全国にひな祭りの風習はありますが、とりわけ京都のひな祭りは華やかで雅やか! 神社仏閣に旧家、地域など、さまざまな場所で行事が催されます。おひな様を愛でることはもちろん、特別な体験や感動が味わえる、とっておきのひな祭りをご紹介。3月の京都観光におすすめなので、訪れてみてください!
01. 市比賣神社 ひいなまつり
01. 市比賣神社 ひいなまつり
人が扮するリアルな人間雛に、目が点!
もともとひな祭りは、厄災をはらうために人形を身代わりにして川へ流していた慣習に由来するといわれています。平安時代になると貴族や婦人、子どもたちが「ひいな遊び」として楽しむことへと移り変わり、いつしか「ひいなまつり」として盛大に行なわれるようになったとか。
女性の護り神として知られる市比賣(いちひめ)神社で開かれる「ひいなまつり」。ここでは、非常に珍しい「ひと雛」が見られます。装束や十二単(じゅうにひとえ)をまとった人々がおひな様に扮してひな壇に上り、ひな飾りの様子を再現します。
ただ、鑑賞するにとどまらず、男雛の束帯、女雛の十二単の着付け実演もあり、華麗できらびやかな装いに思わず目が釘付けに。三人官女による舞、五人囃子による演奏も披露され、宮中の雅な世界をたっぷりと堪能できます。
また、貝合せや投扇興(とうせんきょう)、双六(すごろく)といった、古来より伝わるひな祭りの遊びが体験できる催しも予定されています。男性も女性も貴族になった気分で、優雅にひな祭りを楽しんでみては。
ひいなまつり
【会期】3月3日(火)
【料金】初穂料2,000円
市比賣神社
【住所】京都市下京区河原町五条下ル一筋目西入
【電話】075-361-2775
【時間】9:00~16:30(受付終了)
【HP】https://www.ichihime.net
02. 宝鏡寺 ひなまつり
02. 宝鏡寺 ひなまつり
皇室ゆかりの厳かな人形を間近で見られるチャンス!
歴代の皇女が住職を務めた、格式高い尼門跡寺院である宝鏡寺。「人形寺」とも呼ばれ、さまざまな時代、様式の人形を数多く所蔵しています。その理由は、寺へ入った皇女へ、たくさんの人形が天皇から贈られていたため。一般公開される「春の人形展」では、皇女らが大切にしていたひな人形をはじめ、多くの人形が展示されます。
おもしろいのが、人形のたたずまいから当時の時代の景色が見えること。飾りや衣装の華やかさや慎ましさ、またお顔や化粧の雰囲気などを通して、時代の流行や往時の背景をうかがい知ることができます。
また、宮中の作法に則ってつくられた有職雛(ゆうそくびな)は、服装や髪型、化粧、布使いまでも忠実に再現されています。各時代の背景や文化を写す人形の姿に、歴史ファンのみならず好奇心がくすぐられます。
令和になり初めての「ひなまつり」。皇室ゆかりのお寺で新旧多彩な人形へのご挨拶に出かけてみてはいかがでしょうか。
ひなまつり
【会期】3月1日(日) 11:00〜11:30
※3月1日(日)〜4月3日(金)まで「春の
人形展」を開催。
宝鏡寺
【住所】京都市上京区
寺之内通堀川東入ル百々町547
【電話】075-451-1550
【時間】10:00~16:00(閉門)
【料金】大人600円、小人300円
※受付15:30まで
※春(3月1日~4月3日)と
秋(11月1日~30日)のみ拝観可能
【HP】http://hokyoji.net
03. 法住寺 つり雛展
03. 法住寺 つり雛展
おばあちゃん手づくりのちいさな雛がとてもかわいい!
梅の名所としても知られる法住寺(ほうじゅうじ)では、桃の節句の時期に寺の書院を開放し、「つり雛展」を開催しています。「つり雛」とは呼び名のごとく、人形や花、食べ物など、さまざまな飾りを天井から吊すひな飾りのこと。江戸時代、高価なひな人形は、なかなか手に入らないものでした。それでも子どもたちが衣食住に困らないようにと祈りを込めて、布で手づくりした飾りを家に吊るしたのが始まりといわれています。静岡県の伊豆が発祥とされ、日本では伊豆を含めて数ヵ所にしか伝わらない貴重な文化の一つです。
その「つり雛」が京都へやって来た理由は、同住職のおばあさまが伊豆下田に在住しているご縁から。「おばあさんが人形製作を趣味にしていて、つくっているものをみなさんに見ていただければ」と15年ほど前から寺で公開を始めました。一つずつ思いを込めてつくられる飾りは、どれも素朴な優しさがじんわりと。つり雛以外にも、おばあさまがつくった洋人形も飾られるとか。
おばあさまが繋いだ伊豆と京都の縁は、ノスタルジーを感じる温かなひな祭りとして訪れる人をほっこり穏やかな気持ちにさせてくれます。
つり雛展
【会期】2月28日(金)~3月3日(火)
【料金】志納金600円(拝観料込)
法住寺
【住所】京都市東山区三十三間堂廻り町655
【電話】075-561-4137
【時間】9:00~16:30(16:00受付終了)
【拝観料】500円(案内冊子付)
【HP】https://hojyuji.jp
04. 永々棟のひなまつり
伝統家屋でたのしめる、愛らしいひな茶会にきゅん♡
大正15年に日本画家・山下竹斎の邸宅兼アトリエとして建築された伝統的な木造家屋を改修した「平野の家 わざ 永々棟(えいえいとう)」。江戸時代から現代まで、古今東西のさまざまなひな人形を集めた「ひなまつり」が開催されます。永々棟所蔵の享保雛、古今雛、有職雛、次郎左衛門雛などが並びます。年齢を重ねた女性が多く訪れるそうで「ここへ来て眺めていると、おひな様を出した気分になります」と、少女時代を懐かしむ人も。
ひな飾り鑑賞で思い出に浸ったあとは、「ひな茶会」へどうぞ。永々棟が主催する「子ども茶道教室」の生徒らが色とりどりの晴れ着に身を包み、日ごろの稽古の成果を披露してくれます。お菓子の準備にお点前、お運びなど、子どもたちだけでお客様をもてなす姿の愛らしいこと。その昔、少女だった淑女たちも今の少女たちのかわいさに目尻が下がりっぱなしです。大人顔負けの見事な作法で、お茶とひなまつりのお菓子「ひちぎり」でもてなしてくれます。
もちろん男性も大歓迎。華やかで美しく、甘くておいしい一日を満喫してください。
永々棟のひなまつり
【会期】2月28日(金)~3月29日(日)の金土日
【開館時間】10:00〜17:00(入場は16:30まで)
【入場料】一般600円、大学・高校生400円、中学生以下無料
●「ひな茶会」子どもたちによる点前とお運び(事前申込制)
【日時】2月29日(土) 11:00/11:40/13:00/13:40/14:20(各回6名)
【料金】2,000円(薄茶、和菓子、入場料含む)
※平野の家 わざ 永々棟へ電話でお申し込みを。
定員になり次第、受付終了。
平野の家 わざ 永々棟
【住所】京都市北区北野東紅梅町11
【電話】075-462-0014(受付時間10:00~17:00)
【HP】http://waza-eieitou.com
05. ちもとの雛まつり
歴史ある雛人形の前で美しい雛御膳を堪能!
享保3年(1718)に創業した京料理「ちもと」。こちらでは、3月1日から4月3日の間、京料理「ちもと」を代々営む松井家が大切にしているひな飾りを、お客様に公開しています。期間中は目にも美しい「雛御膳」が用意され、ひな飾りを愛でながら名店の味に舌鼓を打つことができます。
「もともとは季節のしつらえとしてお飾りをしているだけでしたが、たくさんのお客様からご興味をいただき、今のようにひな飾りの前でご説明をさせていただくようになりました」と女将の松井薫さん。
一番古いものは、江戸後期のひな人形と蒔絵のお道具で、歌舞伎役者の初代中村鴈治郎の娘さんが「ちもと」に嫁がれたときに持ってこられた花嫁道具の一つです。
雛飾りのメインは何といっても御殿雛。大正時代に皇室に献上されたものとまったく同じ、貴重なお雛様が縁あってちもとに。
「初日の3月1日の朝には八坂神社から神主様をお招きして「雛開き」と呼ばれる入魂式を行ないます。そしてまた普通のお人形さんに戻って1年の眠りについていただく4月4日まで、おひな様にはご縁と繁栄の神様となっていただいております」と松井さん。おひな様には、毎朝欠かさず板場がこしらえる「雛寿司」や 「貝の御椀」、「赤貝のてっぱい」をお供えしているそうです。
会いに来られる皆様の幸せを祈願されたおひな様の前で食事ができる唯一無二の格別な時間を、京の老舗で味わってみてください。
ちもとの雛まつり
【会期】3月1日(日)~4月3日(金)
【料金】昼:雛御膳 11,330円、雛懐石 19,030円〜、
夜:19,030円、25,300円、37,950円(いずれも税サ込)
※完全予約制 ※料理の写真、器など内容は変わる。
※期間中の昼のみ一人での利用も可。
京料理 ちもと
【住所】京都市下京区西石垣通
四条下ル斉藤町140-5(四条大橋
西詰南入)
【電話】075ー351-1846
【時間】昼12:00~15:00、
夜17:00~20:00
【定休日】不定休
【HP】http://chimoto.jp
京都で行なわれる個性豊かな5つのひな祭り行事をご紹介しましたが、いかがだったでしょうか。行きたいと思うものが見つかりましたか。友人や家族を連れて行ったり、写真を撮って見せてあげれば、自慢できること間違いなし! 3月に京都観光に来られる方はぜひとも訪れてみてください。
※記事は2020年2月時点の情報です。
(取材・文 岡田有貴/写真 中田昭 福尾行洋 山中茂)
企画・構成=米村めぐみ
よねむらめぐみ●月刊『茶の間」編集部員。出社したらまずはお茶!仕事中はお茶ばかり飲んでいるといっても過言ではないほど、日本茶が好き。作家ものの湯呑など、うつわあつめが趣味。おいしい茶菓子にも目がありません。