下鴨神社近く!昭和レトロ好きにおすすめの出町柳さんぽガイド

世界遺産の下鴨神社がある京阪「出町柳駅」の周辺には、昔ながらの商店街や純喫茶など、どこか懐かしくほんわかとした気分になれるスポットがたくさん!特に、アニメ「たまこまーけっと」の舞台とされている出町桝形商店街は、数多くのアニメファンも訪れる聖地です。

地元編集部がこよなく愛する出町柳駅周辺の、昭和レトロが好きな方にはぜひとも行って欲しいと思うおすすめの情報をたっぷりとお届け。古き良き時代に思いを馳せながら、小さなタイムスリップ旅をお楽しみください。

01. 鴨川をゆっくり歩く

鴨川の写真
高野川と賀茂川が合流する地点、京阪「出町柳駅」の目の前に位置する鴨川デルタ。デルタから先の南側は、京都観光の名所でもある「鴨川」に。川にはサギやセキレイ、カモなどの野鳥が集い、風情ある光景が楽しめる。

ぶらり旅のスタートは、やはりここ。京阪「出町柳駅」を降りてすぐ、目の前に広がる「鴨川デルタ」から。東側から流れる高野川と西側から流れる賀茂川の合流地点で、デルタの右後方に比叡山、右手には大文字山を望む絶好のビュースポットです。

デルタをはさんで東側のエリアには山並みが続く緑豊かな景色が、西側には活気ある街の風情が広がり、川の両岸で違った雰囲気を味わえるのもこの場所の魅力です。

北側に少し歩くと世界遺産の「下鴨神社」の参道に広がる「糺(ただす)の森」につながります。鴨川の穏やかな雰囲気とは異なり、凛とした静寂が漂う空間は訪れる人を清々しい気持ちにさせてくれます。おすすめの時間は朝。木々の合間から溢れる朝陽の美しさを堪能してください。

また、川の両サイドにある遊歩道もこの旅では外せない散策スポットです。水のせせらぎを聴きながら、遠くの山並みを眺めながら、自然を近くに感じてゆっくりと歩けば、日々の慌ただしさを忘れて、心癒されるひとときになりそう。

鴨川での自然とたわむれる穏やかな散策時間を満喫したら、そろそろ街に出かけましょう。でも、その前に、デルタを後にするときは、ぜひ飛び石に挑戦を。川渡りの途中で出合う愛らしい亀や千鳥に挨拶して、ぶらり旅に出発です。

亀や千鳥の飛び石

02. 老舗喫茶店でコーヒーを嗜む

コーヒーハウス マキ

今でこそ少なくなりましたが、昭和の後半までは街の日常に喫茶店がありました。そこで時間をつぶしたり、友人や恋人と待ち合せをしたり。みなさんにもそんな思い出があるのではないでしょうか。

出町の老舗喫茶店「コーヒーハウス マキ」は、自家焙煎コーヒーの専門店というだけあって、常時20種類のコーヒーを揃えています。豆の品質や状態を見極めながら、煎り具合を調節し、ベストな状態で使用。ネルドリップで抽出するブレンドコーヒーは、豆のコクと甘みを引き出した絶品の風味となります。また、照明や音楽にも心を配り、コーヒーを楽しむために用意された空間を存分に堪能してください。

コーヒーハウスマキ
「コーヒーハウスマキ」の名物メニュー「和風タマゴトーストセット」(850円)は、卵焼きとのり、かつお、紫蘇のふりかけなど、和の食材をサンド。自家製の和風ドレッシングで調味した一品。
COFFEE HOUSE maki

COFFEE HOUSE maki

約50年前に京都市伏見で創業し、出町に移転して40年の老舗喫茶店。コーヒーマイスターである2代目店主が手がける自家焙煎コーヒーの味わいは、深いのにすっきり。毎日飲んでも飽きない味に惹かれて、多くの常連が通う。サンドイッチなどのフードメニューも人気。

 

 

もう1軒は、創業1963年の純喫茶「ゴゴ」。ドイツ壁や飾り棚など創業当時のままの設えが残る店内は、今が2020年であることを忘れてしまうほど。最近ではあまり見かけないサイフォンで淹れるコーヒーがここの自慢。豆の旨みを余すことなく感じられる味わいは、コーヒー好きにはたまらない1杯です。やわらかで話上手な店主との時間を楽しむのもまた一興です。

流行りのカフェにはない、年月が醸す居心地のよさがあります。さあ、若かりし頃にタイムスリップできる喫茶店へ足を運んでみませんか。

ゴゴ

ゴゴ

店先にある小さな焙煎機が目印のお店。日々使う豆を少しずつ焙煎し、常に鮮度のよい状態のコーヒーを提供してくれる。出町柳駅からすぐの立地で、朝は出勤前の会社員や地元の人々でにぎわう。先代の時代から変わらぬ味と空間を守り、純喫茶ファンの心を捕らえてやまない。

03. 商店街で買い物をする

出町桝形商店街

商店街で買い物をしなくなって久しい人も多いのでは。商店街には、スーパーでは味わえない人と人がつながる買い物の醍醐味があります。

「出町桝形商店街」は、全長164メートルのアーケード街で、現在は40店ほどが軒を連ねています。ぶらぶらと歩きながら子ども時代の買い物を思い出したり、「お土産に何を買って帰ろう」と、考えをめぐらせる時間は楽しいものです。

買い物途中にお腹が空けば、「おた福屋」で、若い人にならってお餅や団子を買ってパクリ。お行儀が悪いと思っていても、買い食いの味は格別です。

上質なものやほかでは取り扱いが少ない逸品を探すなら薩摩地形節や天然昆布を扱う「ふじや鰹節店」へ。「ええもん、ほんまもん」にこだわり、店主が本当においしいと思えるものだけを販売。味の好みやつくりたい料理を伝えれば、丁寧に材料の選び方や使い方を教えてもらえます。

また、日々の買い物なら朝びきの地鶏などが並ぶ「鳥扇」、手づくり豆腐の「いづもや」をのぞいてみるといいでしょう。迷っていると「骨のまま水に入れて炊いたら、ええだし出るで。地鶏のつくねもおいしいで〜」とお父さんが見繕ってくれます。お隣のいづもやで「隣でつくね買ったんです、鍋の豆腐はどれがいい?」と聞けば、お母さんが木綿豆腐を水から取り出し「これでいい?」と容器に入れてくれます。

会話を交わしながら品物を選び、自分の目当てのものがちゃんと買える商店街。この時代だからこそ、温かさや心配りに触れる時間がとても贅沢に感じられます。

【おた福屋】

1933年創業。先代が九州を歩き回って探した佐賀県産のひよく米を使った餅、自家製のあんを包んだ饅頭などが評判のお店。餅は甘みが強く、弾力ある食感が格別で、遠方から足を運ぶファンもいるほど。団子や大福、饅頭はどれも100円ちょっととうれしい価格。

おた福屋

【ふじや鰹節店】

半世紀に渡り本枯節や薩摩地形節、天然昆布など最高級品を扱う。ここでしか買えない逸品もあり、全国から注文が寄せられる名店。近年は、フランス料理とのコラボレーションや海外からの旅行者の引き合いも多く、伝統を守りながら新たな試みにも挑戦する老舗。

ふじや鰹節店

【鳥扇】

出町桝形商店街に店を開いて38年。ご夫婦が切り盛りする「鳥扇」は、朝びきの地鶏をはじめ、京赤地鶏などこだわりの鶏肉を取りそろえる。鶏肉以外にも焼鳥や肝煮、唐揚げなどの惣菜も店先に並ぶ。小腹が空いたときには、店先で焼き上げる焼きたての焼鳥はいかが?

鳥扇

【いづもや】

滋賀県産の大豆を用いて、昔ながらの手法ですべて手づくりする豆腐や油揚げ、ひろうすなどが人気。健康に役立つものを低価格で、をモットーに、毎日の食卓に欠かせない味を提供している。店の一角ではコロッケやカツなど、夕飯の一品にうれしい惣菜も販売している。

いづもや

04. 古き良き暮らしに出合う

旧三井家下鴨別邸

古い時代のものや懐かしいものに触れたとき、ふっと心が温かく、そして落ち着いた気持ちになった経験はありませんか? 市内の繁華街から少し離れた出町柳駅周辺には、今もまだ大正や昭和時代の息吹が数多く残っています。では、少し昔の日本の営みが体感できる場所をぶらりとめぐってみましょう。

「旧三井家下鴨別邸」は、旧三井家の別邸として明治、大正にかけて建てられたもので、近代の和風建築の粋を見学することができます。望楼が特徴的な明治期の「主屋」、大正時代に増築された「玄関棟」と「茶室」の3棟からなり、主屋前には美しく整えられた庭園が。100年以上の時を経てもなお凛々しく現存する姿は圧巻の一言です。

近代の和建築を堪能した後は、少し趣を変えて昭和ノスタルジーに浸る場所へ。古家具「やっほ」は、リメイクしたちゃぶ台や茶箪笥、書棚などを扱うお店。修復職人が古いものを美しく仕立てるだけでなく、今の時代に合ったデザインや色合いに生まれ変わらせています。どの家具も味わいのあるお洒落な雰囲気で、時間を忘れて品定めをしてしまうのでご注意を。

次に訪ねたいのが、古い家屋を改装した乾物と生活雑貨のお店「すみれや」です。昭和の中頃まではよく目にした、グラム単位で買える量り売りを覚えていますか? この店では、その量り売りで、米や豆類、石鹸などを購入することができます。店の隅に目をやると「譲ります」「探しています」とメモが貼られた掲示板が。なんとも懐かしいやりとりに、ほっこりしてしまいます。

時代の面影を感じながら、散策や買い物に興じる道中。きっと思い出話に花が咲き、「昔は、ああだった」「うちはこんな風だった」なんて、盛り上がります。

【旧三井家下鴨別邸】

下鴨の地に遷座された三井家の祖霊社である顕名霊社(あきなれいしゃ)を参拝する際の休憩所として、大正14年に建築されたのが現在の下鴨別邸。主屋は明治時代に建築された三井家の木屋町別邸を移築したものである。2012年には国の重要文化財に指定されている。庭園を眺めながら抹茶と和菓子(セットで600円)を楽しめる。

旧三井家下鴨別邸
旧三井家下鴨別邸

【やっほ】

日本各地で買い付けた古家具を修復し、販売するお店。古さと今の風合いが絶妙にマッチしたアイテムにはファンも多く、店頭やオンラインショップに並ぶやいなや売れてしまう人気ぶり。HPやInstagramで商品の情報やイベントの告知が見られるので要チェック。

やっほ

【すみれや】

店主が「安心して口にできるものを食べたい」という思いのもと、京都近郊の野菜や米、信頼できる生産者が手がけた商品のみを取りそろえる生活雑貨店。お店の2階では、手紡ぎ・手織りの会なども行なっている。使わない紙袋を集め、ショッピングバッグとして再利用するなど、エコの取り組みも。

すみれや
地図

出町柳駅周辺のおすすめ昭和レトロスポットをたっぷりとご紹介しましたが、行ってみたい場所は見つかりましたか。京都にお越しの際には少し足を延ばして、のんびりと散策してみてください。

※記事は2020年4月時点の情報です。
(取材・文 岡田有貴/写真 菊地佳那 武甕育子 津久井珠美 平谷舞 福尾行洋)

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企画・構成=米村めぐみ
よねむらめぐみ●月刊『茶の間」編集部員。出社したらまずはお茶!仕事中はお茶ばかり飲んでいるといっても過言ではないほど、日本茶が好き。作家ものの湯呑など、うつわあつめが趣味。おいしい茶菓子にも目がありません。