外国人は日本茶の味ってわかるの? 2種類の緑茶を飲み比べてもらったら…

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“ YOUは何しに日本へ?” 外国人の日本茶事情は実は…

こんにちは、茶娘(真の姿は制作スタッフ)です! 今、日本の緑茶が世界的に高い評価を受け、消費がどんどん増えていることをご存知でしょうか。2013 年にユネスコ無形文化遺産に登録された、「和食」に合う飲み物として。あるいは、世界的なブームの先駆けであるアメリカのシリコンバレーやニューヨークの人たちに欠かせない、健康ドリンクとして。

近年では、アメリカのみならず、ヨーロッパやアジアへの、日本からの日本茶の輸出も絶好調だとか——。世界中で拡大している緑茶文化ですが、海外の人たちは本当に飲めるの? どんな味が好きなの? 調べてみたら、驚きの結果に…!

Which taste of Japanese green tea, do you like?
Which taste of Japanese green tea, do you like?

甘く、苦く。日本茶を好みの味わいにできる、淹れ方のコツは…

今、世界中でブームの日本茶。日本人は昔から“ 香甘苦渋(こうかんくじゅう)”(香り・甘み・苦み・渋みのバランス)という、繊細なお茶の味を嗜(たしな)んできましたが、海外の人たちはそうではありません。世界の人々は実際、日本茶の味をどう感じているのでしょう。 ギモンを探るため、実際に、外国人のみなさんに 2 種類のお茶を飲み比べてもらいました。

1 杯は、 甘みの強いかぶせ茶をベースに玉露を加えた茶葉を、水出ししてさらに甘みを強めたお茶。もう1 杯は、カテキン豊富な深蒸し茶の中でも最濃(さいのう)のブレンド茶葉を、熱出しして冷ましたお茶(一般に、湯温が高いと苦み(カテキン)が 強まり、湯温が低いと甘み(テアニン)が強まる)。甘苦 両 極の味わい、好みはどっちでしょう!?

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2018 年4 月某日、海外からの観光客が多く訪れる京都御苑(ぎょえん)周辺(敷地内には入っていません)で、ゲリラ的に、海外から来た観光客への直撃取材を独自に敢行! 前代未聞のアポなしインタビュー、 はたしてその結果は…。

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【写真左】エミリーさん イギリス 【写真右】デビッドさん(左) ドルさん(右) アメリカ

エミリーさん:
I love Japanese tea.
日本茶は好きよ。
法学系の大学院を卒業したばかり。イギリ スにも日本茶はあるし、 どっちの味も好き。
今の気分は苦い方かな。

茶娘:
おぉ…。1 人目から、思ったよりも日本茶ナイズされた答えが返ってきました。そのときの気分によってお茶を飲み分けるなんて、日本人より日本人らしい気がします。

デビッドさん:
Bitter one is too much,like punch in my face!
苦い方は顔にパンチされたくらい苦すぎるよ!
二人とも日本文化が大好きでね。今日は暑いから、甘いくらいの方が優 しくて喉を潤すのにちょうどいい。

茶娘:
自分の顔をパンチするジェスチャーをしながら、答えてくれました…。すごい表現ですね…。

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【写真左】デニスさん(左) トビアスさん(右) ドイツ 【写真右】ニゴさん(左) リーさん(右) イスラエル

トビアスさん:
Rather than sweet, it’s “umami” !
甘みというより、「旨み」だよね!
この味わいは「旨み」と表すのが正しいね。 好きな味だ。ドイツでは甘い飲み物が主流なのさ。

茶娘:
なんと! 海外の方にわかりやすいよう「甘い」お茶として取材していましたが、むしろ訂正されちゃいました。恐るべし外国人の味覚、恐るべし日本茶の普及っぷり。

ニゴさん:
We drink more sweet.
イスラエルではもっと甘い飲み物を飲むよ。
俺たちにとっちゃそんなに甘くないがね。今、世界中を旅している途中なんだが、お茶に力をもらえたよ。

茶娘:
海の向こうには、いろんな飲み物に砂糖を入れるのがベーシックな国々も存在すると聞いたことがありましたが、中東に位置するイスラエルも、そのようです。

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そのほかにも、ハネムーンで日本を訪れるカップルや、家族で訪れる人たちに突撃取材していきました。
カップルの間でも意見が割れたり、やっぱり「“ 甘み” ではなくて“ 旨み” と表現したらどう?」と指摘しれくれたり。「日本茶は初めて飲んだけれど、おいしいのね」「甘いほうは物足りないから、苦いほうに一票だね」「これ、アイスグリーンティーだよね、知っているよ!」といった回答も、印象的でした。

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なんとなく、甘いほうが優勢な印象。「苦いほうはパンチがありすぎるね」という声もあるところをみると、海外では苦い・渋い日本茶に似た味の飲み物を飲む文化が、あまりないようです。そんななか「苦いほうが、ブラックコーヒーが好きな私好みよ」という女性も。ビターなコーヒー派の人は、ビターなお茶も好みなようです。
それにしても、一様に、「飲めないよ!」なんて拒絶する人がいないこと自体に驚きました。もちろん、キュートな赤ちゃんは飲めませんけれど。

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【調査結果】

〇〇な味が高評価を得る、意外な調査結果になった

事前のたび重なる試飲で、ちょっぴり不安だった取材班。日本人 でも難しいのに、外国人にお茶の味を飲み分ける「利(き)き茶」 ができるのか? でも、結果はと ても興味深いものになりました。予想以上に多様な国籍の外国人が集まった中、なんとほとんどが〈 甘い〉方に一票! “飲みやすい” の声が多かった一方で、“ 日頃から甘い飲み物に親しんでいるから” という、お国柄の色濃い声も印象的でした。

一番驚いたのが、複数の人が “ 味” を再定義してくれたこと。「苦みよりも、astringent(アストリンジェント)(=渋み)だね」。
—— そう、少なくとも日本 好きの外国人は、見事に利き茶を してみせたのです! また、単純な甘さを好みがちと思い、外国人向けにsweet(スウィート)と表現したつもりで したが、うれしい誤算。「この味は、 あのumami(ウマミ)だね!」。旨みは今や、 世界共通語になっていたのです。

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うれしいことに、「日本(茶)大好き!」とフランクに応じてくれた外国人のみなさん。欧米や東南アジア、南米、中東などの世界 10 ヵ国、計31 人。取材を通じて、 日本文化の水準と、 世界からの認知度の高さを実感しました。
ちなみに〈苦い〉派の多くは、普段から日本茶に親しんでいると回答。もしやパンチのあるお茶は、ツウ好み!?まだまだ検証の余地がありそうな、お茶の突撃取材。今後も調査を続けていきますので、ご期待ください!

外国人が好きなお茶のフレーバーが、なんとなく見えてきました。もし彼らを急須茶でおもてなしする機会があったら、参考にしてみてください。あるいは、直接、好みを聞いてみるのもいいかもしれません。意外に日本茶好き、日本文化好きなのですから。“ クールジャパン” が世界に浸透している証ですね。

ちなみにこの格好で街頭取材をしていると、海外の人たちのほうから“ 写真撮ってよ! ” と興味津々で近づいてきてくれました。ですので、続けていきます、“ なんちゃって茶娘”

調査の様子の動画はこちら!

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取材・文=田中美鶴
たなかみつる●月刊『茶の間」デザイン部員。宮崎県出身、6 人兄姉の(他称)しっかり者。おもに茶娘姿にふんし、外国人や子どもへの取材・イベントを担当し始めてから、茶農家に嫁ぐのもよいかもと思い始めました。