アート好き必見!歴史的建築と新技術を組み合せた京都市京セラ美術館へ

美術館や博物館、神社仏閣が立ち並ぶ京都屈指の文化ゾーン・岡崎に、これまた素敵なアートスポットがこの春リニューアルオープン! 最新の現代アートから近代の美術作品を鑑賞でき、心地の良い憩いの場にもなる最新の美術館をご紹介します!

京都市京セラ美術館
撮影:来田 猛

伝統の意匠と新しい技術が一つになった、岡崎の新たな「顔」

神社仏閣に茶の湯、和食、和菓子。

京都には、古くから連綿と受け継がれてきた伝統文化が今なお息づいています。

その理由は、古い伝統に新しい技術を上手く取り入れ、変化し続けてきたからではないでしょうか。

そんな京都の精神を体現するかのような美術館が、この春にリニューアルオープンします。その名も「京都市京セラ美術館」(京都市美術館)。現存する日本の公立美術館の中で、もっとも古い建築です。

1933年、日本で二番目の公立美術館として開館して以来、近代美術や一般公募作品などの展覧会を開催。建物の老朽化に伴い、2018年から大規模な改修を進めてきました。今回の改修工事を指揮したひとり、青森県立美術館などの設計で知られる、建築家・青木淳氏です。

青木淳さん

青木淳さん

建築家。1956年神奈川県生まれ。東京大学工学部建築学修士修了。磯崎新アトリエ勤務を経て1991年独立、青木淳建築計画事務所を設立。代表作に「潟博物館」(日本建築学会賞作品賞)など。2005年芸術選奨文部科学大臣新人賞を受賞。2019年4月より京都市京セラ美術館館長。

京都市美術館の本館は、「帝冠様式」と呼ばれる、和と洋の意匠が絶妙に融合した堂々たる風格の建築です。青木氏は、そのよさを残しながら、さらに現代の優れた機能とデザインを併せ持つ建築として生まれ変わらせました。

京セラ美術館
撮影:来田 猛

特に注目すべきは、エントランス(上写真)部分です。改修前の入り口の地面を掘り下げて、地下に設置した正面部分には、一番のシンボルといえるファサード「ガラス・リボン」を据えました。この透明で軽やかな流線型のデザインと、歴史的建築とのコラボレーションは、古さと新しさが同居する美術館を象徴しています。

さらに、美しいだけでなく、メインエントランスやミュージアムショップ、カフェといった美術館の内側と外側をつなぐ場としても機能します。

京都市京セラ美術館
本館2階西広間の天井にはステンドグラスが残されている。撮影:来田 猛

ほかにも、新しくなった館内には、ステンドグラスなど、伝統的なデザインが点在しているので、新旧の融合を探して、楽しんでみてください。

京都市京セラ美術館
1.以前は使われていなかった北中庭には、ガラスの大屋根が設置され、「光の広間」としてイベントなども開催可能に。2.重厚な雰囲気の階段。3.美術館の展示室に通じる「中央ホール」。誰でも無料で訪れることができる。撮影:来田 猛

新たに設置された展示スペース「東山キューブ」や「ザ・トライアングル」では、現代アートや新進作家の作品を展示予定。自主企画展から公募展、伝統的な美術から現代美術まで、以前より幅広い美術に触れることができるようになりました。

さらに、設計を担当した建築家・青木氏が館長として就任したことは、美術業界では珍しい出来事です。

〝ハード面で建築に関わってきたことに加え、今後はソフト面でも新しい美術館を支える。〟

そんな想いで美術館の館長に挑戦しています。

京都市京セラ美術館
東山キューブテラスから展望できる東山の風景。撮影:来田 猛

誰にでも開かれた賑わいの美術館へ。人々の憩いの場所としても活躍!

京都市京セラ美術館がある岡崎地区は、平安神宮や岡崎公園、京都府立図書館など、文化施設がひしめく京都随一の文化ゾーン。普段からたくさんの人々で賑わうこの地で、「開かれた美術館」となることも、今回の改修の大きなポイントです。

開館して約90年の間に、美術館の存在も大きく変化してきました。開館当初は権威のある美の殿堂でしたが、時代の変化とともに「誰にでも開かれた場所」へと美術館の役割も変わっていきました。今回のリニューアルにより、展示を楽しむ人も、展示を見ない人も、誰でも楽しめるフリーエリアが大幅に増えています。

京都市京セラ美術館
七代目小川治兵衛が関わったとされる東側の池泉回遊式庭園    撮影:来田 猛

西側のメインエントランスから入り、中央ホールを通って東側の庭園へ抜けることができる新しい動線も、今までになかった体験です。東山の美しい山々を展望できる屋上庭園「東山キューブテラス」をはじめ、カフェやショップなど、展覧会以外にも楽しめるエリアがたくさんあるので、カフェでコーヒーを買って、テラスでゆっくり過ごすのもおすすめ。

カフェ「ENFUSE(エンフューズ)」では京都の地場食材を使ったメニューが楽しめる。アートグッズが揃うミュージアムショップ「ART LAB KYOTO(アート・ラボ・キョウト)」にも注目。
カフェ「ENFUSE(エンフューズ)」では京都の地場食材を使ったメニューが楽しめる。アートグッズが揃うミュージアムショップ「ART LAB KYOTO(アート・ラボ・キョウト)」にも注目。
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新旧が融合し「開かれた美術館」として生まれ変わった京都市京セラ美術館。その魅力を体感しに、足を運んでみてください!

江戸の名作から最新アートまで、多彩なオープニング・ラインナップをご紹介!

EXHIBITION #3
曾我蕭白
曾我蕭白《群仙図屏風》 1764年 文化庁蔵 重要文化財 (第1部 江戸から明治へ:近代への飛躍 前期展示(2020年4月18日~5月17日))上:左隻 下:右隻

1935年に美術館が初めて展示した所蔵品全47点をはじめ、全国から集めた総計400点超えの「京都の美術」の名作が、4期構成で展示されます。江戸時代の作家、伊藤若冲、与謝蕪村、曾我蕭白、円山応挙ら、明治から昭和の竹内栖鳳、上村松園、戦後から現代の小野竹喬、福田平八郎などの作品が展示されます。


最初の一歩:コレクションの原点
4月4日(土) ー 4月5日(日)
第1部 江戸から明治へ:近代への飛躍
[前期]4月18日(土) ー 5月17日(日)
[後期]5月19日(火) ー 6月14日(日)
第2部 明治から昭和へ:京都画壇の隆盛
7月11日(土) ー 9月6日(日)[前期・後期]
[前期]7月11日(土) ー 8月10日(日・祝)
[後期]8月12日(水) ー 9月6日(日)
第3部 戦後から現代へ:未来への挑戦
10月3日(土) ー 12月6日(日)[前期・後期]
[前期]10月3日(土) ー 11月1日(日)
[後期]11月3日(火・祝) ー 12月6日(日)

EXHIBITION #2
杉本博司
杉本博司《OPTICKS 008》 2018年 © Hiroshi Sugimoto / Courtesy of Gallery Koyanagi

国際的に活躍する現代美術家・杉本博司の、京都で初めての大規模な展覧会です。独自のコンセプトで写真を制作する杉本は、古美術にも造詣が深いほか、建築や舞台演出など多岐にわたる活動も展開しています。「京都」、「浄土」、「瑠璃-硝子」をテーマとする本展では、世界で初公開される「OPTICKS」や、硝子に関する作品、考古遺物が展示されます。

杉本博司

杉本博司●すぎもとひろし

1948年、東京生まれ。1970年渡米。1974年よりニューヨーク在住。写真、演劇、造園、建築など多岐に渡る分野で活動している。2010年、紫綬褒章受章。2017年、文化功労者に選出。

EXHIBITION #3
撮影:来田 猛
撮影:来田 猛

今回、新たに設置されたコレクションルームでは、近代以降の「京都の美術」を中心に日本画、洋画、彫刻、版画、工芸、書など3700点を超える所蔵品から、年4回の展示替えによって様々な名作を楽しむことができます。明治から昭和にかけて活躍した京都画壇の作家たちの季節感にあふれた名作を豊かな京都の四季と共に楽しんでみては。

春期 4月4日(土) ー 6月21日(日)
夏期 6月25日(木) ー 9月22日(火・祝)
秋期 9月26日(土) ー 11月29日(日)
冬期 12月3日(木) ー 2021年3月14日(日)

京都市京セラ美術館(京都市美術館)

【住所】京都市左京区岡崎円勝寺町124
【電話】075-771-4334
【開館時間】10:00〜18:00(最終入館17:30)
【休館日】月曜日(祝日の場合は開館)、年末年始
【料金】
[最初の一歩:コレクションの原点]
一般1,000円 大学・高校生600円 中学生以下無料
[京都の美術 250年の夢 第1部〜第3部&杉本博司 瑠璃の浄土]
一般1,500円 大学・高校生1,100円 中学生以下無料
[コレクションルーム] 一般730円 小・中・高校生300円 小学生未満無料
【HP】https://kyotocity-kyocera.museum

※新型コロナウイルス感染予防・拡散防止のため、開幕日が3月21日(土)から4/4(土)に延期されました。

※今後も、新型コロナウイルスの状況により、展覧会の会期が変更になる場合があります。最新情報はウェブサイトをチェックしてください。

おしゃれで文化的な岡崎地区に誕生した京都市京セラ美術館。
春の陽気になったら、アート巡りはもちろん、お花見散歩がてら、カフェやショップだけでも覗きに、気軽に訪れてみませんか?

企画・構成=大村沙耶
おおむらさや●月刊『茶の間」編集部員。福岡県北九州市出身。学生時代は剣道に打ち込み、京都に住み始めてから茶道と着付けを習い始める。ミーハーだけど、伝統文化と自然を愛する超ポジティブ人間。