京都で活躍する若手女性和菓子職人に、数ある和菓子の中で、つくり手の目線から見て素晴らしいと思う甘味を教えてもらいました。左京区で「茶房一倫」を営む藤田さんが教えてくれたのは「あんこがおいしいお店」。奥深いあんこの世界をのぞいてみてください。
【教えてくれた人】知る人ぞ知る、左京区の隠れ家的和菓子喫茶の店主・藤田倫子さん
自分らしい和菓子を目指して、日々精進を続ける和菓子職人。
男の世界と思われがちな和菓子界ですが、実は、今、若い女性で和菓子作りを生業とする人が増えています。
その一人が、京都生まれ、京都育ちの藤田倫子さんです。和菓子好きが高じて、京都市内のお茶屋や和菓子店で勤務したのち、左京区で「茶房一倫」を営んでいます。
奥深いあんこの世界へ・・・
修行時代、京都中の和菓子店を食べ歩いたという藤田さんに「あんこがおいしいお店」を教えてもらいました。
「あんこは和菓子にとって必要不可欠ですが、自然の産物である小豆は、その時々で炊き方を変えなければいけないほど繊細なんです。素材や炊き方を含めて、お店の個性が出やすいところですね」
まず教えてくれたのは、おはぎ専門店「今西軒」のこしあんのおはぎです。
【その1】「おはぎ道」を貫く店主渾身のこしあん
「何年も前に食べて以来ですが、今でも味を思い出せるくらい衝撃的でした。こしあんは、舌の上ですっと溶けて、常温なのにひんやりとした感じがするほどの滑らかさです」
藤田さんがそう絶賛する「今西軒のおはぎ」。京都で知らない人はいないほどのおはぎ専門店です。メニューはきなこ、こしあん、粒あんの3種類(各190円)のみという潔さ。平日でも、開店前から行列ができ、昼過ぎには売り切れてしまうほどの人気です。
おはぎ一筋に人生をかけた4代目が、2〜3日かけて炊き上げたあんこ、是非ご賞味ください。
今西軒
【住所】京都市下京区五条通烏丸西入一筋目下ル横諏訪町312
【電話】075-351-5825
【営業時間】9:30〜売り切れ迄
【定休日】火曜・第1、第3、第5月曜(6〜8月は毎週月曜・火曜)
※持ち帰りのみ。予約がベター。
【その2】つやつやの粒あんは、まるで宝石みたい!
こしあんとは変わって、粒あんは「艶やかさ」が重視されます。
老舗和菓子店「茶寮 宝泉 」はぜんざいの粒あんが絶品なのだそう。
「粒あんは、皮が割れないように炊くことが大切なんですが、これがとても難しいんです。宝泉では、丹波大納言小豆を丁寧に炊いていて、艶やかな赤色がまるで宝石のよう。ぜひ、召し上がってみてください」と藤田さん。
上質な丹波大納言小豆をふんわりやわらかに炊き上げ、自家製の焼き餅を添えた大納言ぜんざい(1,150円)。「より多くの人においしい小豆を食べてほしい」という店主の思いが込められ、素材の味が活きた逸品です。
茶寮 宝泉
【住所】京都市左京区下鴨西高木町25
【電話】075-712-1270
【営業時間】10:00〜17:00(L.O.16:45)
【定休日】水曜・木曜(祝日の場合、翌平日休み)
【HP】http://www.housendo.com/
※席の予約不可。
【その3】和菓子なのにみずみずしい!
最後に教えてくれたのは、「御菓子司 聚洸」のきんとん。
「引き算の美学」を感じさせる人気の和菓子店です。写真は、自家製のこしあんのまわりに「小田巻」という道具できんとん生地をまとわせた愛らしい「花宴(はなのえん)」(320円)。予約時に季節の和菓子を数種類注文するのがおすすめ。
「不思議なんですが、和菓子なのにみずみずしさを感じるほど、あんこがやわらかいんですよ。生地も含めてこんなにやわらかいのに、繊細な形に仕上げる技術が本当に素晴らしいと思います」と藤田さんは話してくれました。
御菓子司 聚洸
【住所】京都市上京区大宮寺之内上ル
【電話】075-431-2800
【営業時間】10:00〜17:00
【定休日】水曜・日曜・祝日
※持ち帰りのみ。お菓子は3日前までにご予約下さい。
手間と暇をかけるほどあんこはおいしくなるといいます。あんこを仕入れている和菓子店も多い中、藤田さんが教えてくれた3つのお店は、すべて自家製あんこにこだわっています。
つくり手によって変わる味わいや食感を比べて、奥深いあんこの世界に触れてみませんか?
舌の肥えた友人へのお土産にもおすすめです。
知る人ぞ知る、和菓子の名店・「茶房一倫」
「哲学の道」のほど近く。北白川通りから小道に曲がった先に、突如現れる和菓子喫茶。
店内に足を踏み入れると、和と洋が混ざった不思議と落ち着く空間が広がります。
ここでは、藤田さんがつくる和菓子とお茶をゆっくりと楽しむことができます。
茶房一倫の春の名物は「いちご大福」。
そのとき一番おいしいと思ういちごを厳選し、白あんと一緒にふわふわの餅で包みます。驚くほどやわらかくてジューシー。売り切れ必至の春の味覚です。
京都観光に疲れたら、藤田さんのつくる和菓子で癒されてみませんか?
茶房一倫
【住所】京都市左京区浄土寺東田町19
【電話】075-761-5810
【営業時間】11:00〜18:00
【定休日】水曜
【HP】https://www.facebook.com/ichirin1119
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(写真 福尾行洋・石川奈津子)
取材・文=大村沙耶
おおむらさや●月刊『茶の間」編集部員。福岡県北九州市出身。学生時代は剣道に打ち込み、京都に住み始めてから茶道と着付けを習い始める。ミーハーだけど、伝統文化と自然を愛する超ポジティブ人間。