女性和菓子職人が絶賛!本当においしい 京都の幸せ和菓子3選

京都で活躍する若手女性和菓子職人に、数ある和菓子の中で、つくり手の目線から見て素晴らしいと思う甘味を教えてもらいました。この春、京都伏見桃山で和菓子工房を構えた市川萌さんが教えてくれたのは「幸せになれる和菓子」。知れば、和菓子をもっと好きになるはず!

和菓子すずめ家・市川萌さん

【教えてくれた人】異色の経歴をもつ
「和菓子すずめ家」の市川萌さん

和菓子・浮島
取材時、「春」をテーマに市川さんが仕立ててくれた、桜とよもぎの浮島。

「和菓子すずめ家」の市川さんは、いろんなことに興味があり、大学では陶芸を学び、福祉関係に就職したのち、巡り巡って趣味の和菓子づくりの道に進んだという、異色の経歴の持ち主。

京都で和菓子教室を中心に、日本各地への出張教室やイベントで創作和菓子を販売しています。

この春、念願であった和菓子工房を京都伏見桃山に構えたばかり。

「最近、福祉施設への出張和菓子教室や、器関係の方からの依頼が増え、今までの経験が和菓子の仕事とつながっていて、人との出会いにとても感謝しています」と話す市川さん。

和菓子や器、そして福祉、幅広い交友関係を持つ市川さんに、人との縁の中で出合ったお店の中から、特に「食べて幸せになれる和菓子」を教えてもらいました。

知って食べると、よりおいしい、京都の和菓子

和菓子も、見映えが良いものが話題になりがちですが、市川さんは「毎日食べたくなる、からだが純粋に喜ぶ和菓子」が好きだと言います。

歴史ある京都の和菓子店には、愛され続ける理由があります。

和菓子の歴史を知って、食べるとより幸せ気分を味わえるという、市川さんイチオシの和菓子店をご紹介しましょう。

01. 鍵甚良房

忘れられない、3種のマリアージュ

鍵甚良房・うりんこ

「専門学校時代、先生から教えてもらったのが『鍵甚良房』の亥の子餅です。中に3種の素材が入って、口の中で一つになる感覚が忘れられません。亥の子餅は秋限定なので、秋以外は、『うりんこ』という最中をぜひ。こちらも、3種の素材のマリアージュが楽しめますよ。特に亥年の今年は、絶対行くべき和菓子店ですね」

そう、市川さんが絶賛する「うりんこ」は、愛らしい猪の最中皮の中に、自家製粒あん・栗・黒豆・いちじくが入った最中(1個180円)。

いちじくの酸味と栗・黒豆の香ばしさ、粒あんの甘みが口の中で一つになり、食べるほどに変わる味わいを楽しめます。

鍵甚良房

鍵甚良房
【住所】京都市東山区大和大路通四条下ル小松町140
【電話】075-561-4180
【営業時間】8:00〜17:00
【定休日】水曜
【Instagram】@kagijinで情報発信中
※持ち帰りのみ。

02. カステラ ド パウロ

カステラの原点を学んで、味わう

カステラ ド パウロ・食文化体験プレート

続いて教えてくれたのは、ポルトガル菓子店「カステラ ド パウロ」。

ここでは、カステラの歴史と文化を知ることができるといいます。

「カステラは、日本で独自に発展してきたので、じつは和菓子に分類されます。元になったポルトガル菓子『パォンデロー』とは全然違う形なんです。ここでは、その両方を食べることができますよ。かわいいお店の雰囲気も大好きです」と市川さんは言います。

おすすめは、写真の食文化体験プレート(700円/ドリンクセットで100円引)。

手前の真ん中が長崎仕込みのカステラで、その周辺に、元となった3種の「パォンデロー」があり、食感や味わいの違いを楽しむことができます。

香りのよいワインと合せると、いっそう幸せ気分に。

カステラ ド パウロ

カステラ ド パウロ
【住所】京都市上京区御前通今小路上ル馬喰町897 蔵A棟
【電話】075-748-0505
【営業時間】9:30〜18:00(カフェ〜17:00)
【定休日】水曜・第3木曜
(25日が水曜の場合は営業、翌日休み。水曜が祝日の場合は営業、翌日休み、6月末〜7月中旬夏季休業)
【HP】https://castelladopaulo.com
※カステラの全国発送あり。詳しくはHP参照。

03. 粟餅所・澤屋

思わず笑顔がこぼれる素朴なお餅

粟餅所・澤屋の粟餅

最後に教えてくれた粟餅(あわもち)の名店「粟餅所・澤屋」は、素朴な佇まいがたまらないのだとか。

「とにかくおばちゃん達が元気! つくっている時の連携プレイは注目です。おばあちゃんの家に来たような懐かしい気持ちになりますね」と市川さん。

1682年の創業以来、北野名物として愛され続ける銘菓で、なめらかなあんこ粟餅と国産大豆を使った挽きたてのきな粉をまぶした粟餅(3個セット450円)。

やわらかな食感とやさしい甘みで思わず笑顔になってしまいます。

粟餅所・澤屋

粟餅所・澤屋

【住所】京都市上京区北野天満宮前西入紙屋川町838-7
【電話】075-461-4517
【営業時間】9:00〜17:00(売り切れ次第終了)
【定休日】木曜・毎月26日
※持ち帰り可。

目指すのは、純粋にからだが喜ぶ和菓子

あんこ

フォトジェニック、ビジュアル系など、和菓子も見映えがよいものが流行っていますが、

市川さんはそんな流行には流されず「おまんじゅうやお餅など、明日も食べたいと思えるような和菓子をつくりたい」と言います。

浮島

そんな市川さんが、「和のケーキ」ともいわれる浮島を、桜とよもぎの2層仕立てにしてくれました。

あんこが練りこまれた生地は、しっとりとしてほんのり甘く、春のイベントでも大好評だったそうです。

よもぎを選んだ理由を聞いてみると、

「よもぎが大好きなんです」と笑顔で答えてくれました。

つくるだけでなく、和菓子を食べることも大好きな市川さんが目指すのは、「純粋にからだが喜ぶ和菓子」。

そのヒントが今回教えてくれた3つのお店にあると言います。

どれも昔からの製法を守り続ける歴史ある和菓子店ばかり。

和菓子の歴史を知って、食べると、知る前とは違った幸せを味わうことができるのではないでしょうか? 

そんな和菓子をぜひ味わってみてください。

【出店情報】

2019年6月30日(日) 11:00〜16:00

ツナグ市(宇治市)にて1日限定の甘味処をオープン。メニューはあんみつ、水無月など。

詳細はInstagram @suzumeya_wagashi にて

 

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(写真 平谷舞・石川奈津子)

取材・文=大村沙耶
おおむらさや●月刊『茶の間」編集部員。福岡県北九州市出身。学生時代は剣道に打ち込み、京都に住み始めてから茶道と着付けを習い始める。ミーハーだけど、伝統文化と自然を愛する超ポジティブ人間。