写真家おすすめ! 初夏が一番美しい新緑の京都、絶景スポット5選

京都といえば春の桜や秋の紅葉も人気ですが、知られざる初夏の美しい風景をご存じですか。京都の風景を撮り続ける写真家の中田昭さんは「水が豊かな土地ほど新緑は青く色鮮やかになります。水の都・京都には青もみじの絶景がたくさん」と言います。京都ツウの写真家がこっそり教える名所をご紹介。

常寂光寺
写真家 中田昭さん

●教えてくれた人
写真家 中田 昭さん

京都市生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒業。「京文化」をテーマに、風景・庭園・祭りなどの撮影を続ける。『・京・瞬・歓・』(京都新聞出版センター)、『日本の庭 京都』(パイインターナショナル)をはじめ、多くの写真集を出版している。

毘沙門堂

朱の伽藍に映える緑は、今が一番美しいとき!

毘沙門堂

「朱色の伽藍(がらん)と、瑞々しい新緑のコントラスト。まさに、この季節だけ見ることができる絶景です」と中田昭さん。

七福神の一人、毘沙門天(びしゃもんてん)を祀る天台宗の寺院・毘沙門堂は、京都市の東部、山科の地に、静かにたたずむお寺です。山腹にあり、豊かな緑に囲まれた境内には、寺院には珍しい鮮やかな朱色の伽藍が並びます。

「朱色の赤と緑は補色の関係にあるので、並べると色の鮮やかさが強調されるんです。新緑がより引き立って、輝いて見えますね」

毘沙門堂門跡

【住所】京都市山科区安朱稲荷山町18
【電話】075-581-0328
【HP】http://bishamon.or.jp

常寂光寺

自然の条件と人の手によって生み出される奇跡の風景!

常寂光寺

見上げれば青々と茂るもみじ、下を見ればしっとりと艶めく苔の絨毯。360度、緑の世界が広がる常寂光寺。

「美しい苔が育つには、適度な日当たりが必要なんです。これだけ見事な苔が一面を覆う景色は、実は珍しいんです」

そして、美しい庭や境内は、必ず人によって細やかに手入れされているのをファインダー越しに感じるという中田さん。

「毎日、お寺の方が手入れされているからこそ、ここまで美しい」

苔が艶めく、雨上がりが特におすすめだそう。

常寂光寺

【住所】京都市右京区嵯峨小倉山小倉町3
【電話】075-861-0435
【HP】https://www.jojakko-ji.or.jp

圓光寺

撮影スポット満載! 水辺ではモネ風にパチリ!

圓光寺
圓光寺

京都市左京区にあるもみじの名所、圓光寺。

見所が多い境内で、中田さんがすすめるのが池泉回遊式庭園「十牛之庭(じゅうぎゅうのにわ)」です。牛を追う牧童の様子が描かれた「十牛図」を題材に造られた庭は、もみじの葉が茂り、苔が一面に広がります。

「庭園の南側には洛北最古の泉水、栖龍池(せいりゅうち)があります。緑の生命力にあふれた庭を歩くと、生命の源、水の豊かさを感じます。水辺で撮る青もみじもひと味違う趣向があって好きですね。波紋を活かすと、まるでモネの『水蓮』のような雰囲気の写真が撮れますよ」

「十牛之庭」を散策していると、みずみずしい苔の中に、ちょこんとたたずむお地蔵様が。やわらかなまなざしで見つめる先には何があるのか、そんな想像をかき立てる写真をパチリ。

「圓光寺は、撮影スポットがたくさんあって、場所によって雰囲気の違う写真がたくさん撮れます。この時季は何度でも訪れたいですね」

圓光寺

【住所】京都市左京区一乗寺小谷町13
【電話】075-781-8025
【HP】https://www.enkouji.jp

宝泉院

映画のスクリーンの前にいるかのような気持ちにさせる、 色鮮やかな生命たち

宝泉院

約800年の歴史を持つ宝泉院は、天台宗が栄えた左京区・大原にある中心的な寺院。山門から入ると、樹齢700年の五葉松が出迎えてくれます。

初夏に特に美しい姿を見せるのは、梁によって切り取られているかのように錯覚する庭園の風景。

「青々とした竹の奥に、大原の里が見え隠れして、奥行きのある美しい景色を撮影することができるんです」

大画面のスクリーンで上質な映画を観るかのような圧倒的な美に目を奪われていると、庭から水琴窟の音が涼やかに聞こえてきます。

宝泉院

【住所】京都市左京区大原勝林院町187
【電話】075-744-2409
【HP】http://www.hosenin.net 

永観堂

雄大な山と人の技が織りなす借景は別格!

永観堂

「永観堂は約三千本のもみじがある名所。臥龍廊(がりゅうろう)からの眺めや、びわ湖疏水と山からの伏流水が流れ込む放生池に映る青もみじも素敵ですが、中でも特におすすめなのが、東山を借景にした風景です」

そう中田さんは語ります。

「京都には大自然こそありませんが、庭園に代表される、人が創意工夫を凝らして生み出した風景には趣があります。永観堂も借景が見事な場所なんです」

遠くにそびえる東山の濃い山並みが、手入れされた境内の風景に奥行きを与えています。

禅林寺 (永観堂)

【住所】京都市左京区永観堂町48
【電話】075-761-0007
【HP】http://www.eikando.or.jp

忙しい日常を忘れて、「緑の絶景」にしばし癒やされるひとときを楽しみませんか。

写真家が捉えた息をのむほど美しい景色が、疲れた心を優しく包んでくれるようです。

planmake_hagiri

取材・文=羽切友希
はぎりゆき●月刊『茶の間』編集部員。ちびまる子ちゃんが好きな静岡県出身。小さい頃は茶畑の近くで育ち、茶畑を駆け抜けたのはよき思い出。お茶はやっぱり渋めが好き。