。稽古場で積み上げていっても、本番がいちばん勉強になる。役を捕まえられるのは、お客さんの反応によることが多いです」

——「役を捕まえる」というのは、おもしろい表現ですね。

 「役を捕まえる、もしくはこのシーンの笑いを捕まえる。お客さんの前に出てみないとわからないんです」

—— 生だからこそ、ですね。

 「はい。舞台って、映画や配信とは本当に違うんです。そこで生きている人間が息をして、叫び、動くのは、心にジーンと響くものがあります。人と話すのも、電話やオンラインよりも、直接会って話すほうがお互いの人となりが伝わってきますよね。その感覚に近いと思います」

—— それはよくわかります。

 「配信の舞台では、笑いの反応がないんです。シリアスな劇でも、息を潜めて食い入るように見てくれているお客さんの息遣いは、役者はちゃんと感じ取れるもの。演者と観客のお互いの呼吸が伝わってくるのが、舞台のよいところです」

女優の柴田理恵さん

昔は喧嘩をすることも……。同志・久本雅美さんとの関係性

—— 柴田さんの本拠地「WAHAHA本舗」で、10月から全国での舞台の準備を進めているとお聞きしました。

 「ひとことでいえば、踊りや歌、コント、一人語りが混ざった、バラエティショー。WAHAHA本舗の舞台は、とってもくだらなかったり、とってもおしゃれで格好よかったり。振れ幅の広いパフォーマンスなんです

—— 38年という長い間舞台を続けるのはすごいです。

 「WAHAHA本舗は自分たちが立ち上げた劇団です。もちろん私も他の舞台でもお芝居をしますが、WAHAHA本舗の舞台は独特なんです。ここにしかない世界があるんですよ。

 ユニークなアイデアを劇作家の喰始(たべはじめ)さんに提示されて、私と久本雅美さんでコントとかをやったりすることもあります。そういう変なことって、他の劇団のお芝居にはないんですよね」

—— 柴田さんにとって、久本さんはどんな存在ですか?

 「同志。あるいは、戦友、盟友。ずっと一緒にやってきていますから。お互いにアドバイスし合うこともあります。頼りになる存在です。

 長年一緒にいるから、お互いわかり合えることがあります。出会った当初は喧嘩することもありましたよ。若いうちは自我が強くて、お互いのことをまだ理解できないから。でも、年月が経つにつれて自分にはない発想を持っているお互いを受け入れるようになりました。役割分担や発想の違いをおもしろがれるようになったんです」

—— 舞台では、柴田さんご自身の企画をなさることもあるそうですね。

 「はい、そうすることもあります。劇作家との信頼関係が大事ですね。稽古では、役者も意見を出して、ベストを尽くします。実際、舞台はとってもおもしろいですよ。役者にとっても待ちに待った舞台です。ぜひお近くの劇場に一度足を運んでいただきたいです」

—— 今回、普段はお聞きできない、舞台の話が聞けてよかったです。ありがとうございました。

柴田理恵さん
女優。1959年生まれ。富山県出身。劇団東京ヴォードヴィルショーを経て、1984年、演出家の喰始(たべ・はじめ)さんを中心に、久本雅美さんらともにワハハ本舗を設立。劇団の看板女優として、笑いとパワーあふれる舞台を届けている。現在は舞台のほか、映画やTVドラマ、バラエティ番組などでも活躍中。

WAHAHA本舗

WAHAHA本舗「王と花魁」

原点である舞台。生だからこそ、お客さんから「役を捕まえる」ことができる

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2020年から延期となった、WAHAHA本舗の全体公演「王と花魁」が2021年10月28日(木)から始まります。実に4年ぶり、待望の全国ツアーです。10月〜12月までのあいだ、東京を皮切りに、愛知、大阪、兵庫、新潟、富山、宮城、山形、群馬、茨城、福岡、熊本の各地を巡回します。柴田理恵さんをはじめ、WAHAHA本舗の役者さんたちの魅力を、生で感じてみては。

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【構成・演出】 喰 始
【出演】柴田理恵、久本雅美、佐藤正宏、梅垣義明、すずまさ、大久保ノブオ、タマ伸也、トニー淳、正源敬三、我善導、清水ひとみ、兵頭有紀、大窪みこえ、星川桂、矢原加奈子、犬吠埼にゃん、鈴木千琴、石原奈津美、コースケ☆原澄人、村本准也、噛家坊、哀原友則、吉川元祥、三宅潤、観月ゆうじ、杉田のぞみ、新美たま希

【予約方法】
[お問合]WAHAHA本舗
[電話]03-3406-4472
[メール]info@wahahahompo.co.jp
[HP]http://wahahahompo.co.jp

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※未就学児童のご入場はお断りいたします。※自治体や劇場などで作成されている、新型コロナウイルス感染症対策のガイドラインで定められる最大の収容率でお席をご用意いたします。なお、開催の有無は状況により変化する可能性がございます。あらかじめご了承ください。
※各公演詳細は右記WAHAHA本舗ホームページよりご確認くださいませ。

テレビでどんなときも笑顔を届けてくれる柴田理恵さん。

お茶や舞台に対する思いから、バックボーンや素顔が垣間見れた気がします。

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企画・構成=楠石千晶
くすいしちあき●月刊『茶の間』編集部員。梅干しとみかんがおいしい和歌山県出身。幼少期から梅干茶漬けをこよなく愛す。そのおともにはアイドルと深海魚があれば言うことなし。