今、御朱印が密かなブームですが、京都でぜひ集めて欲しいのが、「都七福神めぐり」での御朱印。大きな色紙に7柱の神の御利益を集めることができ、とてもありがたいのです。古くから新年の開運を願って正月や松の内に行なわれてきた七福神めぐりですが、1ヵ月かけて密を避けながら、七福神の「福」にあやかってみませんか。
福徳・金運・長寿など、 この世のあらゆる幸せを、 七福神めぐりで、もれなく祈願!
七福神は、福をもたらす七柱の神様。お正月に宝船に乗った七福神の絵を飾ったり、正月2日に宝船の絵を枕の下に入れて寝ると縁起がよいとされたり、おめでたいお正月に縁の深い神様たちです。また、お正月に七福神めぐりをすると「七難即滅」「七福即生極まれり」ともされ、初詣の一環として、全国で七福神めぐりが行なわれています。
七福神めぐりは室町時代後期頃にはじまり、全国的に盛んになったのは江戸時代中頃からといわれますが、その発祥の地とされているのが京都。今は「都七福神」として、北は比叡山麓から南は宇治まで、京都を縦断するように、由緒ある七柱の神様をめぐることができます。
「都七福神」で人気なのは「大護符」。大型の色紙で、福禄寿神、大黒天、寿老神、ゑびす神、毘沙門天、弁財天、布袋尊の7つの御朱印をこれに集めると、いかにも霊験あらたか。1年間壁にかければ、七福神の福運をいつも感じることができます。なお、書きたての御朱印を乾かすために、各寺社にはドライヤーが用意されています。よく乾かし、また雨や雪に濡れないよう、大きな袋や風呂敷などを用意して、次の場所に向かいましょう。
例年は7ヵ所を1日でめぐる定期観光バスが1ヵ月間運行され、1月中はお正月気分で「都七福神」めぐりができます。月刊『茶の間』編集部でおすすめなのも、1ヵ月かけてじっくりとまわる「都七福神」めぐり。混雑を避けつつ、それぞれ見どころが多い寺社なので、先を急がずにじっくりと由緒を感じながら、今年の開運を願いたいものです。
比叡山麓の森閑とした境内で、幸福・高禄・長寿を願う
赤山禅院(せきざんぜんいん)は、平安京の東北、表鬼門となる比叡山麓に位置し、みやこの鎮守の役割をになう異色の寺院。中国の道教の神で万物の命運をつかさどる「赤山大明神(泰山府君)」を祀ります。延暦寺の塔頭で、住職は延暦寺の千日回峰行を満行した大阿闍梨様がつとめています。
赤山禅院の鳥居をくぐると、苔むした長い参道には「都七福神」ののぼりがはためいています。本殿を経て順路通りに進むと、境内の奥に福禄寿堂があり、七福神のひとり、福禄寿神が祀られています。おみくじを引いた人が残していった木製の「福禄寿お姿みくじ」がずらっと並んだ光景は壮観です。
福禄寿神は、長い頭と長いひげをたくわえて老人の姿をした中国由来の神様。福禄寿の名は、道教の理想「幸福」・「高禄」・「長寿」の三つの徳を備えていることに由来します。
「幸せで、お金に困らず、長生きする」。そんな理想を象徴した福禄寿のご利益のありがたさは、昔も今も変わりません。
洛北の緑豊かな境内は空気も澄み、深呼吸もしたいところ。ゆっくりと時間をとってお参りしたいスポットです。
赤山禅院
【住所】京都市左京区修学院開根坊町18
【電話】075-701-5181
【拝観時間】9:00〜16:30
【HP】http://www.sekizanzenin.com
五山送り火「妙・法」の山麓で都の鬼門を護る「大黒様」
「松ヶ崎大黒天」の名で親しまれる日蓮宗の妙円寺は、五山送り火の「妙・法」が点灯される松ヶ崎山の、「法」の字の真下にある江戸初期創建の寺院。北山通から入った参道の鳥居をくぐり、斜面か階段を登った上の小ぢんまりとした境内に、大黒天を祀る大黒堂があります。
大黒天は、頭巾をかぶり、大きな袋を背負い、打ち出の小槌を手に持って、米俵に乗る「大黒様」として親しまれていますが、本来はインド由来の神様です。慈愛同仁・福禄相に満ちた姿で、ご利益は「寿福円満」「開運招福」「商売繁盛」。また、京都の子丑(東北)の方角にあって表鬼門を護る福の神としての役割も果たしています。
大黒堂のご尊像は伝教大師作と伝わります。大黒堂前には「なで大黒」の石像があり、からだで気になる箇所をなでて祈願するとご利益があると人気です。
松ヶ崎大黒天
【住所】京都市左京区松ヶ崎東町31
【電話】075-781-5067
【拝観時間】9:00〜17:00
(御朱印受付は16:30まで)
【HP】http://matugasaki-daikokuten.net
寺町通の散策もしながら立ち寄って、不老長寿のご祈願を
「革堂(こうどう)」の名で親しまれる行願寺は平安初期に行円上人によって開かれ、西国三十三所の観音霊場にもなっている由緒ある天台宗寺院です。
かつて一条通にありましたが、豊臣秀吉の京都改造で、現在の寺町通に移動しました。「革堂」の名は、開基の行円上人が雌鹿を射止めて殺生したことを悔やみ、その皮を常に身につけていたことに由来します。
ここの境内のお堂に祀られるのが都七福神のひとりの寿老神。中国の道教由来の神様で、南極星の化身とされています。長いひげをたくわえた老人の姿で、お堂の外から仏師西村公朝氏による朱色の彫像を拝めます。不老長寿を始め、福財、子宝、諸病平癒などのご利益があります。
場所は美術骨董商やお茶の老舗が並ぶ寺町通沿いにあり、買い物や散策もできる好立地なので、お参り後の楽しみもあります。
革堂
【住所】京都市中京区寺町通
竹屋町上ル行願寺門前町17
【電話】075-211-2770
【拝観時間】8:00〜16:30
華やかな花街に囲まれ、 京の町の商売繁盛をつかさどる神様
祇園と宮川町の2つの花街に挟まれた一角にある京都ゑびす神社は、商売繁盛の守り神「京のえべっさん」として街の人に親しまれている神社。1月10日前後の「十日ゑびす大祭」は、福笹を求める人で賑わいます。
ここに祀られるゑびす神は、七福神のうち唯一、日本の神様で、風折烏帽子をかぶり、右手に釣り竿、左脇に鯛をかかえた姿をしています。漁業を好み、漁獲の物々交換で財を得られることから、大漁追福や商売繁盛のご利益で、今も人気です。
京都ゑびす神社
【住所】京都市東山区大和大路通四条下ル小松町125
【電話】075-525-0005
【拝観時間】9:00~17:00
【HP】http://www.kyoto-ebisu.jp
菅原道真公も祈願したという毘沙門天に、 知恵を授かる
東寺は平安遷都とともに建立された官寺。その後、弘法大師空海に託されて密教寺院に生まれ変わりました。
ここに伝わるのが、鎧を身にまとった兜跋毘沙門天です。もとは平安京の守護神として羅城門にあり、その後東寺の毘沙門堂へ。今は国宝となって宝物館に安置されています。
菅原道真も祈願したという毘沙門天は、弘法大師が入唐の際に感得されたもので、学業成就、安産のご利益があるとして信仰を集めています。
東寺
【住所】京都市南区九条町1番地
【電話】075-691-3325
【拝観時間】6:00〜17:00
【HP】http://www.toji.or.jp
琵琶をかかえた、七福神で唯一の美しい女神
六波羅蜜寺は、踊り念仏で知られる空也上人が平安時代に創建した歴史ある寺院。祇園に近い東山区の街中にあり、今も多くの信仰を集めています。
その入り口の護摩堂に祀られるのが弁財天。かつて崇徳(すとく)天皇が受けた夢のお告げにより禅海上人がつくったとされ、崇徳天皇の寵愛を受けた阿波の内侍の屋敷跡の十住心院にあったものが、明治の廃仏毀釈(はいぶつきしゃく)で六波羅蜜寺に遷座されたそうです。
弁財天はインド由来の神様で、琵琶をかかえた女性の姿。芸事の上達や金運財運のご利益があるとされています。六波羅蜜寺では、護摩堂のほかに、境内の一角に銭洗い弁財天の石像もあります。ザルに入れたお金に水をかけて蓄財するとご利益があるとか。また正月3が日は、皇服茶(おうぶくちゃ)がいただけ、護摩堂で弁財天吉祥稲穂が授与されるので、3が日のお参りもおすすめです。
六波羅蜜寺
【住所】京都市東山区五条通
大和大路上ル東
【電話】075-561-6980(代)
【拝観時間】8:00〜17:00
【HP】http://rokuhara.or.jp
ポッコリお腹に笑みを浮かべ、金色に輝く福々しい布袋様
都七福神では唯一、京都市を離れて宇治市にあるのが、黄檗山(おうばくさん)萬福寺の布袋尊です。萬福寺は江戸時代、中国の隠元禅師が来日して開創した寺院。広大な伽藍は、中国明代末期の様式を残しています。
金色に輝く布袋尊像をつくったのも中国から渡来の仏師。ポッコリお腹に満面の笑み、大袋を持った座像は、豪快かつ福々しいお姿です。布袋は弥勒菩薩の化身ともされ、萬福寺では弥勒菩薩と呼ばれています。
布袋は七福神では唯一、実在の人物がモデル。大きな袋を担いで行脚し、貧しい人に物を分け与えた契此(かいし)という高僧が「布袋」と呼ばれるようになったとか。その袋は感謝と慈悲で満たされ、福の神として信仰されるようになりました。
ここは伽藍も仏像も大きく開放的。異国に行った気分でおおらかな雰囲気に浸りたいものです。
萬福寺
【住所】宇治市五ヶ庄三番割34
【電話】0774-32-3900
【拝観時間】9:00〜17:00
(受付は16:30まで)
【拝観料】大人500円 小中学生300円
【HP】http://www.obakusan.or.jp
京都の都七福神めぐり、いかがだったでしょうか。昔からなじみのある七福神の御利益をたっぷりといただいて、晴れやかに新年のスタートを切りましょう!
(文 中岡ひろみ)
企画・構成=米村めぐみ
よねむらめぐみ●月刊『茶の間」編集部員。出社したらまずはお茶!仕事中はお茶ばかり飲んでいるといっても過言ではないほど、日本茶が好き。作家ものの湯呑など、うつわあつめが趣味。おいしい茶菓子にも目がありません。