京都人がお正月に飲む「大福茶」とは? その縁起や歴史を徹底解説!

新年に京都で親しまれている、大福茶(皇服茶)。緑茶に梅干と結び昆布を入れたもので、今年こそ平穏無事な一年にと願いが込められた縁起物のお茶です。今回は、大福茶の歴史や、大福茶とゆかりのある六波羅蜜寺や北野天満宮との関係性をご紹介します。

六波羅蜜寺の皇服茶
六波羅蜜寺で参拝者に授与される皇服茶。一ヵ月祈祷した宇治産の煎茶を、元旦に汲んだ若水で淹れて、小梅と昆布を入れる。(写真/中田昭)

古くから京都に伝わる「大福茶」、そこに込められたいくつもの願い

京都に古くから伝わる、お正月にいただく縁起よい大福茶(おおぶくちゃ)。その年初めて汲んだ若水でお湯を沸かし、梅干と結び昆布を入れた湯呑に、急須で淹れたお茶を注ぎます。梅干は「しわが寄るまで元気に暮らせるように」と長寿と健康を願うもの。結び昆布は、「睦(むつ)みよろこぶ」と家族の輪を願うものです。いくつもの願いが込められた大福茶をお正月にいただけば、「大きな福」をもたらしてくれるでしょう。

結び昆布

「よろこぶ」の語呂に通じ、子孫繁栄を願い「子生婦(こんぶ)」とも書く昆布。結ぶことにより、喜びを結びつけ、家族の結びつきをしっかりさせるという意味が込められている。

梅干し

その姿から「しわが寄るまで元気に過ごせるように」という長寿と健康を願う縁起物とされる梅干。梅は、春に先駆け一番に花を咲かせ、実を結ぶものとして尊ばれている。

起源は平安時代! 六波羅蜜寺にルーツあり

健やかな一年を願って、1月1日の朝、新しい年に初めて家族で飲む大福茶。その起源は平安時代にさかのぼります。空也上人(くうやしょうにん)を開祖とする京都の六波羅蜜寺に、大福茶の伝承がのこされています。天暦5年(951)、都には疫病が広まり、多くの命が失われていました。心を痛めた空也上人は、疫病退散を願って十一面観音菩薩像を彫り、曳き車に安置して市中を練り歩きます。

空也上人立像 (提供:六波羅蜜寺)

その際、お茶に梅干を入れて病人たちに授けて念仏を唱えたところ、またたく間に疫病が鎮まったそうです。時の村上天皇もこのお茶を服して快癒されたことから「皇服茶」の名で今に伝えられています。その逸話にちなんで、六波羅蜜寺では正月の三が日に「皇服茶」の授与を行なっています。まさに、今の時代にふさわしい特別なお茶です。

六波羅蜜寺

【住所】京都市東山区五条通大和大路上ル東
【電話】075-561-6980
【拝観時間】8:00~17:00
【宝物館 拝観料】大人 600円、大学・高校・中学生 500円、小学生400円
【皇服茶授与】1月1日~3日 300円

北野天満宮で新年に 授与される「大福梅」とは?

梅の名所として知られる北野天満宮でも、村上天皇の平癒に由来する「大福梅」の授与が12月13日から始まります。大福梅とは、北野天満宮の神域で育てられた梅の実を天日で干して、裏白を添えて奉書紙に包んだもの。無病息災の祈りが込められた、古くからの縁起物です。世の平穏を願う祈りの心は、時代を越えて、今も脈々と受け継がれています。

北野天満宮の大福梅
6月から夏場を通して手づくりされた梅が袋に詰められている。授与された大福梅は、お茶か白湯に入れて味わう。(写真/中田昭)

北野天満宮

【住所】京都市上京区馬喰町
【電話】075-461-0005
【参拝時間】6:30~17:00
【大福梅の授与】12月13日~25日頃
(無くなり次第終了)1袋(約6粒入り)700円

おわりに

おいしさだけでなく、健康長寿と無病息災の祈りが込められた大福茶。新たな一年の始まりに、その祈りを大切な人と分かち合いながら、幸せな新年をお迎えください。

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企画・構成=楠石千晶
くすいしちあき●月刊『茶の間』編集部員。梅干しとみかんがおいしい和歌山県出身。幼少期から梅干茶漬けをこよなく愛す。そのおともにはアイドルと深海魚があれば
言うことなし。