香る、甘い味わい…! 今話題の「和紅茶」について専門店に聞きました

近年、注目が集まっている和紅茶(国産紅茶)。日本で育った茶葉を使い、日本の気候で発酵させた紅茶を指します。香りや味わいは外国産のものとどう違うのか、その特徴と魅力を京都で紅茶専門店を営む中嶋勇介さんに教えてもらいました。

紅茶専門店 一怜縁オーナー 中嶋勇介さん
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紅茶専門店 一怜縁オーナー
中嶋勇介さん

滋賀県出身。大学時代を京都で過ごし、独自の喫茶文化に魅せられる。紅茶、スコーン、クロテッドクリームのマリアージュに感動したことがきっかけで、2018年京都御所南に紅茶専門店をオープン。

今、日本でつくられている〝和紅茶〟がとにかく面白い

紅茶専門店 一怜縁オーナー 中嶋勇介さん

和紅茶と海外産の違いは、日本人の感性に響く繊細さ!

紅茶に祈りを捧げるような姿で香りを嗅いでいるのは、京都で紅茶専門店「一怜縁(いちれいえん)」を営む中嶋勇介さん。

「紅茶は香りが命です。まず香りを確かめてから、次に味を確認します」。中嶋さんは、まだ見ぬおいしい紅茶を求めて、日々、紅茶を試飲します。それでも「これは」と思えるような紅茶に出合えるのは、百にひとつほどの確率なのだとか。

中嶋さんが紅茶に魅せられるようになったのは、大学卒業後、2年ほど勤めていた会社を辞めてから。

「ある日、紅茶好きの両親が紅茶を買ってきてくれたんです。サクサクのスコーンにねっとりとしたクロテッドクリームをつけて食べ、そのあと紅茶を飲んだときに〝ああ、とても幸せだな〟と感じました」

その後、紅茶について勉強する中で出合ったのが「和紅茶」でした。

「紅茶はアッサムやダージリンなど海外産が主流だと思っていたので、日本産の紅茶があることに驚きました。いくつか試飲する中、海外の紅茶とは違う日本人の心に訴えかけてくる繊細な味わいに魅かれました」

紅茶専門店 一怜縁オーナー 中嶋勇介さん

日本産の紅茶が注目され始めたのは、じつは約20年ほど前から。地酒や地ビールのように、当初は「地紅茶」と呼ばれていました。その土地特有の香りをもち、苦みや渋みが少なく、甘みを感じさせる国産の紅茶は、それまで紅茶が苦手だと思っていた人を中心に人気になります。また「面白そうだから挑戦してみたい」という理由から、紅茶をつくる生産者も増えていきます。「国産紅茶」「地紅茶」「和紅茶」など、その呼び方はさまざまですが、国産の紅茶をつくる生産地は、今では全国で約七百箇所以上にものぼります。

「基本的に、海外産の紅茶も国産の紅茶も製茶工程は同じです。ただ技術的な面で、同じ茶葉を使っても、味や香りに決定的な差が出ると聞いています」と中嶋さんは言います。

和紅茶の 製茶工程

和紅茶の魅力、それは成長性と多彩さ!

インド産(ダージリン)紅茶
ダージリンのファーストフラッシュ(一番茶)。茶葉はやや細かく、花のような豊かな香りと爽やかな味わいが特長。ミルクティーにして楽しみたいときはこちらがおすすめ。

「華やかでグラマラスな〝香り〟が重視される海外の紅茶に比べて、和紅茶は香りはもちろん〝味〟にもこだわりを感じます」と中嶋さん。同じ茶の木からつくられた紅茶であっても、風土や品種、つくり手の感覚によって、違うものができあがるといいます。

「海外の紅茶は、砂糖やミルクを入れて楽しむためか、香りや味にパンチが効いたものが多いです。スパイスが効いたカレーなどとは相性がよいのですが、日本食とは合せにくいと思います。一方、日本の紅茶は、甘いのに渋い、苦いのに旨い、というお茶自体の複雑な味わいが魅力で、日本の食事ともよく合います。これまで日本茶をつくってきた生産者の方々の技術や感性が紅茶に受け継がれていると感じています」

宮崎県産紅茶
ジャスミン茶のような香りが、ほかの和紅茶と一線を画す、中嶋さんイチオシの宮崎県産の紅茶。リーフは大ぶりで、冷めるほどに甘みを感じさせ、最後まで飽きさせない。

中嶋さんのお店では、3種類の海外産紅茶のほか、土地ごとに味も香りも異なる和紅茶を常時五種類ほど揃えています。

「産地は、関東から九州までさまざま。今、一番のおすすめは、宮崎県産の紅茶ですね。花のような華やかな香りが楽しめます。緑茶はやはり京都府や静岡県のブランドが強いですが、紅茶となると九州のブランドが強い印象があります」

また、和紅茶の一番の魅力は「成長性と多彩さ」にあるといいます。 「日本の紅茶は、ある程度成熟してきていますが、まだまだ発展途上です。日本人は研究家気質の方が多いので、これからすごい紅茶が出てくる期待感がありますね。日本で紅茶をつくる方も年々増えてきていますし、そのあくなき探究精神によって出てくるであろう新しい価値観や、もはや作品といってもいいくらいの紅茶が出てくるのではないかとワクワクしています」つくる場所、つくる人によってまったく異なる紅茶ができあがる。その多彩さも和紅茶の特長です。

おすすめの飲み方はストレート! 茶葉の味を楽しもう

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旨みや甘みが特長の和紅茶は、その繊細な味を楽しむために、砂糖やミルクは入れずにストレートで楽しむのがおすすめです。

「私の店では和紅茶の繊細な香りも楽しんでいただきたいので、ストレートでお出ししています。ぜひ香りと味を感じてください」

そんな中嶋さんに、おいしい淹れ方を聞いてみました。

「基本的には、購入したときについてくるレシピ通りに淹れるのが一番ですが、茶葉の状態をしっかりと見ることが大切です。茶葉が大きければ少し時間をかけて、茶葉が細かい場合は、短時間で抽出すれば、渋みが抑えられ、旨みがわかりやすくなります。また湯温にも注目してください。私は、湯温は95度くらいで約四分ほど抽出します。湯温が高いほど渋みも出るので、甘い味が好みの方は、お湯を少し冷まして80度くらいで約五分ほどじっくり抽出するとよいでしょう」

また、お茶のおともに欠かせないのがお菓子。中嶋さんは、独学でお菓子づくりを学び、和紅茶に合うスコーンを生み出しました。

「和紅茶は和菓子とも相性がよいので、お店では、小麦粉に古代米の米粉をブレンドしてつくったスコーンをお出ししています。ふっくらともちもちとしていて、パンに近い食感ですね。このスコーンに、オリジナルのクロテッドクリームとはち蜜を少したらせば、和紅茶の味を引き立てる最高のマリアージュをお楽しみいただけます」

和紅茶を愛する中嶋さんこだわりの紅茶とスコーンを、ギャラリーのような空間で味わう、とても贅沢なお茶体験でした。

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紅茶専門店 一怜縁 いちれいえん

【住所】 京都市中京区東九軒町332西側
【電話】 080-7744-9343
【営業時間】 ティータイム12:00~20:00(金曜は17:00~20:00)
BARタイム17:00~22:00
【定休日】 火曜
【HP】 http://www.eonet.ne.jp/~ichireien/

今話題沸騰のお茶「和紅茶」。かつては「地紅茶」や「国産紅茶」とも呼ばれていました。

日本で栽培された茶葉から生まれる和紅茶は、風土や品種、つくり手の感覚によって、

外国のものとは違った香りや旨み、甘みが特長だと教えてくれました。

日本人の感性にあった「和紅茶」で安らぎのお茶時間をお楽しみください。

(文/大村沙耶 写真/福尾行洋)

企画・構成=大村沙耶
おおむらさや●月刊『茶の間」編集部員。福岡県北九州市出身。休日は、茶道や着付けのお稽古、キャンプや登山に明け暮れる。ミーハーだけど、伝統文化と自然を愛する超ポジティブ人間。