京都・縁結びスポットに行くなら必読!名所に秘められた悲恋物語

京都に数多くある縁結びの名所。その歴史をひもとくと、切ないラブストーリーが隠されていました。悲恋が繰り返されないように…。坂本龍馬や紫式部、小野小町、彼らの願いが、恋愛成就のご利益につながっています。今も京都に伝わる、いにしえの恋物語をご紹介。

【貴船神社】
浮気した夫の愛を取り戻す、歌碑に秘められた和泉式部の思い

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平安時代、貴人を次々と虜にし、離婚や恋人との死別を経て再婚した和泉式部(いずみしきぶ)。
けれど永遠を誓ったはずの夫に浮気の疑いが……。
絶望した和泉式部は失意のうちに貴船神社を訪れます。

「これは今までの私への報いなのかしら。まるで体から魂が抜けてしまうよう……」

川のほとりで嘆き、想いを歌に詠んだ式部。すると、

「そんなに思い悩むとあなた自身が破滅してしまう、おやめなさい」と返す歌が。

それはあたたかな貴船明神の声でした。
そして式部はもう一度、夫と本物の愛を育もうと決意したのです。

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貴船神社

ご祭神に高龗神(たかおかすみのかみ)という水の神様を祀る貴船神社は、古くから「恋を祈る社」として名高い由緒ある神社です。名前の由来は諸説ありますが、「氣生根」と書いて「きふね」と読むことから、エネルギーが生じる根源の場として信仰を集めてきました。境内には縁結びの神「磐長姫命(いわながひめのみこと)」を祀る結社(ゆいのやしろ)があり、和泉式部の歌碑が佇みます。

【住所】京都市左京区鞍馬貴船町180
【電話】075-741-2016
【拝観時間】
本宮開門6:00〜18:00
授与所受付9:00〜17:00
【HP】http://kifunejinja.jp

【随心院】
あと一日で実らなかった悲恋。小野小町の百通い伝説

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平安京で評判の絶世の美女、小野小町(おののこまち)に恋した深草少将(ふかくさのしょうしょう)。
困惑した小町は、熱っぽく迫る少将へ試練を与えます。

「本当に私のことを想うのなら百日毎晩、私の元へ通ってください。

それができたら貴方の思いのままになりましょう」と。

一途な少将は雨の日も風の日も通い、小町は榧(かや)の実を糸でつないで少将の訪れた日を数えました。
いつしか少将を心待ちにしながら……。
しかし大雪が降った99日目の夜、少将は凍え死んでしまいました。
哀れに想った小町は榧の実を蒔き、少将の死を悼んだのです。

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随心院

京都市営地下鉄東西線・小野駅からほど近い隨心院は小野小町ゆかりの寺として知られています。西側には小町がお化粧をした「化粧(けわい)の井戸」、本堂の裏手には小町に寄せられた千通の手紙が埋められたと伝えられる「文塚」があります。訪れると恋愛成就や恋文上達の願いが叶うと伝えられ、女性に人気です。少将が通って来るたび小町が数えていた榧の実は、寺の周辺に蒔かれ、その一つが「西浦の小町榧」「小野葛籠尻町の榧」と呼ばれる大木となっています。

【住所】京都市山科区小野御霊町35
【電話】075-571-0025
【拝観時間】9:00〜16:30
【拝観料】大人500円、中学生300円
【HP】http://www.zuishinin.or.jp

【武信稲荷神社】
龍馬とおりょう、2人の絆を刻んだ縁の木

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江戸幕府から目をつけられ、命を狙われる身となった夫・坂本龍馬。
行方を知りたい、でも居場所がわかったらあの人に迷惑をかけるかもしれない。
途方に暮れるおりょうは、2人が逢瀬を重ねた神社の榎(えのき)の木を訪ね、
そっと樹皮を撫でてみました。
すると、龍馬の筆跡で新しく刻まれた「龍」の字があるではありませんか。
あの人は京都で生きている!
確信したおりょうは、待ち続け、龍馬と再会を果たすことができました。
榎は二人の愛のランドマークなのです。

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武信稲荷神社

榎は生命力が強く「縁の木」とも呼ばれています。武信稲荷神社の御神木は樹齢約850年の榎。二人にあやかり幹に手を当てて願うと、念願が叶うといわれており、訪れる人が絶えません。御神木の榎に宿る弁財天を祀る末社の「宮姫社」は縁結び、恋愛の神としても知られています。

【住所】京都市中京区今新在家西町38
【電話】075-841-3023
【拝観時間】授与所9:00〜18:00
【HP】https://takenobuinari.jp

【安井金比羅宮】
崇徳上皇と阿波内侍。時代が引き裂いた2人の悲劇

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平安の時代、崇徳(すとく)上皇は愛する阿波内侍(あわのないし)を、藤の花咲く寺に住まわせました。
お気に入りの藤の花と愛しい人。
しかし、皇位継承を争う保元(ほうげん)の乱で崇徳上皇は敗北。
二人は引き裂かれ、上皇は讃岐へと流されてしまいます。
失意にくれる阿波内侍。内侍は上皇の肖像を寺に安置し、世俗を断ち切り彼を思い続けたのです。

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安井金比羅宮

安井金比羅宮は、藤原鎌足が一堂を創建し、藤を植え藤寺としたことがはじまりです。後に、崇徳上皇が阿波内侍を住まわせますが、数奇な運命に翻弄され、二人は離ればなれに。主祭神となる崇徳上皇が流された讃岐(さぬき)の金刀比羅宮(ことひらぐう)で一切の欲を断ち切って参籠(さんろう)されたことから、断ち物の祈願所として今も信仰され続けています。

【住所】京都市東山区下弁天町70
【電話】075-561-5127
【拝観時間】授与所9:00~17:30
【HP】http://www.yasui-konpiragu.or.jp

【上賀茂神社】
紫式部が出会いを願った京都の古社

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宮仕えし、宮中では歌人として、源氏物語の作者として誉れ高い日々を過ごしているのに、満たされない紫式部(むらさきしきぶ)の心。
縁結びの神様がいる社に通い、まだ見ぬ未来の恋人を待ちわびていました。

「ほととぎす 声まつほどは 片岡の もりのしづくに 立ちやぬれまし」

(将来の結婚相手の声を待ちわびて、片岡の社の梢の下で朝霞の雫に濡れていましょう)

思わず詠んだ和歌に、紫式部の心が現れています。

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上賀茂神社

上賀茂神社の境内にたたずむ第一摂社、片山御子神社(かたやまみこじんじゃ)。祭神は玉依比売命(たまよりひめのみこと)で、縁結び、恋愛成就、子授かりのご利益があるといわれています。源氏物語の作者、紫式部が熱心に何度もお参りしたことでも知られ、絵馬には紫式部の姿と、彼女が読んだ和歌が描かれています。千年の歴史の中で女性に支持されてきた神様です。

【住所】京都市北区上賀茂本山339
【電話】075-781-0011
【参拝時間】5:30〜17:00
(楼門、授与所8:00〜、特別参拝10:00〜16:00)
【HP】https://www.kamigamojinja.jp

歴史に名を馳せる人物たちも、一つの恋に一喜一憂したのでしょうか。
恋愛成就や縁結びの名所に隠された恋物語に、人の営みの普遍さ、歴史の奥深さを感じます。

(文・黒岩美和/イラスト・瀬知エリカ)

 

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取材・文=羽切友希
はぎりゆき●月刊『茶の間』編集部員。ちびまる子ちゃんが好きな静岡県出身。小さい頃は茶畑の近くで育ち、茶畑を駆け抜けたのはよき思い出。お茶はやっぱり渋めが好き。