読むと心が軽くなる!京都で人気の僧侶・英月さんの共感を呼ぶ法話

波乱万丈の人生が多くの女性の共感を呼んでいる、真宗佛光寺派大行寺の住職・英月さん。仏教をわかりやすく説く著書や、悩み相談のテレビ番組などで、おおらかで親しみやすい人柄が人気です。仕事、生き方、さまざまなできごとに心が揺らぐ、今を軽やかに生きる手がかりをうかがいました。

 

心が疲れたときに。テアニンたっぷりの玉露はこちら。

大行寺住職 英月さん

お話 大行寺住職 英月さん

京都市生まれ。真宗佛光寺派長谷山北ノ院大行寺住職。銀行員生活を経て2001年に渡米。2010年帰国。大行寺(通常非公開)で始めた「写経の会」「法話会」には、全国から多くの参拝者が集まる。講演会や寺院向け講習会の講師を務めるほか、テレビで芸能人の悩みに答えるなど、その活動は多岐にわたる。著書に『そのお悩み、親鸞さんが解決してくれますー英月流 「和讃」のススメ』(春秋社)、『お見合い35回にうんざりしてアメリカに家出して僧侶になって帰ってきました。』(幻冬舎)など。英月さんブログ「この世の極楽。」
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自分の「都合」が苦しみの元

メディアで「コロナ禍」という言葉が使われるようになり、早くも1年が経ちました。実際に罹患して辛い思いをされた方やお仕事に影響が出た方もおいででしょう。「コロナのせいで」と、つい口にしていますよね。

2020年の緊急事態宣言ののち、私の身辺にも影響がありました。講演会やテレビ番組収録が軒並み中止になり、スケジュールが白紙に。聴講している大学院の講義もオンラインに切り替わり、外出の機会が減りました。それに伴い、家族と食卓を囲むことも多くなるなど、それまでにない暮らしの変化が訪れました。急激な変化に戸惑われた方も多いと思います。しかし、コロナウイルスの存在は、ただの事実でしかありません。それを禍(わざわい)と捉えるのも、「そのおかげ」で、家族と過ごす時間が増えたと受け止めることも、あくまで自分の都合でしかないのです。

人の世界を、世間といいます。私たちはその中で、物事を自分にとってよいものか・悪いものか、二項対立で考えています。事実を見ているようで見ていない。そうして生まれるのが苦しみです。自分の都合に振り回されて生きていることに、気づけないでいるのです。

世間を超えた世界を知り、自分と向き合う

私が生まれ育ったここ、大行寺の御本尊は、鎌倉時代の仏師・快慶さん作の阿弥陀如来立像です。およそ800年の間に、たくさんの人々の姿を見てこられたことと思います。アミダの「ア」は打ち消しなので「無」、ミダは「量る」ことを意味しています。量ることのない世界から来た方、それが阿弥陀如来です。

二項対立で物事を量ってばかりの私たちに、量ることのない世界が「ある」と呼び掛けてくださっているのです。世間を超えた世界が「ある」ということを知らされることで、今が変えられるのです。

お釈迦さまが生きていた2500年前から現代までの間に、幾多の災害や疫病、戦争などがありました。暮らしむきは便利になりましたが、生・老・病・死、という人の悩みの根本は変わっていません。

私は親しみを込めて「お経さん」といっていますが、経典の多くは、お釈迦さまの説法の記録です。と聞くと、難しいことが説かれているのでは? と思われるかも知れませんが、実はそうではありません。お経さんは、鏡のようなものです。お釈迦さまが説いてくださった真実の教えを鏡として、本当の私に出遇わせていただくのです。なぜなら、わかったつもりで、わかっていないのが、私自身だからです。

地蔵さま
境内で愛らしく微笑むお地蔵さま。

道は必ず、ある

お参りするときに、みなさん、何を願っているでしょうか? 健康で長生きできますように、宝くじが当たりますように、等々。これらは自分の都合であり、欲です。だから、叶えば、もっともっとと思い、叶わなければ、悲しみ、怒る。仏さまを念ずることで見えてくるのは、そんな自分の都合に振り回されている我が身の姿です。

もう20年ほど前、私が渡米したときのことをお話ししますね。お寺へお嫁に行って欲しいという両親の勧めで、たくさんのお見合いをしました。でもストレスで体調を崩して。目の前の苦しみから逃れるために、英語も十分に話せないのに、勢いで日本を飛び出しました。

実家の母が渡米先に3つ折りの御本尊を送ってくれたのですが、最初は放ったらかしにしていたんですよ。思い通りにいかない毎日に七転八倒していたある日、ふと思い立って取り出し、朝夕に手を合せるようになりました。変えられたのは、私自身でした。自分の都合を超えた、大きな「はたらき」の存在に気づかされたのです。

図らずもアメリカで仏さまの教えと出遇うことができた私に、大きな転機が訪れます。お寺を継ぐはずだった弟が、お寺を出てしまったのです。弟の代わりにお寺を継ぐため、渡米の9年半後に日本に戻ってきました。逃げたつもりが、振り返ればすべては仏さまの手のひらの上だったのだと思います。こうした経験をもとに、私なりに仏さまのはたらきをまとめた言葉があるので、ご紹介しますね。

この道も あの道も 行き詰まった もう、道がない と思うけど 行き詰まるのは 私の思い 道は必ず、ある

辛いことも苦しいこともたくさんありますが、それでも人の世は続いてきました。自分の都合は行き詰まりますが、行き詰まった先にも道はあります。大丈夫です。

英月さん
英月さんの手元にあるのは、『真宗聖典』。
「仏説無量寿経」「仏説観無量寿経」「仏説阿弥陀経」などの
「お経さん」の他に、親鸞聖人の著書などが収録されている。

お盆は仏さまからの贈り物

仏さまというと遠い存在に思われるかもしれませんが、皆さまの亡くなられたご先祖さまも仏さまです。浄土真宗の教えでは、亡くなられた方はすぐに、阿弥陀さまのお浄土へ往生されます。

世間の中で、あらゆることを量ってばかりいる私たちですが、いのちを生き切られたご先祖さまを念ずることで、量ることのない世界があると知らされます。それは、亡き人を縁として、いただく気づきであり、同時に故人との再会でもあります。

お盆は、盂蘭盆(うらぼん)ともいい、サンスクリットのウランバナに漢字をあてはめたもので、逆さまになっている状態という意味です。何が逆さまかというと、私の物の見方です。手を合せ、自分の都合を願っていた私が、実は、仏さまから願われていたのです。願われたいのちを今、生かされているのです。まるで仏さまからの贈り物ですね。

大行寺の門前に咲く、清らかな淡いピンクの水蓮。
大行寺の門前に咲く、清らかな淡いピンクの水蓮。

英月さんのお話、いかがだったでしょうか。生きていると、なんだか心がつらく、しんどくなることもありますが、そのつど自分の心と向き合っていきたいものですね。

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企画・構成=米村めぐみ
よねむらめぐみ●月刊『茶の間」編集部員。出社したらまずはお茶!仕事中はお茶ばかり飲んでいるといっても過言ではないほど、日本茶が好き。作家ものの湯呑など、うつわあつめが趣味。おいしい茶菓子にも目がありません。