忙しい朝こそ日本茶!京都の女性が実践する、毎日を輝かせる朝習慣

朝からスッキリ目覚め、1日を元気に過ごすためにおすすめなのが、朝に飲む日本茶。目覚めの1杯のお茶が生活のリズムをつくり、こころもからだも元気にしてくれます。朝茶習慣を実践し、仕事をはじめ充実した毎日を過ごす3人の女性に朝にお茶を飲むのメリットをお聞きしました。

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「わたしの朝は祈りの祭礼と
家族全員で抹茶をいただく時間から始まります」

西行庵 当主夫人 花輪裕美さん

西行庵 当主夫人 花輪裕美さん

はなわひろみ
はなわひろみ/京都の東山にある「西行庵」当主夫人。8年前に円位流の茶を伝える西行庵の花輪竹峯氏のもとに嫁ぎ、その茶の道を支える。花筥抄(けこしょう)という名前で、家族や庵を訪れる人のための和菓子を製作。現在、二児の母親として子育て中でもある。

京都の観光スポット、八坂神社や高台寺からもほど近い東山の麓に西行庵はあります。ここは平安末期の僧侶であり、その時代の代表的な歌人でもあった西行法師ゆかりの庵で、当主の花輪竹峯(はなわちくほう)さんは茶道円位流(えんいりゅう)のお茶人。毎朝5時頃から献香献茶の儀式を行ない、祈りを捧げるのが日課です。夫人の裕美さんの朝もまた、その早朝の茶礼とともに始まります。

真摯な祈りの茶と向き合う竹峯さんの手助けに少しでもなればと思い、みずから茶のための菓子をつくり始めたという裕美さん。西行庵を訪ねてくる客人や茶の稽古に訪れる門下の茶人たちのために、これまで試行錯誤を重ねながらつくった四季折々の和菓子は数知れずです。とくに西行法師ゆかりの地・吉野の名産である葛を使った「吉野羹」には思い入れがあるそうで、今回はその吉野羹の中に、白い淡雪羹の月を浮かべた「澄月」という銘の菓子を出してくださいました。西行の和歌「深き山に心の月し澄みぬれば鏡に四方の悟りをぞみる」を菓子のかたちへと写し取った、まさにここ西行庵ならではの菓子です。

左/裕美さんお手製の和菓子「澄月」。葛を使った吉野羹と、卵白の淡雪羹を使った美しい菓子。右/「月に寄する朝の茶のとき」をテーマに組んだお茶道具の数々。
左/裕美さんお手製の和菓子「澄月」。葛を使った吉野羹と、卵白の淡雪羹を使った美しい菓子。右/「月に寄する朝の茶のとき」をテーマに組んだお茶道具の数々。

朝茶の儀式が終わると家族全員での抹茶タイム。一日の始まりの忙しい時間ながらも、それぞれの顔を見ながら一緒に一服のお茶をいただくのも花輪家の朝の習慣です。取材の日はまだ残暑の頃で、子どもたちは浴衣で登場。7歳のお姉さんは小さいときからお茶が大好きで、茶会などでも和服でお手伝いをしているとか。また4歳になる弟はお母さんのお菓子が大好き。幼い頃から和の文化に自然と触れてゆける環境も素敵です。祖母の宗恵(そうけい)さんも加わって、いつもお茶をいただく茶室の空間での記念撮影の際にも、みんな一斉に話し出すという賑やかさ。家族で和気藹々(わきあいあい)と語り合う朝のお茶時間の豊かさが、幽玄なる庵の空間に満ちあふれていました。

「朝起きたときに
“今日はなにを飲もうかな”とまず考えています」

ピアニスト・作曲家 川上ミネさん

ピアニスト・作曲家 川上ミネさん

かわかみみね/ピアニスト、作曲家。3歳からピアノをはじめ、ドイツのミュンヘン国立音楽大学を卒業後、ドイツ、スペイン、キューバなどを拠点に、日本と行き来しながら音楽活動を行なう。作曲活動では、ただ音が降りてくるのを感じ写し取るという、クラシックでもジャスでも現代音楽でもないと自ら語る独自の音楽世界を展開している。
かわかみみね/ピアニスト、作曲家。3歳からピアノをはじめ、ドイツのミュンヘン国立音楽大学を卒業後、ドイツ、スペイン、キューバなどを拠点に、日本と行き来しながら音楽活動を行なう。作曲活動では、ただ音が降りてくるのを感じ写し取るという、クラシックでもジャスでも現代音楽でもないと自ら語る独自の音楽世界を展開している。

スペインと日本を拠点に演奏活動を行なうピアニストの川上ミネさん。ドイツの音楽大学を卒業後、日本、ドイツ、スペイン、南米などで30年にわたり演奏および作曲活動を続けてきました。自身の演奏会のみならず、『猫のしっぽ カエルの手』『やまと尼寺 精進日記』など、NHKの人気ドキュメンタリー番組の音楽を数多く作曲するなど、多忙な日々を送る川上さんの朝は、「目覚めたときに、今日のわたしは誰かな?」という問いから始まるといいます。そして、その日の自分に合せて、ストックしたさまざまなお茶やハーブ類を「処方」するのだそう。

風や光、木々などの自然も、人々の営みも、すべて「音」として感じる才能を持つ川上さんにとって、その日最初のお茶もまた音へと繋がる自然の一部にほかなりません。日本茶も何種類かストック。ともかくお茶なしの生活は考えられないといいます。

右/世界各地で求めてきたハーブをお茶に。この日はチリに行ったときに見つけたフロールデハマイカを、ドイツに住んでいたときに知り合いのおばあさまからいただいたティーカップで。左/1日のお茶の時間には日本茶もよく登場する。濃いめに淹れるのが川上さんのお好みだとか。
右/世界各地で求めてきたハーブをお茶に。この日はチリに行ったときに見つけたフロールデハマイカを、ドイツに住んでいたときに知り合いのおばあさまからいただいたティーカップで。左/1日のお茶の時間には日本茶もよく登場する。濃いめに淹れるのが川上さんのお好みだとか。

また、演奏旅行などでいろいろな国へ足を運ぶ川上さんが、行く先々で必ず探して求めるのが、その土地の自然の恵みを象徴する「ハーブと塩」。スペインのご自宅があるガリシア州はケルト文化圏で、薬草が日常に溶け込んでいて、さまざまなハーブをブレンドして飲む習慣があるのだとか。川上さんもその日の気分によって、手元にストックするさまざまなハーブをストレートティーで飲んだり、ブレンドしたりしてきたのだそうです。

「今は世界中を旅するのが難しい時期ですから、お茶を飲みながら、そのお茶ゆかりの地を旅するような気分になったり。多いときは1日10時間ほどピアノに向かっているので、気持ちを切り替えるティータイムはとても重要。1日中何か飲んでいますね」

左/近所の下御霊神社へお参りし、神様に手を合せる。右/下御霊神社の湧き水「御霊水」を汲み、お茶を淹れる。
左/近所の下御霊神社へお参りし、神様に手を合せる。右/下御霊神社の湧き水「御霊水」を汲み、お茶を淹れる。

お茶を淹れるための水も吟味し、「京都は湧き水も多いので水は汲みに行きます。近所の下御霊(しもごりょう)神社には、昔からの霊水が湧いているので、いつも本殿で手を合せてその水をいただいてくるんです」。川上さんの創作への感性は、1日の始まりのお茶とともに豊かに羽ばたきを始めるようです。

「起きたらまず、電気ケトルとラジオをオン!
淹れたてのお茶を飲みながら朝の支度をします」

ラジオ番組制作ディレクター 山本八重子さん

ラジオ番組制作ディレクター 山本八重子さん

やまもとやえこ
やまもとやえこ/ラジオ番組制作ディレクター。「Octette株式会社」代表。同志社大学卒業後「エフエム京都」のラジオ番組制作会社へ。インターンを経て、この道一筋。現在、手がけている番組は「ナガオカケンメイのLONG LIFE DESIGN RADIO」(毎週日曜18:00~19:00)、「ENERGY FLOW」(DJ・谷口キヨコ。毎週土曜19:30~20:00)など。

中学1年生と小学5年生の2児の母でもある山本八重子さんの1日は、お弁当づくりから始まります。

「目が覚めたら、まず電気ケトルとラジオのスイッチを入れ、エプロンを着けるのがルーティン。そこから怒涛の朝の準備です」と山本さん。

お湯が沸いたら、お茶を淹れます。気分も口もさっぱりとさせてくれる煎茶が好み。急須からマグカップになみなみと注ぐのは、忙しい合間に片手に持って、好きなときに飲めるからです。お弁当ができたら、朝ごはん。子どもたちと夫を見送り、ほっと一息ついて、2煎目のお茶をいただきながら、新聞を読んだり、昨晩書いたラジオ原稿のチェックをしたり……というのが、一連の流れです。

「座ってお茶を飲むこのひとときは、リラックスしつつも、緊張感のある、仕事の整理時間なのです。資料を見ながら、メモを取ることも多いですね。いろんな事柄をつむぎ合せるようなイメージです」

1本のラジオ番組をつくるためのディレクターの仕事は、企画・スケジューリング・取材・原稿作成・選曲・収録・編集など、多岐にわたります。現在、山本さんが手がけているラジオ番組のひとつ、エフエム京都「LONG LIFE DESIGN RADIO」は、さまざまな業種の京都人をゲストに迎えるという趣向。この予習の朝茶の時間が非常に大切なことは、想像に難くありません。

写真上/「エフエム京都 α-STATION」での仕事風景。左下/湯呑が好きで集めているそう。青海波模様の「開化堂」の茶筒は結婚祝いにもらったもの。右下/京都・西陣にある「金谷正廣」の真盛豆は、お気に入りのお茶菓子のひとつ。「青海苔の風味がたまりません」と山本さん。
写真上/「エフエム京都 α-STATION」での仕事風景。左下/湯呑が好きで集めているそう。青海波模様の「開化堂」の茶筒は結婚祝いにもらったもの。右下/京都・西陣にある「金谷正廣」の真盛豆は、お気に入りのお茶菓子のひとつ。「青海苔の風味がたまりません」と山本さん。

ちなみに山本さんは、ラジオ局などの現場にも保温ボトルに入れたお茶を持参します。

「コーヒーは、コーヒーショップやコンビニエンスストアなどでテイクアウトできますが、急須で淹れた熱いお茶はなかなか買えないので、自分の好みのお茶を淹れて仕事中にも飲みたいんです」

さらに、「お茶がこんなに好きになったのは、同居している義理の母の影響もあります。わざわざ『飲む?』と聞かずに、何もいわなくても、スッとお茶を出してくれる人で。それが、いいなと思いました。お茶が暮らしの中に溶け込んでいる環境に、私が入り込んだ、という感じですね」とも話します。

朝から晩まで、山本さんの1日に、ラジオとお茶は欠かせません。

おわりに

朝の忙しい時間でも、お茶を淹れて飲むことが欠かせないという3人。毎日が充実している様子がお話しから伝わってきます。日々を元気に過ごすために、朝のお茶を取り入れてみてはいかがでしょうか。

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お茶に癒される理由は香りにあり! テアニン研究の第一人者が徹底解説

(写真 津久井珠美/文 ふくいひろこ・市野亜由美)

planmake_hagiri

企画・構成=羽切友希
はぎりゆき●月刊『茶の間』編集部員。ちびまる子ちゃんが好きな静岡県出身。小さい頃は茶畑の近くで育ち、茶畑を駆け抜けたのはよき思い出。お茶はやっぱり渋めが好き。