日々のお茶の時間をもっと豊かに、楽しい時間にするために、うつわに注目してみませんか。うつわの組合せをさまざまに楽しむ「うつわ遊び」のコツを、京都の祗園に店を構える昴-KYOTOの店主でうつわの目利き、永松仁美さんにお聞きしました。
いつもの愛用品を上手に組合せて
「『うつわ遊び』といっても、あまり難しく考えすぎる必要はありません。お家にあるうつわから、まず、お好きなものを選んで、そこから組合せを考えていくといいと思います」と話すのは、京都・古門前(ふるもんぜん)の骨董店の長女として生まれ、祇園でギャラリー「昂 ーKYOTOー」を営む永松仁美さん。永松さん自身は、うつわを選ぶとき、広がりを感じさせるものに心惹かれるといいます。たとえば、コップを花器にしたり、茶入れにしたり。“見立て”の楽しさをさまざまに与えてくれるうつわが好きなのだそう。
「骨董のお皿と現代的な湯呑を組合せてみたり、土ものと磁器のように質感の異なるものを合せてみたり。それから色合いも大事ですね。季節を意識した色をベースにして、さらに差し色をプラスしてコントラストを楽しんでみるのもおすすめです。先入観にとらわれず、自由な発想で組合せてみてくださいね」
いつもの愛用品がちょっとしたアイデアで、意外な表情を見せることがあったり、新たな発見があったり。ここからは、永松さんのさまざまな『うつわ遊び』をご紹介します。おうちのお茶時間に、試してみてはいかが?
ポイント1 和と洋
さりげなく和と洋を組合せて、ほんのりと華やぎを
ポイント1 和と洋
さりげなく和と洋を組合せて、ほんのりと華やぎを
たとえば、いつもの和風のお湯呑に、茶托ではなく、洋風のシルバーのコースターを組合せてみると、モダンでちょっと華やかな雰囲気がプラスされます。写真のコースターはアメリカのアンティーク、急須は日本のものですが、同じシルバーの素材でも和洋を対比させると雰囲気が異なって、面白いですね。
小さなお菓子の松露をのせているのは、愛らしい形押しの豆皿たち。写真のモチーフは菊花、お鯛さん、わらびの3種ですが、柄や形がバラバラでもかえって楽しい演出になりますよ。
ポイント2 質感の面白さ
手触りや風合いが異なるうつわの素敵な関係
ポイント2 質感の面白さ
手触りや風合いが異なるうつわの素敵な関係
気取りのない粉引(こひき)のお湯呑は手に温かく馴染み、ほのかに野趣があって、懐かしい風情があります。それに合せる急須と菓子皿は、つるりとした硬質感のある白い磁器。やわらかさと硬さ、温かさとクールさ。異なるテクスチャーを組合せて、さらに全体を木のトレーがやさしく包み込んでくれています。
ナチュラルな雰囲気の中に、ガラスの花器とお菓子のグリーンが、差し色になって生き生きとした表情を生み出しています。お菓子の色や形も大切な要素。うつわとの相性を考えて、素敵に演出してみてください。
ポイント3 色を合せる
青の色調の変化と出合いの妙をゆっくり愉しむ
ポイント3 色を合せる
青の色調の変化と出合いの妙をゆっくり愉しむ
全体の色調をブルーにまとめて、色の濃淡を楽しむうつわ遊びです。5月の風を思わせる爽やかなカラーリングにポイントをおきました。ブルーの茶碗と豆皿、村田森さんの瑠璃色の急須、「染司よしおか」さんの藍染めのテーブルマット。形や素材が異なっても、基調の色を一つにすれば、組合せに失敗することはありません。ユニークなのはフランスのオリーブオイル入れをお湯差しに使っていることですが、実は模様の小花もブルー。色さえ合せばこんな個性的な組合せもしやすくなります。
special interview
「わたしとお茶とうつわ遊び」
special interview
「わたしとお茶とうつわ遊び」
ギャラリーの店主だけにとどまらず、デパートのイベント、カフェやホテル、店舗のコーディネート、書籍の出版など、実に多彩に活躍する永松さん。
そんな彼女の本拠地・ギャラリー「昂 ーKYOTOー」の店内には美しいもの、愛らしいものがずらり。どれも永松さんが「好き」と感じ、その審美眼で選び抜いたものばかりです。古伊万里の横に、ヨーロッパのアンティークガラスやシルバーが並び、さらに現代作家のシンプルモダンな作品がきらりと存在感を示していたり……。
永松さんがギャラリーを持ったのは、10年前。その年に父を亡くし、骨董の道の師であり、最愛の父の名前から「昂」という字をもらって、店名にしたそうです。
「自分が美しいと思ったら、それでええんや、というのが父の口癖でした。ものの価値を決めるのは自分なのだということを父から学びました。そういえば実家の家族もお茶好きで、父などは夜によくお抹茶を点てて、ふるまってくれました」
永松さん自身もお茶が大好きで、1日中よく飲むそうです。まず、1日のはじまりは、緑茶からスタート。爽やかな香気とともに朝のひとときを楽しみます。仕事に行くときは、ポットに緑茶やほうじ茶など温かいお茶をいれて出かけます。夕食後に家族でちょっとしたお菓子と緑茶をいただくのも日常のことだそうです。
「人と人がいて、その間に1杯のお茶があれば、そこはあたたかく、心地いい空間に変わります。ただお茶を飲むだけでなく、『うつわ遊び』を楽しむ時間を持つことで、お茶の魅力が一層、引き出されるはずです」
【住所】京都市東山区祇園町南側581 ZEN2F
【電話】075-525-0805
【営業時間】12:00 – 18:00
【定休日】月・火曜日、不定休あり
永松仁美さんのうつわ選びのポイントやお茶時間についてのお話、お楽しみいただけましたか。おうち時間が長くなった今だからこそ、お茶を飲む時間をもっと充実させたいものです。みなさまもぜひ、ご自宅にある茶器をうまく組合せて楽しんでみてください。
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(写真 津久井珠美/ 文 郡麻江)
企画・構成=米村めぐみ
よねむらめぐみ●月刊『茶の間」編集部員。出社したらまずはお茶!仕事中はお茶ばかり飲んでいるといっても過言ではないほど、日本茶が好き。作家ものの湯呑など、うつわあつめが趣味。おいしい茶菓子にも目がありません。