お茶好き3人に聞いた!新茶に合うご飯やお菓子、そして楽しみ方

一年に一度、初夏に味わえる爽やかな新茶。そのままでも十分においしい新茶ですが、春らしいご飯やお菓子と合せてよりおいしく楽しむペアリングに挑戦したり、うつわと一緒に楽しんだり、色を愛でたり……。多彩な分野で活躍する才気あふれる3人に、新茶の魅力をお聞きしました!

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その1 文筆家 かがたに のりこさん

その1 文筆家 かがたに のりこさん

「やさしい甘さの〝あんこ〟に寄り添う、新茶の爽やかな味は格別です」

「やさしい甘さの〝あんこ〟に寄り添う、新茶の爽やかな味は格別です」

かがたにのりこさん
かがたにのりこさん/「あんこ熱愛ライター」として、さまざまな媒体で「あんこ」について執筆中。また、イベントにも登壇し、あんこの魅力を発信している。

「1日1あんこ」を公言し、「あんこのことならこの人に!」と多方面で活躍中のかがたにのりこさん。外出するときは、「ポーチに小さめサイズの羊羹を1本入れてお出かけする」そうで、〝あんこ〟は、かがたにさんにとってなくてはならない存在です。

さらに、「毎朝、食事のとき、仕事中と、日々欠かさずにお茶を飲んでいます。新茶の時期は本当に楽しみです」。そんなかがたにさんに「新茶に合うあんこ」を見立ててもらいました。

「まず大切にしたいのが、新茶ならではの青々とした風味。この味わいに寄り添う、やさしいあんこが好みです」と、紹介してくれたのが羊羹です。

「寒天であんこを寄せた羊羹は、糖度は高いのですが、口に入れたときの香りと甘さの広がり方が穏やかでマイルド。ゆっくりと浸透していく風味が、新茶の繊細な味を邪魔しません」

小豆を寒天で固めた琥珀も新茶との相性抜群。お茶時間が楽しくなる、おしゃれな茶器やうつわは、かがたにさんの私物。
小豆を寒天で固めた琥珀も新茶との相性抜群。お茶時間が楽しくなる、おしゃれな茶器やうつわは、かがたにさんの私物。

最近では、イチゴや柑橘類などを混ぜ込んだ羊羹も市販されており、「あんこと酸味は相性がよいんです。果物の爽やかな甘酸っぱさが、新茶と合いますよ」

羊羹以外を新茶のおともにする場合は、「粒あんよりも、こしあんのお菓子を。小豆は皮の方が香りが強く、粒あんは濃厚な味がします。こしあんは、さらりとしているので、お茶の風味も楽しめます」と選び方のポイントも。

また、自宅であんこを炊く場合には、「下茹での際、数回水にさらして、灰汁(あく)を抜くこと。できれば甘さは控えめに。これなら粒あんでも新茶に合います。ちなみに、あんこの仕上げにレモンの皮をパラパラッとかけて酸味を添えると、初夏らしい味わいに仕上がります。新茶のお茶請け選びの参考にしてください」

羊羹
羊羹といえば、大きく厚めに切り分けるイメージですが……。かがたにさんは、ダイス状にカットしたり、型抜きをして楽しんでいるそう。「小さめだから口が甘くなりすぎず、新茶のおいしさも存分に感じられます」。

その2 芸術家 ダイモンナオさん

その2 芸術家 ダイモンナオさん

「新茶の摘みたての芽吹きの色に惹かれます」

「新茶の摘みたての芽吹きの色に惹かれます」

ダイモンナオさん
ダイモンナオさん/2008年よりイラストレーターとして活動。「ボローニャ国際絵本原画展 入選(2014年)」ほか受賞歴多数。書籍や雑誌の装画・挿絵、WEBやパッケージなどを手がける。http://www.daimon-nao.com 【草と本】https://kusatohon.com

草や木々、山、海、川、地面を覆う芝、また身近な台所道具や飼っているうさぎ……。イラストレーター・ダイモンナオさんの作品は、モチーフへのやわらかな眼差しが印象的。シンプルで力強くありつつ、温かみが感じられます。

「お仕事ではいろいろな題材を描きますが、きらびやかな花より、緑や草が好きなんです」と話すダイモンさん。取材が行なわれた場所「草と本」は、ダイモンさんが2020年8月にオープンした西陣の町家を改修した宿泊施設。自身のアトリエスペースを併設したこちらには、先ほどの言葉を裏付けるように、あちこちにグリーンが置かれています。

「緑の茶器」「海辺の道」
左から「緑の茶器」「海辺の道」。えんぴつ、アクリル絵の具、オイルパステルなどを使ったダイモンさんのやわらかなタッチのイラストは、お菓子などのパッケージにも使われている。

そんなダイモンさんが新茶を好きな理由は「私は初夏や芽吹き、黄緑色のものに魅力を感じるので、爽やかな色に惹かれます」とのこと。

仕事をするときには必ず飲み物を傍らに置いているというダイモンさん。普段のお茶もお気に入りのうつわを気分に合せて使うなど楽しみますが、新茶は特別だそうです。

「きちんと手を止め、落ち着いて淹れなくては。繊細な味を楽しまないと」と力説します。

「まさしく摘みたての、ほんの短い間だけの、フレッシュな味・香り・色をいただけるわけですから、巡り合えたら、逃したくないですよね」

古い町家を改修したアトリエの空気感・木の香りなどとともに、こうした季節の細やかなできごとがすっと溶け込み、ダイモンさんの創作に彩りを与えてくれているのでしょう。

ダイモンさんのうつわコレクション
ダイモンさんのうつわコレクション。湯呑などのうつわは、そのときどきでひとつずつ、気に入ったものを買い集めるのだとか。

その3 料理人 桝村浩史さん

その3 料理人 桝村浩史さん

「新茶は軽やかな苦味があるから味のバランスが整います」

「新茶は軽やかな苦味があるから味のバランスが整います」

ティーペアリング(1,980円)は、前菜からメインまでの間に、煎茶や玉露など4種の日本茶を提供。
ティーペアリング(1,980円)は、前菜からメインまでの間に、煎茶や玉露など4種の日本茶を提供。

四条烏丸にあるフレンチレストラン「hidamarino(ヒダマリノ)」のシェフ、桝村浩史さんは、茶道のお稽古経験があり、日本茶の素晴らしさに心惹かれた1人。

「私は、『甘味・塩味・酸味・苦味・うま味』の五味のバランスが取れた味を目指しています。ところが、料理にあまりないのが『苦味』。お茶の渋さや苦さを合せてあげることで、より奥行きのある味わいに整えることができるんです」

特に、旬を大切にする料理において、新茶の清涼感ある風味は、大切にしたい味わいなのだそう。

「春野菜を代表するホワイトアスパラガスなど、爽やかで軽い苦味のある素材とのペアリングがおすすめです」と桝村さん。

お店では、アスパラガスをソテーし、その上に生ハム、ストロベリートマトなどをのせて、甘い、塩っぱい、酸っぱいを料理でつくり、そこに新茶を添えることで軽やかな苦味を加えて、一皿の味わいが完成します。

左/森の中の隠れ家レストランのような外観が目印。<br>右/ティーペアリングでは料理の温度帯に合せて、日本茶の温度も変化させている。昼・夜ともにコース料理のみの提供。来店の際はなるべくご予約を。
左/森の中の隠れ家レストランのような外観が目印。
右/ティーペアリングでは料理の温度帯に合せて、日本茶の温度も変化させている。昼・夜ともにコース料理のみの提供。来店の際はなるべくご予約を。

また、グラスに入ったアスパラガスのムースは、あおさのりのジュレがポイントです。

「新茶の風味には、ミネラル感のある食べ物がよく合うので、海藻類とのマリアージュもいいですね」

家庭で料理とペアリングする際には、ちょっとしたポイントがあるそう。

「新茶の爽やかな苦味と、山菜や菜の花など春野菜の苦味とは合せやすいのでぜひ。旬の貝類などをプラスすると、より味に深みが出ます。若竹煮など、甘味と苦味、ワカメのミネラルが感じられる料理との相性は抜群です。味付けや素材選びのコツで、新茶をこれまで以上においしく楽しめますよ」

RESTAURANT hidamarinoの店内

RESTAURANT hidamarino

【住所】京都市下京区高倉通四条下ル高材木町218
【電話】075-365-5085
【営業時間】12:00 〜15:00(L.O13:00)※ランチは要予約。18:00〜21:00(L.O20:00)
【定休日】水曜 【HP】http://hidamarino.com

三者三様の新茶の楽しみ方、いかがだったでしょうか。期間限定だからこそ、新茶の香りと味わいは存分に楽しみたいもの。3人の方の新茶の楽しみ方を参考にしながら、ぜひ新茶でホッとひといき、リフレッシュしてくださいね。

(写真 武甕育子 津久井珠美/ 文 市野亜由美 岡田有貴)

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企画・構成=米村めぐみ
よねむらめぐみ●月刊『茶の間」編集部員。出社したらまずはお茶!仕事中はお茶ばかり飲んでいるといっても過言ではないほど、日本茶が好き。作家ものの湯呑など、うつわあつめが趣味。おいしい茶菓子にも目がありません。