
刀を急須に持ち替えて。なりきり侍が今、メディアで注目の的!
京都で行なわれた「お茶の京都博」をはじめ、日本茶の新たな魅力、新たな楽しみ方を提案する取り組みが各地に広がっています。そんな中、宇治茶の産地・京都府でひときわ注目を集めるのが、“サムライ茶人”として活動する岩本博義さん。彼が思う日本茶の魅力、可能性、そしてこれからとは…。その思いを聞いてきました。
世界に知られるフレアバーテンダー・岩本さんはなぜ日本茶を…?
ピシッと決まった袴姿、頭にはちょっぴりコミカルなちょんまげ、目の前に用意されたのはカクテルのシェーカーや急須。そして、お客さんの前で始まったのは…。
岩本さん演じるサムライ茶人のデビューは2017年4月のお茶の京都博・さくら茶会でのこと。ボトルやシェーカーを空中に投げたり、キャッチしたりする華麗な技にお客さんの歓声が上がります。しかし、出来上がったのはカクテルではなくお茶。サムライ茶人は、パフォーマンスを通じて、日本茶の魅力を知ってほしいと、世界に知られるフレアバーテンダー・岩本さんが生み出しました。
「前から日本茶でのショーを漠然と考えていたのですが、2020年東京オリンピックのニュースを聞いたとき、海外の方の前で日本茶のパフォーマンスをしたいと思い、形にしようと始めたんです」
そうして、まずは日本茶インストラクターの資格を取得。知識に基づいたアイディアを形にしていきます。
しかし、お茶は茶種によって湯温やお湯の量が違ったりと、パフォーマンスを考える中で、制約も多くあります。
「制約の中で何ができるかを考えるのが面白いんです。春は茶種による淹れ方の違いを見せたので、夏は冷茶…と四季を表現しながら提案したいですね。英語バージョンもつくったり、今はやりたいことができている手応えがあります」
岩本さんと話していて驚くのが、そのバイタリティーに富んだ行動力。ショーをつくる一方で、庭に茶の木を植えたり、手揉み製茶を勉強したり、自作の焙じ茶をつくったり…。お茶のことなら何でもやってみたいといいます。

サムライ茶人のスゴ技、1・2・3!
取材時に岩本さんにパフォーマンスをお願いすると快く見せてくれました。ボトルやシェーカーなどを用いたパフォーマンスによってカクテルをつくるフレアバーテンダーの技術と日本茶の知識を融合させた日本茶パフォーマンス。湯を冷まして、注いで、淹れるという一連の動作をさまざまな茶種で一度に行なうことで、一煎の量や色を視覚的に感じてもらうことができるのだそう。


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「私が目指すのは、全方位からのアプローチです。日本茶ってこんなに面白いのに、なんでみんなは興味ないんだろうって思うんですよ。それはお茶に魅力がないんじゃなくて、提案の仕方の問題だと思うんです」
お茶にはつくる人、売る人…とさまざまなプロがいます。その中で、お茶を〝魅せる〟プロを目指すと言う岩本さん。ショーというエンターテイメントで、どのように日本茶を魅せてくれるのか。今後の岩本さんの活躍に目が離せません。
(写真 福尾行洋)

岩本博義さん
いわもとひろよし●フレアバーテンダーとして全国各地でカクテルショーを行なう一方、日本茶インストラクターの資格を取得し、サムライ茶人として日本茶のパフォーマンスを始める。サムライ茶人の動く動画はHPから見られます。
http://iwamoto-hiroyoshi.com

取材・文=米村めぐみ
よねむらめぐみ●月刊『茶の間」編集部員。出社したらまずはお茶!仕事中はお茶ばかり飲んでいるといっても過言ではないほど、日本茶が好き。作家ものの湯呑など、うつわあつめが趣味。おいしい茶菓子にも目がありません。